知っておきたい猫の胃腸の病気「腸重積」と「巨大結腸症」 命にかかわることも

人と同じように猫のおなかには、健康維持に欠かせない重要な臓器が集まっています。そこで今回は、猫のおなかにある臓器のなかから胃と腸に着目し、その働きと役割や2つの注意したい病気について、獣医師の佐々木文彦先生と重本仁先生にお話を伺いました。

胃腸の主な働きと役割

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食べ物を胃・小腸で消化・吸収し、大腸で便を形づくるのが、胃腸の主な働き・役割です。

胃に送られた食物は殺菌されて胃液と混ざり合い、ドロドロになるまで消化されてから、少しずつ小腸へ送り出されます。小腸では栄養素の消化・吸収が行われるのですが、このときほとんどの水分が吸収され、大腸の結腸で残りの水分などを吸収し、内容物を固形化して便を形成します。

そして、大腸の直腸で貯蔵された便が一定量を超えると、脳にその情報が送られ便意が生じるようになっているのです。

注意したい胃腸の病気(1)「腸重積」とは

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腸重積とは、腸の一部が内側に引き込まれて、重なってしまう病気です。重なった部分の腸は通過障害を引き起こし、ひどい場合は腸閉塞を起こし、命にかかわることも。

腸重積の主な原因

主な原因は、寄生虫や感染症による胃腸炎、ヒモ状の異物の誤食、消化器系の腫瘍などから続発することが知られていますが、なかには「原因不明」というケースもあります。

腸重積の主な症状

  • 腹痛のためにうずくまる
  • 何度も排便のしぐさをする など

そのほか、食欲不振で水を飲まなくなると、脱水症状を起こしぐったりすることもあるでしょう。

腸重積の主な治療法

腸重積の治療では、腸の整復手術を行います。重積した部分が壊死している場合は、その部分を切除するなどの処置を行います。

注意したい胃腸の病気(2)「巨大結腸症」とは

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巨大結腸症は、大腸の結腸の蠕動(ぜんどう)運動がうまく行われず、便が停滞し、結腸が拡張してしまう病気です。

巨大結腸症の主な原因

原因は神経系の異常や炎症疾患などさまざまです。ただし、骨盤骨折や骨盤奇形による骨盤腔の狭窄(きょうさく)や、脊髄(せきずい)疾患に起因することが多いでしょう。

巨大結腸症の主な症状

便秘の症状が続き、それが長期にわたると元気消失、食欲不振、脱水、ときに嘔吐が見られます。

巨大結腸症の主な治療法

巨大結腸症の治療では、便秘を起こしにくい食事療法や薬の投与、浣腸(かんちょう)によって、症状を緩和します。また。拡張してしまった部分を手術で切除する場合もあるでしょう。

猫の胃腸は病気になりやすく、病気が進行すると手術が必要になるほか、最悪の場合は命にかかわる危険もあります。愛猫の命と健康を守るためにも、ふだんから水分補給やトイレの様子を観察し、少しでも気になることがあれば動物病院に相談するようにしましょう。

お話を伺った先生/佐々木文彦先生(大阪府立大学名誉教授 医学博士 獣医師)、重本仁先生(王子ペットクリニック院長)
参考/「ねこのきもち」2024年3月号『イラストで、部位ごとによ~くわかる 図解 猫のおなかの働き 病気のしくみ』
文/宮下早希
※記事と写真に関連性はありませんので予めご了承ください。

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