【特集】海水浴場で異変 砂浜が消えた…夏の海水浴は 地域の死活問題【新潟・上越市】

砂浜が無くなり土台がむき出しに

上越市の海水浴場で、砂浜が削られる被害が出ています。対策工事も計画されていますが、夏の観光シーズンに間に合うのか。観光関係者からは不安の声が上がっています。

上越市にある「鵜の浜海水浴場」。夏は多くの家族連れでにぎわいます。広い砂浜と透明度が魅力ですが、今、窮地に立たされています。

■庭山記者
「私が今立っているこの場所は、去年までは砂浜だった場所なんです。本来であればこの上まで砂があったということで、約2mほどの砂が完全に無くなってしまったというのがわかります。」

残されていた台座には、大潟区に伝わる人魚伝説の碑「人魚像」が設置されていました。4年前の写真を見ると、像の周りは砂で囲まれ海まで20~30mの砂浜が続いていました。
しかし、今では波がすぐそこまで押し寄せるようになり、人魚像は、去年12月に一時撤去されました。

■上越市柿崎区総合事務所 石澤親久次長
「冬季は風も強く吹きますし、その風で波も高くなり、その影響で砂浜が削られているという状況。」

砂浜が波や風によって削られ消失する海岸浸食は、全国各地の海岸線で発生し、問題となっています。

■庭山記者
「反対側に歩いてきますと、まだこちら側には砂が残っています。ただ、砂との境界線のところには段差ができていて、まさにあそこまで波が来て砂を削り取っていったということがわかります。」

鵜の浜海水浴場は、人魚像を中心に120mほどの範囲に広がっていますが、現在東側には砂が全くなく、西側も日々浸食が進んでいる状況です。4年前の海岸を見てみると、まだ砂浜は確認できますが、2年前になると東側のコンクリートの護岸が見え始めています。これまでに約6割の砂浜が消失しました。

■上越市柿崎区総合事務所 石澤親久次長
「令和3年(2021年)くらいに冬から春にかけて、波浪で砂浜が削られるという状況がありまして、その頃から少しずつ被害があったんだろうと思われます。ただ昨年も海水浴場としてオープンしていますし、ここまで大きく極端に削られていた状況ではなかった。」

徐々に浸食は進んでいましたが、今年1月下旬の高波で急激に砂浜が削られたということです。

■上越市柿崎区総合事務所 石澤親久次長
「沖に離岸堤があるが、間が空いていて間から冬季の北北西の風と波で、削られていくという状況がある。」

海岸の向かいには波消しブロックによる離岸提が並んでいますが、この離岸堤が整備されていないところから波が入り砂浜を削っているとみられています。この現状に危機感を感じているのは地元の観光関係者です。

■鵜の浜温泉観光組合 丸山政仁組合長
「毎年来ているお客さんもいるけど、全然姿かたちが違ってくるから。初めてくるお客さんなんかこの状況みれば、さすがにと思うから。」

海水浴場に近く『夏のリゾート』として高い人気を誇る鵜の浜温泉。去年の夏には、海水浴場に2万4千人を超える観光客が訪れ、今年はさらなる期待もありましたが・・

■鵜の浜温泉観光組合 丸山政仁組合長
「温泉街としてもやっぱり夏がメインだから、(海水浴が)できないとなると温泉街としても死活問題。」

海岸を管理する県は、海岸の浸食を食い止めるため昨年度、隙間となっていた沖合に新たに離岸堤2基を整備する事業計画を策定。今年度から工事に着手する予定ですが、整備には10年はかかるとみられています。

■鵜の浜温泉観光組合 丸山政仁組合長
「温泉の旅館としては、今年来年あたりで一気にこの状況を少しでもよくしてもらわないと。結局風評被害は1年2年で広がっちゃうけど、その信頼を戻すのには5年とかそれ以上時間がかかっちゃうから。」

上越市は「砂が無くなった場所を人工的に復元することは非常に難しい」としていて、海水浴場はこの夏から当面の間、まだ砂が残っている西側にずらして開設するということです。
なぜ、1月に浸食が進んだのか・・・海岸の浸食や津波などを研究する長岡技術科学大学の犬飼直之准教授に聞いてみました。

■長岡技術科学大学 犬飼直之准教授
「この海岸では北側から南側の方に砂の移動があると考えられるが、鵜の浜海水浴場のすぐ上流で海岸浸食が進んでいる。これが鵜の浜海水浴場に少しずつ近づいてきた。」

急激に浸食が進んだ理由は。

■長岡技術科学大学 犬飼直之准教授
「高い波によって海岸は浸食するが、最近では地球温暖化によって高い波が非常に発生しやすくなっている。今年も比較的高い波が発生する状態が多かったのでそれによって海岸浸食が進行したという考え方もある。」

犬飼准教授は、元日の能登半島地震や津波による海岸の変化はなかったとしています。離岸堤を設置する県の対策については「有効」としつつ整備には長い時間がかかると指摘します。

■長岡技術科学大学 犬飼直之准教授
「この海岸は砂の供給がない。海岸で特に対策をしなければ砂がどんどん動いて行ってしまう特性がある。次の離岸堤や保護する構造物ができるまでは、何かしらの対応をして砂浜を保護する必要がある。」

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