焦点:バイデン氏がイスラエルに「最後通告」、民間人保護なければ支援見直し

Arshad Mohammed Matt Spetalnick Steve Holland

[ワシントン 4日 ロイター] - バイデン米大統領が4日、イスラエルのネタニヤフ首相に対して事実上の「最後通告」を突き付けた。パレスチナ自治区ガザの市民や外国の支援団体関係者の保護を徹底しないなら、米国はイスラエル支援を見直すと宣言したのだ。

イスラエルはこれまでのイスラム組織ハマスとの戦闘を続ける中で、多数のパレスチナ市民の犠牲者を生み出しており、米国は何度も戦術を修正するよう求めてきた。そして1日に米国の食糧支援団体ワールド・セントラル・キッチン(WCK)のメンバー7人がイスラエルの攻撃で死亡したことで、ついにこうした強いメッセージを発した。

WCKメンバーの死亡についてイスラエル側は、意図的な攻撃ではなかったと説明している。

ホワイトハウスはネタニヤフ氏に求める具体的な対応策や、同氏が米国のメッセージに耳を貸さなかった場合にどうするのか詳しいことは明らかにしていない。ただ複数の専門家は、米国からイスラエルへの武器供与にブレーキをかけたり、国連において米国がイスラエル支持姿勢を弱めたりすることを示唆していると分析した。

米シンクタンク、外交問題評議会のアナリスト、スティーブン・クック氏は、バイデン氏が先月に自身とネタニヤフ氏の関係が転換点に向かいつつあると発言したことに触れて、その転換点が突然現実化しようとしていると指摘した。

別の米シンクタンク、ワシントン近東政策研究所に属する元外交官のデニス・ロス氏は「バイデン氏が実質的に言っているのは、人道的なニーズに対応しない限り、(軍事)支援に条件を付けざるを得ないということだ」と述べた。

11月の大統領選で再選を目指すバイデン氏は、パレスチナ市民の犠牲者が増加する事態に幻滅した与党民主党左派からのネタニヤフ氏の行動抑制を迫る圧力に応じながら、大半が親イスラエルの無党派層に離反されないようにするため、ガザ紛争を巡る問題では一貫して難しいかじ取りを強いられている。

そうした中でこれまでバイデン氏は、イスラエル向け武器供与を条件付きとすることに抵抗を続けてきた。

しかしホワイトハウスの声明によると、バイデン氏は今、イスラエルに「民間人の被害や人道面での苦難、支援従事者の安全問題を解決する個別具体的で目に見える措置を発表し、実行すること」を求めている。

また声明には、米国のガザに関する政策はイスラエルによるこれらの面での当面の対応を評価した上で決定すると明記された。

ブリンケン国務長官はもっとはっきりと「イスラエルの政策に必要な変化が見られなければ、米国の政策は(従来から)変わるだろう」と言い切った。

イスラエル政府はホワイトハウスの声明発表から数時間後、ガザへの支援物資流入を増やすための幾つかの対応策を発表。ただこれが米国の要求を十分に満たすのかどうかはまだ分からない。

<堪忍袋>

イスラエルがガザで市民にとって比較的安全な避難場所として最後に残った最南部ラファへの地上侵攻を計画していることについても、米国は思いとどまるよう働きかけを強めてきた。

米国とイスラエルの協議に詳しい関係者の1人は、バイデン氏が自らの懸念を伝え、ネタニヤフ氏がイスラエル側の方針の妥当性を主張する緊迫した電話でのやり取りが時には30分続いたケースもあったと明かす。

あるホワイトハウス高官によると、米国とイスラエルの会話は「非常に直接的かつ率直」で、米側の発言者にはハリス副大統領やブリンケン氏、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)などが含まれていた。

同高官は、ガザで支援従事者や市民が殺害されることは決して許されないと強調し、包括的な解決策が求められると付け加えた。

バイデン氏は長らく米国のイスラエル支援を抑制することを避けてきたが、とうとう堪忍袋の尾が切れる段階に達しているかもしれない。

かつて国家安全保障会議(NSC)で中東問題を担当していたマイク・シン氏は「ガザにおけるイスラエルの軍事作戦について、それを支持する米国内と国際的なコストが、作戦の成果よりも大きくなるとバイデン政権が感じていたポイントは常にあったはずだ。驚くのはそれが現実になっていることではなく、そこに至るまでの時間がとても長かったことだ」と話した。

現在ワシントン近東政策研究所に属するシン氏は、イスラエルが米国の提示した条件を満足させられなければ、次に起こりそうな事態は米国が国連安全保障理事会で、2006年にイスラエルとレバノンの親イラン民兵組織ヒズボラを停戦させたような決議案を成立させようとすることだろうとみている。

シン氏は「武器供与に条件を付けるのは議会で強い反対に直面する公算が大きく、イスラエルをヒズボラや他の親イラン組織の攻撃に対して脆弱にしてしまう」と指摘した。

ただバイデン氏は先月、ラファ侵攻は「越えてはならない一線」になるとくぎを刺した後で、イスラエル向けに「防衛目的」の全ての兵器は決して供与を停止しないとの意向を表明。攻撃兵器の供与については明らかにしなかったため、状況次第では供与に条件を付けるのではないかとの観測が浮上している。

元中東担当国家情報副長官のジョナサン・パニコフ氏は、バイデン氏は米国とイスラエルの関係を揺るがすほどの、例えば高額兵器の供与差し止めや国連でイスラエル支持を完全に放棄するといった劇的な措置は講じそうにないと予想しつつも、小型兵器供与に条件を付けたり、パレスチナ人に危害を加えているユダヤ人入植者へのさらなる制裁を発動したりする可能性はあるとの見方を示した。

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