「これぞ真のアタッカー!」石川祐希の“勇猛果敢”なバックアタックに観客総立ち! 現地解説者も「ありえない」と感嘆

現地時間4月3日、バレーボールのイタリアリーグ/スーペルレーガで2023-24シーズン・プレーオフ準決勝の第2戦が行なわれた。男子日本代表の石川祐希が所属する6位アリアンツ・ミラノは、2位シル スーサ ヴィム・ペルージャとホームで対戦し、セットカウント3‐2(25-27、25-21、21-25、27-25、20-18)で激闘を制して成績を1勝1敗とした。

3戦先勝(5試合制)したチームが決勝へ駒を進める準決勝で、ミラノは敵地での初戦に敗れて黒星発進。だが、今季のペルージャとの対戦はレギュラーシーズン2戦に完勝し、惜敗したコッパ・イタリア準決勝を含む3試合すべてがフルセットへ突入しており、まさに竜虎蒼白。3日前の初戦はセットカウントこそ1-3だったが、2セットダウンから奮起してフルセットへ迫り、意地を見せた。
両チームは初戦と同じ先発メンバーで、ペルージャは、イタリア代表の正セッター、シモーネ・ジャンネッリに、アウトサイドヒッター(OH)ポーランド代表カミル・セメニュクとウクライナ代表オレフ・プロツニスキー、オポジット(OP)チュニジア代表ワシム・ベンタラ、ミドルブロッカー(MB)はブラジル代表フラビオ・グアルベルトとイタリア代表ロベルト・ルッソ。

ミラノは、安定感抜群の攻守でチームをけん引する石川とその対角にブルガリア代表のベテランOHマテイ・カジースキ。MBはブロックが好調なアルゼンチン代表アグスティン・ロセルとマルコ・ヴィテッリ(イタリア)、OPが第1戦にチーム最多得点をマークしたベルギー代表フェレ・レゲルス(ベルギー)、司令塔はイタリア代表パオロ・ポッロを起用し、1勝目を狙う戦いに臨んだ。
◆第1セット◆
最初の得点をもたらした石川はミドル勢による4連続得点に応えて同点弾を決める。ところが、中盤を過ぎたところで相手OHプロツニスキーにエース2本を許した後、被ブロックなどでビハインド4点へ後退。終盤にカジースキの3連続エースで再び接戦へ持ち込み、石川の5得点目でセットポイントを阻止して粘るも、相手のエースに屈して先行を許した。

◆第2セット◆
開始直後にペルージャのサーブで3失点するが、サーブが好調なカジースキのエースと石川のレフト攻撃2本で巻き返す。すると中盤の入り、ポッロのショートサーブに翻弄された相手が攻撃ミスを連発する。司令塔ジャンネッリを狙いMBに2段トスを強いると、5打連続でプロツニスキーがアタックミス。一気に前に出たミラノは終盤に2点差まで詰め寄った相手を、石川の多彩なアタック3本で一掃し、試合を振り出しへ戻した。この時点で石川は10得点。決定率67%をマークすると同時にプレーオフのアタック決定本数が100本に到達した。
◆第3セット◆
序盤からペルージャのサーブに再び苦戦する。相手の誤打やポッロのエースで中盤を2点ビハインドでしのぐが、セメニュクのエース1本を含むサーブでレセプションを崩されて4失点。石川がクロス弾で最初のセットポイントを阻むも、点差が開いたまま2セット目を奪われ連敗の危機に直面した。

しかし、追い込まれても一歩も引かないミラノの真価が、ドラマティックな決着を引き起こす。

◆第4セット◆
決意を込めたブロックで先制点を挙げた石川は、味方が執念の守備でつないだボールをコート中央から叩き込みチームを鼓舞。OPレゲルスが爆発力満点の攻撃で一段と士気を引き上げる。この試合で始めてリードを維持して中盤を切り抜けると、ネット際の守備で追加点に貢献した石川が、今度はブロックを下げる好判断で指先を狙ったペルージャの意表を突き、リードを3点へ広げる。大興奮したロベルト・ピアッツァ監督は、全身を使って激賞し、この1点の重みを石川と分かち合った。そして、終盤の追い上げで背後に迫る相手にここでも石川が立ちはだかる。ネットから離れた難しいトスを勇敢に叩き、ブロックアウトでセットポイントを奪う。それをロセルのブロックで仕留めたミラノが、今季の対戦5試合で4回目となるフルセットへ持ち込んだ。
◆第5セット◆
ミラノは2点差の劣勢でコートチェンジの後、レゲルスと石川の2打で8-8とするが、ペルージャに再びリードを譲り11-13。そこから、絶好調のレゲルスが大活躍を見せる。強烈なスパイクと3本目のエースを決めて同点。以降も次々とバックアタックを炸裂させて相手のマッチポイントを3度にわたり回避する。ロセルのブロックでついに逆転に成功したものの、2度目のマッチポイントを阻止された後、18-18で相手のサーバーはエース3本を決めていたベンタラ。勝敗を左右するこの場面で大仕事をやってのけたのはやはり石川だった。
レセプションは相手コートへ返ってしまうが、ブロックに引っ掛けたボールを好守が光ったリベロのダミアーノ・カターニャ(イタリア)がディグ。それをコート外まで追ったポッロの配球が、アタックラインのかなり後方へ上がる。被ブロックのリスクを負う難局だったが、石川はワンステップで合わせると全身全霊のフルスウィング。2枚ブロックを弾き飛ばしてマッチポイントを奪取した。
満場総立ちの大喝さいが沸き起こった直後、ヴィテッリが、14得点・被ブロック0本の相手MBフラビオを1枚でシャットアウトして幕。ミラノが劇的な勝利で、1勝目をもぎ取った。

両チームの選手たちが挨拶を交わし終えた頃、手に汗握る激戦を終えた現地は日付が変わっていた。

石川は19得点(アタック18、ブロック1)を記録。大黒柱と呼ばれるにふさわしいプレーとリーダーシップで重要な場面で必ずチームを先導し、存在感を示した。ミラノは初戦で今ひとつ振るわなかったサーブが復活。1本のみだったエースは、この試合で9本をマークしてペルージャと並んだ。また、イタリアリーグ初シーズンの20歳レゲルスが、試合最多31得点を叩き出した活躍も大きな勝利要因となった。
国際バレーボール連盟の配信サービス『Volleyball TV』で実況を担当したロレンツォ・カスティリア氏と解説者の元イタリア代表ジョルジョ・ゴルドーニ氏は、要所を締めた背番号14のパフォーマンスに感嘆しきりで、なかでも第5セットの2打でひと際ヒートアップ。レフトからのクロス弾で8-8とした場面では、あまりの球速に「マンマ・ミーア」を連発し、「電光石火!」「ブロックを完全翻弄」「速すぎて要スロー再生、肉眼では通過点が分からない」と仰天し、マッチポイントをもぎ取って観客のスタンディングオベーションを浴びた勇猛果敢な後衛からの打球には、「ありえない!」を繰り返しながら、「超現実なプレー」「これぞ真のアタッカー!」と無限大の能力に度肝を抜かれた様子だった。

なお、準決勝2戦目のもう1試合は、高橋藍が所属する5位モンツァが首位トレンティーノに1-3で敗れ、2敗目を喫した。

第3戦は日本時間4月8日午前1時開始予定。ミラノは連勝を狙いペルージャの本拠地へ乗り込む。

構成●THE DIGEST編集部

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