中国の過剰生産能力、米財務長官が懸念表明 輸出だけに頼れず

David Lawder

[広州(中国) 5日 ロイター] - イエレン米財務長官は5日、中国の過剰製造能力が世界経済に及ぼす影響に対する懸念が高まっていると指摘した。広東省広州市の米国商工会議所で語った。

中国は輸出だけに頼って急速な成長を達成するには大きすぎるとし、他国の経済を圧迫している過剰な生産能力を削減することで利益を得るとの見方を示した。

イエレン氏は、製造業に対する中国政府の直接的あるいは間接的な支援は国内の開発目標と結び付いていることを理解していると発言。

その上で、現状ではこうした支援が中国の国内需要や世界市場の許容量を大幅に上回る生産能力につながっていると述べた。

中国の過剰生産能力は以前から問題だったが、電気自動車(EV)、バッテリー、太陽エネルギー製品などの新分野で新たなリスクが顕在化し、米国、メキシコ、インドの競合労働者や企業が不利益を被っているとした。

「生産能力の過剰に対処し、市場ベースの改革を検討することが、中国の利益につながると信じている」と発言。過去数十年間の中国の市場原理改革との類似点を示し、それが成長を促し、何億人もの人々を貧困から救い出したと述べた。

また、中国国内の競合他社に比べて不公平な扱いを受けているなど、中国における事業環境の悪化について米企業や多国籍企業が挙げる懸念を提起するとした。

イエレン氏は何立峰副首相との会談の冒頭、過剰生産能力、国家安全保障に関連した経済的規制など難しい課題について両国が緊密に対話することが必要だと述べた。

<金融分野で協力>

米国か中国で銀行破綻が起きた場合に金融リスクを抑制するための措置について、両国の金融作業部会が検討してきたと指摘。「米国や中国の大手行が破綻した場合に共同でどう対処するかの予行演習を含め、双方の間で技術的な意見交換をしてきた」と語ったが、検討結果について詳細は明らかにしなかった。

中国当局者と会談した目的の一つは両政府間の「強固な対話チャネル」を確立することだと説明した。

金融システムのリスクに加えて、マネーロンダリングや気候変動などの分野でも米中が協力して対処していると述べた。

イエレン氏は6日から8日は北京で中国政府要人と会談する予定。

<中国国営メディアが反論>

中国の過剰生産能力のリスクに関するイエレン議長の発言について、国営メディアは二重基準だと反発している。

英字紙チャイナ・デーリーは、国内需要が満たされれば余剰生産物を海外市場に輸出するのは経済学の基本だと主張。「西側諸国は何世紀にもわたってそうしてきたが、中国に関しては世界を脅かす『過剰生産能力問題』とされる」と批判した。

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