【独自解説】北朝鮮、現地の“トンデモ規制”ガイドブックは持ってくるな!受け入れ再開もツアー参加者98人が14人へ激減 ガイドなしの外出禁止! 四つ星ホテルでナッツやチョコ持参推奨 その衝撃の全容とは!

北朝鮮が2月に再開した外国人向けの観光ツアー、第1弾はほぼ満員だったのですが、今は参加者が激減しているといいます。一体なぜなのでしょうか?ツアー参加者が語った“トンデモ規則”だらけの旅とは?朝日新聞 元・ソウル支局長 広島大学客員教授の牧野愛博氏が解説します。

「度が過ぎた規制が原因」 定員100人のツアーに参加14人

北朝鮮は今年2月、外国人観光客の受け入れを再開し、ロシア人向けツアーが行われました。3泊4日で約11万円、定員100人のところ98人が集まりました。その後2度開催されましたが大きく定員割れになっています。特に3月11日からのツアーは定員100人のところ14人しか集まりませんでした。アメリカの政府系放送局「RFA」によると、「度が過ぎた規制が原因」だということです。

Q.この11万円というのは高いのですか?安いのですか?

(朝日新聞 元・ソウル支局長 広島大学客員教授 牧野愛博氏)

「微妙なところですね(笑)」

牧野氏が入手したツアー参加者に配られた注意書きによると、「自宅に置いて行くべき物」として、「北朝鮮のガイドブック」、「韓国・北朝鮮に関する雑誌・新聞など」、「挑発的な内容の写真・映像」となっています。

Q.外でどう言われているかという情報を持ち込まれるのが嫌なのでしょうか?

(牧野氏)

「そういうことです」

ツアーの1日目は、金日成広場など平壌の名所を訪問します。注意書きによると、海外の携帯電話が使えない北朝鮮ではSIMカードが必要だということで、その価格が約1万8000円だといいます。SIMカード購入者同士や国際電話はできるのですが、現地北朝鮮の人との通話はできないということです。牧野氏が取材をしたツアーに参加したロシア人のボスクレセンスキー氏によると、写真撮影について、「軍人や建設現場は撮影NGで、指導者の像を写す際は、手足を切らず全体を写さなければいけない」ということです。指導者の遺体が安置された施設を訪問するときには厳格なドレスコードがあり、TシャツやGパンミニスカートなどカジュアルな服装は禁止だということです。

Q.実際に訪問したときはどうでした?カジュアルな服装もだめなんですか?

(牧野氏)

「遺体が安置されている施設に行きましたが、四隅に行くときは必ずお辞儀しなければいけないと言われました。カジュアルな服装では入れません」

また、「指導者の写真が載っている新聞・雑誌は折り曲げてはいけない」というルールもあるそうです。

Q.侮辱にあたるということですか?

(牧野氏)

「そうです。お札にしても金日成の顔が写っているので、クシャクシャにすると怒られます。みんな気を付けて顔は傷つけないようにたたんでいます」

そして、平壌なのに、街には人や車がほどんどなく、広告も一切なく、掲示されているのは党のスローガンと旗だけだということです。

Q.今でも人や車はほとんどいないのですか?

(牧野氏)

「多少は増えていますが、基本的に信号機も十分ないくらいの環境ですから、元々自動車は少ないです」

Q.企業の看板が街にはないということですが…

(牧野氏)

「看板はあるのですが『食堂』とか『薬屋』としか書いてないので、何のレストランなのか?どんな薬を売っているのか?は分かりません。ごく一部に『○○館』などという名前はありますが、日本のように和洋中が分かるような看板はありません」

四つ星ホテルでの食事にナッツやチョコレートの持参を推奨 そのワケは?

観光が終わると、北朝鮮のいうところの四つ星ホテル「羊角島国際ホテル」に泊まります。注意書きによりますと、食事はビビンバ・冷麺などの朝鮮料理で、チョコ・ナッツなどの持参を推奨しています。

Q.なぜ、チョコやナッツの持参を推奨されるのですか?

(牧野氏)

「北朝鮮には、和洋中などの料理はないんです。ロシアの人はあまり辛いものを食べられないので、(お腹が空いたとき用に)チョコやナッツを持参してくださいということです」

Q.牧野氏が行ったときはどのような食事でしたか?

(牧野氏)

「私のときは、非常に食糧事情が厳しい時だったので、高麗ホテルで『冷麺ください』と言ったら『ない』と言われたので『何ができますか?』と聞くと『ラーメン』と言われたので、それを注文すると、すごくきれいな白いお盆に日本のチキンラーメンがのって出てきました。食べたらすぐわかりました。たまごは無く麺だけでした」

Q.ビールはあると聞きましたが?

