鎌倉市 ケアラーが「望む人生」を送れるように 条例施行で啓発と支援 鎌倉市

地下道ギャラリーでの展示

鎌倉市は、県内初の「ケアラー支援条例」を4月1日に施行した。ケアラーとは、介護や援助等を必要とする家族や知人を無償でケアする人のこと。心身の疲弊や孤立、自分らしく生きる機会の損失といった負担もある。条例施行により、市民の認識を高め、市・関係機関・学校などが連携を図り、孤立防止や学習・職業選択の機会確保などこれまで以上に包括的な対応で各ケアラーが必要とする支援につないでいく。

市は2022年から、介護、障害、子育て、生活困窮など、家庭での困りごとを包括的に相談を受けたり、関係機関で連携支援したりする重層的支援体制整備事業を実施している。同時期から庁内委員会を設け、各事業などでもケアラーを想定して取り組み、関係機関や学識者らへのヒアリングも行ってきた。

市では、介護保険に関する調査や昨年度の「学校・家庭生活に関する調査」などから、ケアラーの存在や傾向を認識。児童・生徒を含むヤングケアラーも一定数いるとみている。

「例えば、遅刻などが多い生徒がいた時、ヤングケアラーであるためにそうなっているのかもしれない。各家庭の背景を想像してみると、その後のフォローも変わってくる」(市福祉総務課)

学習・就業の機会確保も

ケアラーの望む支援は家庭の状況によって異なり、進学や就職といった人生のタイミングによっても必要な支援は変わる。市は、孤独・孤立を防ぐため、家庭訪問や長期的なフォローもしながら、ケアラーが「自分らしく生きる」ことができるよう支援していく。

ヤングケアラーに対しては、今年度から福祉機関などとの橋渡し役を担うスクールソーシャルワーカーを3人増員し、市と県からの派遣合わせて6人に。子どもや保護者に対するカウンセリングなどを行う教育相談員は、2人増員の10人とするなど支援を強化する。

「『大丈夫?』の一言で、心が楽になったという声もある。決して『ケアラー=かわいそう』ではなく、孤立することなく、安心できるように接してもらえたら」と市担当者は話す。市は今回の条例施行をきっかけに、市民にケアラーの存在を認識してもらおうと、4月8日(月)まで鎌倉駅の東西をつなぐ地下道ギャラリーで啓発の展示も行っている。

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