イスラエル、ガザ支援ルートを開放すると発表 米大統領と電話協議後

イスラエルは4日、パレスチナ自治区ガザ地区に続くルート2カ所の開放を承認したと発表した。ガザへの支援物資の搬入を増やすためとしている。ガザではイスラエルが軍事作戦を続け、人道危機が深刻化している。

開放されるのは、ガザ北部のエレズ検問所と南部のケレム・シャローム検問所。

エレズ検問所は、今回の戦争が始まってから初めて一時開放される。イスラエルのエリ・コーヘン外相は昨年11月、「イスラエルとガザの間の接触はもうない」とイスラエルのメディアに語っていただけに、同検問所の開放は意義が大きいとされる。

ケレム・シャローム検問所からは、ヨルダンからの支援物資が運び込まれる。

この発表は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とアメリカのジョー・バイデン大統領が電話で協議した数時間後にあった。両首脳の対話は、ガザで人道支援活動を行っていた慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の職員7人が1日にイスラエル軍の空爆で殺害されて以降、初めて。

ガザ情勢をめぐっては、ネタニヤフ氏はガザでのイスラエル軍の行動をめぐり、国内外で怒りが向けられている。一方、バイデン氏は、イスラエルへの無条件の軍事支援を抑えるよう求める圧力に直面している。

この日の30分弱の電話協議についてのホワイトハウス発表によると、バイデン氏はネタニヤフ氏に対し、アメリカの支持を維持しようと思うならば民間人の被害や人道面での苦痛を防ぐための措置が必要だと警告した。バイデン大統領がこの電話会談中に、今回のルート再開を明確に求めたとされる。

バイデン氏はこの会談で、「人道支援職員への攻撃と全体的な人道状況は容認できないことを強調した」という。

アメリカは歓迎

イスラエルの検問所開放に関する発表については、米国家安全保障会議のジョン・カービー戦略広報調整官が歓迎を表明。「今すぐ、完全かつ迅速に実施されなければならない」と定例会見で話した。

カービー氏はまた、アメリカの政策は、イスラエルが「罪のない民間人と支援職員の安全」を守るためにとった措置によって決まると付け加えた。

イスラエルへの武器輸出に影響が及ぶのかと記者から問われると、同氏は、未決定の「取り組みや決定の予告」はしないと返答。

「イスラエルの自衛は揺るぎない。アメリカはイスラエルの自国防衛に対する支援から手を引くことはない」と述べたが、一方で、自衛の方法は変化する必要があるとした。

アントニー・ブリンケン米国務長官も4日、イスラエルに変化がなければ、アメリカの政策が変わることになると述べた。

深刻な飢餓

ガザへの支援物資を積んだトラックは現在、イスラエルの複雑で官僚的な検査を受けなければガザに入れない。そのため、ガザ境界ラファのエジプト側には何カ月にもわたり、トラックの長い列ができている。

ヨルダン、アメリカ、イギリスは支援物資を空から投下しているが、効果は小さい。地上ではパレスチナ人らがパラシュートの故障で物資の直撃を受けたり、海に落ちた物資を取ろうとして溺れ死んだりしている。

国連が支援した最近の報告では、ガザにおける人道的大惨事が人為的な飢饉(ききん)に変わりつつあるとの証拠が示された。

国連のフォルカー・トゥルク人権高等弁務官は最近のBBCの取材で、ガザでイスラエルが戦争の武器として飢餓を利用しているという「もっともらしい」事例があると話した。

(英語記事 Israel says it will open new aid routes into GazaBiden says Israel must prevent civilian harm in Gaza to keep US support

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社