(牧野氏)

「ビールおいしいです。東ドイツから醸造施設を輸入していますので、韓国に勝てる数少ない北朝鮮の商品だと言われています」

ホテルでは、インターネットにつながったパソコンからメールを送ることができますが、1通送信するのに約330円かかり、大容量の場合は追加料金が必要だといいます。また、原則ガイドなしの外出は禁止です。北朝鮮市民は、見慣れない人物が街を歩いているのを見かけたら、必ず交番に報告する義務があるそうです。

Q.北朝鮮は中国やロシアとは仲が良いようですが、そういう国の人でも「ちょっと街に行ってきます」というわけにはいかないのですか?

(牧野氏)

「住民に何を吹き込むか分かりませんし、例えば外国人が持っている写真を見て、北朝鮮の人がそれに憧れるようなことがあってはまずいわけですので、外部の人は勝手に歩かせないんです」

牧野氏は、「女性がお風呂に入るときは水着を着用した方がいい」と言います。

Q.ホテルでの話ですよね?

(牧野氏)

「ホテルの客室に行くと、シャワールームが外から見た大きさより中が狭いんです。後で日本政府の人に理由を聞くと、『あそこに人が入ってるんですよ…』と言われました。半分冗談だとは思いますが、監視しているようです。裸だと手術の痕があるとかの情報収集にもなりますし、女性だと撮影して後で脅迫する手段にも使えます」

牧野氏によると「平壌以外の地方都市になると、カフェやレストランのトイレにもトイレットペーパーはほとんどなく、ホテルのお風呂もお湯の使用は朝・晩の決まった時間のみで、そもそも水が出ない場所もある。最悪の場合、電気も通っていない可能性も…」ということです。

Q.我々が思う以上に衛生環境も食糧事情も相当悪いのですか?

(牧野氏)

「マスゲームのように人が大勢集まる場所に行くと、皆さんお風呂に入れないので、独特の匂いがします。写真だけ見るときれいなチョゴリを着て華やかに見えますが、実際はそんなことはないんです」

スキーリゾートは大けがの怖れ お土産は政治色

ツアーの目玉は金正恩総書記肝いりの高級スキーリゾートですが、ツアーに参加したボスクレセンスキー氏によると「コースごとに金属とプラスチックで作ったフェンスが設置されていて、スキー客が誤って飛び込むと大けがをしかねない」と感じたそうです。

そしてツアーに参加した人によると、お土産を買える場所は空港と平壌の2か所のみで、プロパガンダが書かれた絵ハガキなど政治的なものばかりで、ようやく見つけたのが「レゴブロック」そっくりのおもちゃだったのですが、説明書が雑でブロックの質も悪いということです。

Q.買い物も指定の場所だけなんですか?

(牧野氏)

「かつて金日成が、『わが国で外国に売れるのは、朝鮮陶磁器と高麗人参しかない』と言ったぐらい物がないです。ただ、外貨を稼がないといけないので、あと売れるのは切手ぐらいです」

Q.ロシア人を1回100人くらい集めても大して外貨獲得にはならないのでは?

(牧野氏)

「本当は年間20万~30万人くらいになる中国人を呼びたいんです。しかし、今中国との関係がうまく行ってないので、ロシア人ツアーをきっかけに、労働者を送る環境をつくるのが狙いだと思います」

注意書きで、北朝鮮で買える物として・プロパガンダの書かれたポスター約6000円、CD・DVDが約800~1300円、韓国のビール約90~150円、水などとあります。

Q.韓国のビールを売っているんですね?

(牧野氏)

「韓国のビールは、これから売らなくなると思います。今、一生懸命『韓国』という言葉を消しています。最近も北朝鮮の学校で卒業式の送辞や答辞で『統一』とか『韓国』という言葉は全部消したそうです。韓国のビールはもったいないので別の容器に入れ替えるかもしれません」

ガイドにチップやプレゼントを推奨

注意書きによると、ツアー終了後にメインガイド・運転手にはチップを渡すことを推奨しています。金額はガイド約3000円、運転手約1500円ということです。

Q.外国語が喋れるガイドは相当な人数いるのですか?

(牧野氏)

「たくさんいて、ロシア語の人はこれまで稼げなくて損をしていました。北朝鮮では4人家族で1か月1万5000円あれば暮らせますので、ガイドは5人の観光客からチップをもらったら1か月暮らせるので、ロシア語のガイドは稼ぎ時だと頑張っていると思います」

また、注意書きには「観光スポットのガイドにはプレゼントを用意した方が良い。男性はタバコ、女性には香水・化粧品など」とあります。

Q.実物を買って持って行くということですか?

(牧野氏)

「私が行ったときは、タバコと女性用の化粧品や靴下を買ってきて欲しいと言われました」

目玉とされていた、スキーリゾート訪問は3月でいったん終了。今後の訪問先は、政治的な場所ばかりになるということです。

Q.ほかに行くとこがないのでしょうか?

(牧野氏)

「せっかく旅行に行っても自由行動が一切ないので、非常に閉塞感のあるものになっています」

(「情報ライブミヤネ屋」2024年4月4日放送)

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