篠原涼子×バカリズム バディ役で意気投合!「セリフ量に、2人でブーブー言いながらやっています」

ドラマ『イップス』(フジテレビ)は、“書けなくなった”ミステリー作家と“解けなくなった”刑事の絶不調コンビが事件を解決していくミステリーコメディ。

【写真】息ぴったりにドラマについて語る篠原涼子&バカリズム

プレッシャーや心の葛藤によって普段は何も考えずにできていることが急にできなくなってしまう症状“イップス”を抱えている作家・黒羽ミコ(篠原)と、刑事・森野徹(バカリズム)。

ともに仕事から逃避するために訪れていたサウナ施設で偶然出会い、バディを組むことになり、時に助け合い、もがきながら事件を解決していく姿が描かれます。

本作でW主演を務める篠原さんとバカリズムさんに台本を読んだ感想、お互いの印象、現場でのエピソードをインタビュー。また、自身が壁に当たったときの対処法も聞きました。

篠原涼子&バカリズム 脚本に不満!?「セリフが多い!」

──台本を読んだ感想を聞かせてください。

バカリズム:ミステリーっていくつか見せ方があるじゃないですか。最初に犯人が分かっている状態で進んでいくものと、登場人物が推理して最終的に犯人が分かるパターンと。そのパターンを考えて読んでいたら、「あ、このパターンなんだ」という驚きがありました。

具体的なことは言えないですが、今まで自分が見てきたミステリーものとは微妙に違う展開がすごく新鮮でした。

篠原:事件の裏側や犯人の心もしっかりと描かれていて、「こういうこともあるよね」と理解できると思うので、ドラマを見たあとに嫌な思いにはならない感じがしました。それがこの作品の良いところだなと思います。

──劇中では、ミコと森野のテンポのいい掛け合いが多くありますね。

バカリズム:そうですね。ただ、セリフが多い!1話ではミコと森野がずっともめてます(笑)。

篠原:何とかしてください!視聴者の方には面白く見てもらえると思うのですが、演じるほうは大変なんですよ(笑)。

バカリズム:自分が脚本を書いて、演者としても出る場合は、覚えるのが面倒くさいから長い説明セリフとかは相手の人に任せることが多いんですけど(笑)。

篠原:ずるい!

バカリズム:でも今回はそれができないですから。現場では2人で、どうやってスタッフさんにバレないようにセリフを省略するか、みたいな話をかなりしていますよね(笑)。

篠原:書かれているセリフは面白いんだけど、覚えるのが大変ですから、「なんかうまいことできないかな?」って。

バカリズム:そうしたら、篠原さんが1回ごっそりセリフを飛ばしたことがあって。「うわ、思い切ったな」と思ったら、普通に忘れていただけだったっていうこともありました(笑)。

篠原:あははは(笑)。

──すでに息ぴったりの様子ですが、現場の雰囲気はいかがですか?

バカリズム:すごくいい空気ですよね。

篠原:ホットな感じで。

バカリズム:割と過酷な部分もあるんですけど。

篠原:バカリズムさんは走るシーンもあって過酷ですよね(笑)。

バカリズム:そうですね(笑)。でも、役柄的に序盤はギクシャクしているのですが、カメラが回っていないところでも息も合っている気がしています。

篠原涼子「バカリズムさんにスパイスを与えられたら」

──以前、映画『ウエディング・ハイ』で脚本家と出演者として“競演”していますが、お互いにどのような印象ですか?

篠原:今回バディをやらせていただくことになったときに、『ウエディング・ハイ』で脚本をやられていたし、監督みたいな演出的なこともやられている方なので、「そういう目線で見られていたら…」とドキドキしてしまって(笑)。

バカリズム:そんな演出的な目線では見てないです(笑)。

篠原:でも、本当にバカリズムさんは面白くて、才能があって、不思議な方だなと思っていて。だから、いつも現場でバカリズムさんを観察しています。

バカリズム:そうんなんです!ちょっと離れたとこからずっとニコニコしながら見ていて。

篠原:ニコニコしちゃうぐらい面白いんですよ。壁に入った石をほじっている姿とか。本当に目が離せない感じ。日々楽しませていただいてます(笑)。

バカリズム:逆に僕は、篠原さんと同世代ではあるんですけど、ずっとテレビで見ていた方で。

篠原:東京パフォーマンスドールってご存じですか?

バカリズム:めちゃめちゃ知ってますよ!そこから、アーティストさんとしても、ドラマや映画もそうですがバラエティ番組でも活躍されてますし、“全部ができる方”という印象です。だから、最初はすごく緊張していたんですけど、めちゃくちゃ温かい目で見守ってくださるので、うれしいです。

篠原:私もバカリズムさんと共演できることがすごくうれしいんです!バカリズムさんが出ている作品をいろいろと調べて、全部見ちゃって、「もっとお芝居している姿が見たい」と思っていたら今回のお話をいただいたので。

画面越しに見ていたのに、生でお芝居を見られるなんて、こんな貴重なことはないと。だから、毎日見逃せないんです。興味津々な方と共演できること自体がありがたいですし、私自身もバカリズムさんにスパイスを与えられたらいいなと思いながら撮影しています。

バカリズム:光栄です!

バカリズム 脚本を書くより役者専業のほうが気が楽!?

──それぞれが演じる役柄に共感する部分はありますか?

篠原:できていたことができなくなる(=イップス)ということは、分かる気がしていて。ミコや森野のような大きなことではないですが、自分にも「あれ、なんかうまくできないな」と思うことはありますから。それがイップスなのかは分からないですが。

──そういう共感があると、役は作りやすいのでしょうか?

