現地でにわかに注目を集める“今永の13球”。ジャンケンに例える独自の投球哲学にチームメイトの頭脳派右腕も感服<SLUGGER>

4月1日(現地)、ロッキーズとのメジャーデビュー戦で6回2安打無失点、9奪三振の快投を披露した今永昇太(カブス)。衝撃デビューから数日が経ち、現地アメリカでは13球にも及んだ2回のライアン・マクマーンとの対戦に注目が集まっているようだ。

過去3年連続で20本塁打以上を記録しているロッキーズの中心打者に対し、今永は真っ向勝負を挑んだ。

1 4シーム 92.4マイル 見逃しストライク
2 4シーム 92.5マイル ボール
3 スイーパー 82.3マイル ファウル
4 4シーム 93.2マイル ファウル
5 スプリッター 84.3マイル ボール
6 4シーム 93.7マイル ファウル
7 4シーム 93.4マイル ボール
8 4シーム 94.3マイル ファウル
9 4シーム 92.5マイル ファウル
10 4シーム 92.9マイル ファウル
11 4シーム 93.5マイル ファウル
12 4シーム 92.2マイル ファウル
13 スプリッター 83.4マイル 空振りストライク
※球種の分類はスタットキャストによるもの

全13球のうち、実に10球が4シーム。フルカウントになってからは5球続けて4シームを続け、マクマーンもこれにファウルで応戦。そして13球目、今永が選択したのはチェンジアップ(スタットキャストの分類ではスプリッター)。マクマーンはあえなく空振り三振に倒れた。 MLB.comのジョーダン・バステイアン記者による記事で、今永は自らの思考プロセスを「言ってみれば『ロック、ペーパー、シザーズ』のようなものです」と説明している。「ロック、ペーパー、シザーズ」とは「ジャンケン」のことだ。

「速球狙いの相手が『パー』だとしたら、僕も『パー』で対抗する。それでも相手はずっと速球を振り続けてきたら、『チョキ』にするんです」

今永によると、走者を一塁に置いていたことから当初は左打者のマクマーンが引っ張りにかかると予想していた。だが、次第に逆方向を狙っていると気付く。「もし速球で攻めて反対方向に打たれても、最悪レフト前ヒットで一、二塁。それなら、速球が最前の選択だと思ったんです」。

日本で“投げる哲学者”の異名を取っていた今永。緻密な思考と計算に裏打ちされた独自の投球哲学は、チームメイトの間でもすでに話題になっているようだ。ダートマス大出身のインテリで、自身も“ザ・プロフェッサー(教授)”の愛称を持つ技巧派右腕カイル・ヘンドリクスも「正直言って、彼が打者を攻略する姿は、本当に本当に素晴らしい」と脱帽している。

次回登板は7日(日本時間8日)のドジャース戦。ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマン、そしてWBCでともに頂点に立った大谷翔平を相手にどんな投球を見せるのか。今から楽しみだ。

構成●SLUGGER編集部

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