元気の秘訣は仕事 93歳現役理容師・芝浜弘子さん 平塚市

常連客の髪を切る芝浜さん

ヘアーサロン・シバハマ(桃浜町)の店主・芝浜弘子さん(93)は、76年前から平塚の地で理容師として働いている。激動の戦中・戦後を乗り越え、今もなお現役ではさみを握り続ける原動力を聞いた。

「関東大震災で被災した両親が東京から平塚市に移住して紅谷町で店を開いたので、開店して100年は経つ」と話す芝浜さん。芝浜さんが5歳の時、店主だった父親が早逝。母親の再婚相手となった義父が後を継ぐも、平塚空襲により店を失った。

終戦直後は、桃浜町にある羽衣公園のバラックで営業していたという。17歳で理容師免許を取得。義父や住み込みで働いていた理容師らと店を切り盛りした。

木谷實の弟子も来店

桃浜町に居を構え、多くのプロ棋士を輩出した囲碁棋士の故木谷實九段は、弟子たちに同店で髪を切るよう命じていたという。「お弟子さんはみんなここで坊主頭にしろと言われていたみたい」とほほ笑む。

現在も一緒に店に立つ息子の悟さん(67)の影響で、ベルマーレ平塚(現湘南ベルマーレ)がJリーグに加盟した1993年からサポーターを続けている。「自転車に乗れた時は、息子と交代で店の休憩時間にスタジアムへ応援に行っていた」と懐かしむ。

クラブの経営危機が訪れた2000年、選手のために有志による食堂が設立された時は、調理ボランティアとして支援した。

溢れる感謝

約30年、同店を利用している70代の常連客は「世間話が楽しくて通っている。いつも平塚の情報を教えてもらえるし、安心感がある」と芝浜さんの魅力を語る。

芝浜さんの元気の秘訣は「仕事をすること」といい、「休日は辛い」と快活に笑う。「お客さまに支えられて続けている」と感謝の思いを胸に今日も仕事に励む。

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