篠原:そうですね…ミコは明るくて、図々しいというか、なんでもあまり考えずに物事を発言してしまうキャラクター。だからこそ、イップス状態の精神的なところは大事に演じたいなと思っています。

──バカリズムさんはいかがですか?

バカリズム:高校時代に野球をやっていて、僕もですがチームメイトも割とよくイップス状態になっていたんです。でも、当時は「イップス」という言葉がメジャーじゃなかったですし、イップスだということを自覚していなかったので、「スポーツの世界によくある現象」として捉えていました。

大人になってから、「あ、あれってイップスって言うんだ」と知りましたね。ただ、経験していることではあるので、森野の気持ちに共感はできるかなと思っています。

──森野の人間性や性格には共感できますか?

バカリズム:うーん…実際の自分の性格よりもだいぶ嫌な人間だなと思いながら演じているので、共感はできないですね(笑)。

──篠原さんはミステリー作家を演じるのは初めてかと思います。役作りはどのようにしましたか?

篠原:ミステリー作家の方って、どんな洋服を着て、どんな見た目をしていて、どんな発言の仕方をするんだろうと思っていろいろと調べました。そのニュアンスをミコにも取り入れようと思って、試したのですが…現場で全部消えました(笑)。

バカリズム:え?なんでですか!?

篠原:いろいろと中途半端な感じがして、周りの方の意見もあって、全部調べてきたことは忘れました!

──忘れた結果、どのような役の方向性にしたのでしょうか?

篠原:それは…自分の中でもまだ分かっていなくて(笑)。

バカリズム:ははは(笑)。

篠原:だから今、スタッフさんを見ながら「大丈夫ですか?」と探っています(笑)。

バカリズム:でも、調べたことはムダにはなってないですからね。いろいろなものを見た時点で吸収してると思うので。

篠原:吸収はしてると思うんですけど、何も結果として出てないです(笑)。

バカリズム:フォローすると、そんなこと言いながらも、ちゃんと黒羽ミコという人物はちゃんと出来上がってますので。

篠原:ありがとうございます!

──バカリズムさんは今作には役者として携わっていますが、脚本家と役者で作品に関わる心境は違うのでしょうか?

バカリズム:違いますね。演じる側には演じる側の責任はあるのですが、脚本を書くよりも気が楽ですね。自分が脚本を書いていないという“強み”があるので(笑)。

最近、「脚本・バカリズム」と大きくうたわれることが多くて、それがものすごくプレッシャーなんです。「全部お前の責任だ!」と言われているみたいな(笑)。でも、今回はそのプレッシャーがないですし、そもそもの責任の種類が違うので、割と気楽にやらせてもらっています。

篠原涼子&バカリズム 過去のトラウマとその対処法

──お2人には、イップスになったときや壁にぶつかったときの対処法はありますか?

篠原:以前、舞台をやったときに、たぶん20秒くらいだと思うのですが、セリフが出てこなくて芝居が止まったことがあるんです。そのとき、自分の中では1分くらいに感じていたんですけど。

バカリズム:舞台上の何十秒ってめちゃくちゃ長く感じますよね。

篠原:そうなんです!しかも、いつもは普通に言えているセリフが言えなくなってしまって。

バカリズム:分かります!

篠原:体も口も覚えていて、寝ていても出てくるようなセリフのはずなのに、いきなりピタッと出てこなくなって。頭も真っ白になっちゃって。でも、ベテランの女優さんが相手役でいらして、その方はたぶん慣れているのか、さりげなく流れを戻すように場をつないでくださって。

それで私もセリフを思い出したんですけど。もうトラウマですね。舞台、怖い(笑)。

バカリズム:そうですよね。ドラマはまだNGにして、撮り直すことができますけど、舞台はやり直しがきかないですから。お客さんも見ていますし。

篠原:しかも、コメディじゃなかったので、焦っちゃって。

バカリズム:笑いにできないのはつらいですね。どうやってそのトラウマを解消したんですか?

篠原:今トラウマ自体は解消されていると思うんですけど…そのミスをしたのが公演の序盤だったので、そのあとは地方公演が終わるまで毎日劇場入りしたら必ずその部分のセリフを見るようにしていました。バカリズムさんは?

バカリズム:僕も1回、単独ライブでコントをやっているときに、完全にセリフが真っ白になったことがあって。

篠原:怖いですね…。

バカリズム:1人コントなので、何も進まないんですよ。だからもう白状するしかなくて「すいません。完全に真っ白になりました」とお客さんに言いました(笑)。それはそれで滅多にないことだからお客さんも面白がってくれたんですけど、かなりのトラウマになっちゃって。

それからは、とにかくセリフを繰り返し覚えるし、頭に入っても飛ぶことはあるから飛んだときにどこからやり直せばいいかと考えるようになりました。

篠原:1人ですから、誰もフォローできないんですね。私、(バカリズムさんの)「フェイク」っていうライブを見たことあるんですけど。

バカリズム:…?「フェイク」って何だろう。

篠原:1人で刑事さんと普通の男性を演じているネタがあって。あれを見たときに「こんなにセリフが大量なのに、どうしたらこんなスピード感でできるんだろう。すごいな」と思ったんです。

バカリズム:もう、繰り返し練習するしかないんですよね。

篠原:それでもピタッと真っ白になっちゃうことがあるってことですよね?そうしたら、何もできなくなっちゃいますね。

バカリズム:1人で何役もやるネタもあるので、余計に「何してるんだっけ?」「今どっちの役やってるんだっけ?」と思うことがあって。

篠原:1人芝居は大変ですね。…あ、さっきお話したの「フェイク」じゃなくて「fiction」でした!

バカリズム:だろうな、と思ってました(笑)。でも、見てくださっていてうれしいです!

撮影:今井裕治

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