自民裏金、福島県関係は菅家一郎氏に役職停止 吉野正芳氏は戒告

 自民党は4日、派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、関係議員ら39人の処分を決めた。

 本県関係では、いずれも安倍派に所属した菅家一郎衆院議員(比例東北)に党役職停止6カ月、吉野正芳元復興相(衆院福島5区)に戒告の処分が下された。

 党規律規約に基づく8段階の処分のうち、党の役職停止は上から6番目、戒告は7番目の重さとなる。処分について、菅家氏は「党本部と党紀委員会で慎重に議論された結果で厳粛に受け止める。原点に立ち返り、地域の発展に責任を持って取り組んでいく」と述べた。

 吉野氏は「派閥の指示があったとはいえ、多くの方の政治不信を招くこととなり誠に遺憾。党紀委員会の決定は受け入れる」とのコメントを出した。

 2018~22年の5年間で派閥から菅家氏に計1289万円、吉野氏に計660万円の還流があったが、いずれも政治資金収支報告書に派閥名義の寄付として記載しないなど不適切な処理をしていた。

 処分は「軽めの内容」次期衆院選に懸念の声

 本県関係の菅家一郎衆院議員(比例東北)と吉野正芳元復興相(衆院福島5区)に下された処分は、次期衆院選の公認候補予定者となる選挙区支部長の立場に影響しないなど「政治活動を続ける上で軽めの内容」(自民関係者)となった。「選挙での非公認」を含め政治生命を左右する処分は免れた形だが、一連の政治資金パーティー問題を巡る有権者の不信感は根強く、県連内からも次期衆院選への影響を懸念する声が上がる。

 党の役職停止は、党要職にある場合は党内での存在感や政策への影響力の低下など打撃を受けるが、処分を下された菅家氏は役職に就いていない。安倍派幹部らも問題を受けて既に役職を退いているため、自民内からも「処分としての実効性がない」との指摘が出ている。吉野氏が受けた戒告は、対象者に文書か口頭で注意する内容で議員活動に制約は生じない。

 与野党内では役職停止や戒告を「形式的な処分」とみる向きが強い。「選挙での非公認」以上の重い処分が科せらた場合は、小選挙区で落選しても比例復活の目がなくなり、党からの資金援助も得られないなど次期衆院選を含め選挙活動で支障が生じる。

 6月23日までの通常国会会期末の衆院解散の可能性も取り沙汰される中、自民関係者の一部からは両氏の処分について「最悪の事態は回避できた」との声も漏れ聞こえる。ただ、共同通信社が3月に実施した世論調査で裏金事件に関与した安倍、二階両派の幹部に「重い処分が必要」との回答が8割弱に上るなど、世間の目は厳しい。

 県連の矢吹貢一幹事長は両氏の処分について「落胆した支持者は多いと思う。次期衆院選への影響がないとはいえない」との懸念を示した。県連会長の亀岡偉民衆院議員(比例東北)は「(県民に)復興に取り組む姿を示していく」と強調する一方で「並大抵の努力では難しい」と信頼回復に向けた苦難の道を見通した。(辺見祐介)

 亀岡氏、上杉氏、森氏は幹事長注意へ

 自民党の党紀委員会で関係議員ら39人の処分が決まった一方、安倍派に所属し、菅家、吉野両氏と同様に政治資金収支報告書で不適切な処理をしていた本県関係の亀岡偉民、上杉謙太郎各衆院議員(比例東北)、森雅子元法相(参院福島選挙区)の3議員は処分対象にならなかった。

 派閥からの還流額が500万円未満だったためで、幹事長注意となる見通し。亀岡氏は「(不記載額など)金額の大小ではなく、全員がより襟を正して活動していかなければならない」と強調。上杉氏は「政治不信を招き、おわび申し上げる。法改正や制度改正だけでなく、政治家の意識改革に向けて努力していく」と述べた。森氏は「秘書との報告や連絡体制を見直す。政治資金規正法の改正を含めしっかりと取り組む」と話した。

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