【漫画】同じ1日をループする少女、その切なすぎる“原因”はーーSNS漫画『声を聴いていたいから』に涙

「ある日突然/明日が来なくなってしまった」

冬のある日を繰り返すようになった女子生徒の日々を描いた『声を聴いていたいから』が2024年3月にXで投稿された。主人公は弟との時間を過ごしていたものの、とあることがきっかけで繰り返す日々は終わりを告げることとなりーー。

作者・雪狸さん(@seturi)によると本作は8年前に描いた作品を描き直したものだという。本作を創作したきっかけ、リメイクした背景など、話を聞いた。(あんどうまこと)

ーー本作を創作したきっかけを教えてください。

雪狸:SF作品が好きで、俗にいう“ループもの”の作品を読むことがありました。そんななか読み切り漫画としてループものを描くこととなり、同じ時間を繰り返しているように見えて、実際はループしていなかったという設定なら面白い作品になるのではないか……。そんな風に考え本作を創作しました。

人間の脳はときに自分自身を騙してしまうことがあると思っていて。本作の主人公も自分を騙しながら過ごしていましたが、精神的に極限まで追いつめられたら本作の主人公のように自分で自分を騙してしまうのかなと思います。

ーー印象に残っているシーンは?

雪狸:シチュエーションとして描きたかったのは本作の後半部分、主人公が真実を知ったあとの場面です。ただ印象に残っているのは中盤の主人公が髪の毛を切るシーンですね。自分でも自分のことを騙せなくなってしまった衝撃を表現できたのかなと思います。

主人公は自身の髪の毛に対してあまり気にしない様子も見られていましたが、あえて髪を伸ばしていることは主人公自身が選択したことでもあります。

そんな髪の毛が無くなってしまうことは主人公としても異常なことであり、もう自分に嘘をつくことができなくなってしまった。そんな恐怖をこのシーンで表現できたのかなと思います。

ーー冬から始まり、春に幕を下ろす物語にした背景は?

雪狸:物語の終盤で主人公が家の玄関から外に出るとき、季節が変わることで世界が変わってしまったように感じる心情を表現したかったからです。ただ桜や春はあたたかなものであり、前に進める印象のあるものかと思います。

主人公にとって現実と向き合うことはつらいことでもありますが、真実を知りつつも現実へ進んでいけるように、クライマックスでは春の場面を描きました。

ーー本作は8年程前に創作した漫画をリメイクした作品だと伺いました。

雪狸:過去作品は、そのときは全力で描いているのですが、今見ると拙い部分が多く……そのため作画の修正を行い本作をSNSに投稿しました。ただ物語は手を加えておらず、今の自分が読んでも当時の自分が描きたかったものをまとめている作品だと思えました。

当時の自分は良いと思っていたのに、数年経ってから見返すと価値観とのズレを感じてしまう作品も多いです。そんななか本作は今でもいろんな人に読んでもらいたいと思える作品です。

ーー雪狸さんにとって過去に手掛けた作品はどんな存在?

雪狸:自分の作品を我が子のように思っている作家さんもいらっしゃるかと思いますが、私は自分から外に出たものと捉えることが多いです。こどもというよりも親戚にちかい存在でしょうか……。たまに会ったときに元気だったらいいなと思うような存在です。

ーー過去の作品をリメイクしSNSに投稿した思いを教えてください。

雪狸:世の中には読み切り作品だけでもたくさんの漫画があり、読んだ後もう目にすることのない作品が多くあるかと思います。本作はとおい過去の作品ですが、再びだれかの目に触れる機会があればいいなと思いSNSに投稿しました。

純粋に物語が好きな人間として、他の人の作品も含め、好きだった作品と再び出会える機会があったらいいなと思っています。

ーー今後の目標を教えてください。

雪狸:今後も創作活動は続けていきたいです。これからも作品を描き続けられる環境にいられるよう、自分の表現の幅を広げながら、作品を描き続けていけたらいいなと思います。

(あんどうまこと)

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