最下位の阪神は「あわてる必要なし」 専門家が予感…成長の20歳は「かなりの成績残せる」

阪神・前川右京【写真:小池義弘】

前川は4日DeNA戦に5番で起用され、3打数2安打1死球

■DeNA 3ー2 阪神(4日・京セラドーム)

昨季日本一の阪神が、開幕から2カード連続で負け越し。今季6試合を終えて2勝4敗でセ・リーグ最下位に沈んでいる。ファンにとっては心配なスタートとなったが、専門家はむしろ、弱冠20歳の前川右京外野手の成長など、昨季にも増してプラス要素を指摘。「焦るような状況ではない」と語る。(成績、記録は全て4日現在)

岡田彰布監督は4日のDeNA戦(京セラドーム)で佐藤輝明内野手を6番に下げ、5番で前川を抜擢した。その前川は4回の第2打席で、DeNA先発のサブマリン・中川颯投手の外角低めストレートを、逆らわずに左中間へ運び二塁打。その後、梅野隆太郎捕手の中前打で先制のホームを踏んだ。3打数2安打1得点1死球で、最終的に2-3の逆転負けを喫したチームにあって気を吐いた。

左打ちの前川は今季6試合中3試合にスタメン出場しているが、全て相手の先発が右投手のケース。打率.400(10打数4安打)をマークしているものの、左投手とはまだ1度も対戦していない。右打ちのシェルドン・ノイジー外野手と併用されているが、現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)の4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「前川は相手投手の右左で、それほど差が出るタイプの打者ではないと思います。左投手との対戦をもっと数多く見てみたい」と指摘する。

「もともとボールをとらえる技術は高いものがありましたが、今季はいい打球を飛ばせる確率が上がっています。腰を落として低く構え、下半身をどっしりさせてしっかり振るスタイルで、それほど大きく崩れることはないと見ています」と高く評価。“相手捕手目線”で見ても「基本的にストレートに強い打者で、かといって変化球主体で攻めても、甘くストライクゾーンにくると確実にとらえられる状態です。相当気を遣うと思います」という。

2021年ドラフト4位で奈良・智弁学園高から阪神入りした前川は、昨季1軍デビューを飾り、33試合で打率.255(94打数24安打)。しかし野口氏は「プロ入りから2年間、故障がちで活躍できる期間が短かった。1年間フルにやれれば、かなりの成績を残せると思います」と、能力的にはこんなものではないと見ている。

つながらない打線…2番・中野、4番・大山の復調が浮上の鍵

「阪神は1、2番に左打ちの近本(光司外野手)、中野(拓夢内野手)を置いているので、前川まで3番に並べるのは現実的ではありませんが、5~6番に定着する可能性はあると思います」と野口氏。日の出の勢いの若武者がレギュラーに定着するようなら、阪神打線が昨季よりパワーアップするのは間違いない。

さらに「新外国人の(ハビー・)ゲラ(投手)、3年目の岡留(英貴投手)が戦力になりそうです。昨季好成績(27試合2勝0敗、防御率1.79)を残した桐敷(拓馬投手)も引き続き好調で、頼もしさを増している。リリーフ陣は非常に充実していると思います」とも付け加える。

現時点で白星が思うように挙がっていないのは、打線がつながりを欠いているから。「昨季最多安打のタイトルを獲得した2番の中野(打率.238)、リーグ最高出塁率をマークした4番の大山(悠輔内野手、同.174)の調子が上がってくれば、変わってくるはずです」と野口氏は上がり目を強調する。

また、今季の阪神打線が開幕早々、いい当たりが野手の正面を突いたり、守備陣のファインプレーに阻まれたりと、不運に見舞われているのも事実だ。

3月29日の巨人との開幕戦(東京ドーム)では、森下翔太外野手が放った“先制2点二塁打”になりそうな飛球を、巨人の梶谷隆幸外野手にダイビングキャッチされ、併殺となった。4日のDeNA戦でも1点ビハインドの8回、2死一、二塁で、代打・糸原健斗内野手の中前に抜けそうな打球を、牧秀悟内野手の美技に阻まれた。

野球に“たられば”は禁物と言われる。だが、野口氏は「仮にこの2つの打球がタイムリーになっていたら、2敗が2勝にひっくり返っていた可能性が高いと思います」と苦笑する。

「岡田監督、選手を含めて、チームにはまだ、あわてている人は誰もいないでしょう。当面は大型連敗をしないようにして、なるべく早く勝率5割に到達すれば、周りも落ち着くと思います」と野口氏。いま猛虎に必要なのは、きっかけだけなのかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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