新学期スタート!GW明けから増える登園・登校しぶりを防ぐには?小児脳科学者がすすめる新習慣

引用元:hanapon1002/gettyimages

いよいよ新学期がスタート! 子どもはもちろん、ママ・パパも「お友だちはできるかな?」「先生はどんな人かな?」などとワクワクする反面、不安なことも多いのではないでしょうか。小児脳科学者 成田奈緒子先生に、新学期に幼稚園・小学校に元気に通うために、子どもたちにとって必要なこと、気をつけてほしいことなどについて聞きました。

子どもの脳の発達に重要なのは、順序とバランス!日常の言葉かけを変えるだけで、大脳新皮質を育て、賢い脳が育つ!?【小児脳科学者】

ゴールデンウィーク明けのころから登園・登校しぶりが増えてくる

朝、起きられない子には、さまざまな問題が。(絵本『のうとからだにいいことえほん』より)

子どもたちの不登校が社会問題となっています。文部科学省が2023年10月に発表した不登校児は、全国の小学1年生で6668人(※1)にのぼります。成田先生が代表を務める子育て支援事業「子育て科学アクシス」には、毎年ゴールデンウィーク明けから、登園・登校しぶりの相談が増えるそうです。

――ママ・パパから新学期によく受ける相談について教えてください。

成田先生(以下敬称略) 相談で多いのは登園・登校しぶりです。とくにゴールデンウィーク明けから、相談が増え始めます。
ママ・パパが朝、起こしてもなかなか起きてこないで、やっと起きてきたと思っても、ソファで横になってダラダラして登校をしぶるような小学生。
幼稚園児も、朝、やっと起こして、ママ・パパが身支度を手伝うと、大泣きしたり、かんしゃくを起こしたりして、登園したがらないというような相談が多いです。
また、しぶしぶとやっと登園・登校したと思っても、イライラして園や小学校でお友だちと頻繁にトラブルを起こしてしまうけれどどうしたらいいのか? といった相談もあります。

――文部科学省の発表(※1)によると、小学生の不登校の主な原因の上位は「無気力・不安」「生活リズムの乱れ・遊び・非行」、そして「親子のかかわり方」でした。

成田 子どもたちの無気力・不安は、生活リズムの乱れが原因のことが多いです。主な原因の上位にあがる「無気力・不安」と「生活リズム乱れ」は関連しているといえます。

また「親子のかかわり方」という原因も、朝、子どもがダラダラしていてママ・パパがイライラしたり、帰宅後にゲームばかりしていて、宿題や明日の準備などが後まわしになって、しかる回数が増えるなどして、親子関係がギスギスしてしまい、不登校につながるということもあります。これらの根本にあるのは生活リズムの乱れです。生活リズムはさまざまなことの基本なんです。そのため新学期から、親子で気持ちを新たにして生活リズムを見直してほしいと思います。

※1「令和4年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」より

朝、ボ~ッとしている子は、朝ぶろを新習慣にしても

朝、早く起きる習慣をつけることで、子どもの心と体は見違えるように元気に! (絵本『のうとからだにいいことえほん』より)

子どもは夜型が定着すると、さまざまな問題が起きやすくなります。子どもが元気に登園・登校するには、まずは早起きの習慣がカギとなります。

――新学期から規則正しい生活リズムにするには、まず何から始めるといいでしょうか。

成田 まずは早起きから始めましょう。私も何十年も習慣にしていますが、朝、起きて朝ぶろに入ると自律神経が元気になって、頭も体もシャキッとします。そのため朝、ボ~ッとしやすい子は、朝ぶろを試してみてください。早いと1週間ぐらいで効果が見られると思います。朝ぶろに入るということは、30分は早く起きなくてはいけません。ただし長ぶろは、かえってボ~ッとしやすくなるのでやめましょう。幼児は、朝、親子でおふろに入ることを新習慣にするのもおすすめです。

――早く起きるには、早く寝る習慣もつけたほうがいいでしょうか。

成田 以前は、子どもは夜8時には寝かせるという家庭が多かったです。早く寝かせるのは、子どもの脳の成長には不可欠です。でも生活スタイルがガラリと変わり、子どもの就寝時間が遅い家庭が増えています。共働きで、夕食は夜8時過ぎからという家庭もあるでしょうし、塾や習いごとから帰って来ると、子どもが寝るのは夜10時過ぎという家庭もあるでしょう。

私のところに相談に来た小学1年生の子も、夜10時過ぎに帰宅するパパの帰りを待っているうちに夜型が定着してしまい、朝、起きられなくなりました。そのうち登校をしぶるようになりました。
先ほどの話と同じように、朝、起きないし、登校をしぶるためママはイライラして、子どもをしかることが多くなり、親子の関係はどんどん悪化していきました。そのため私は「パパの帰りは待たなくていいから、夜早く寝る習慣をつけてください」と伝えました。
そのママは子どもを夜8時には寝かせて、朝6時に起床させるようにしたところ、数カ月で登校できるようになりました。子どもの生活習慣が改善されたことで、ママもしかることが減って表情も明るくなりました。私のところに相談に来たころは無気力だったその子も、今では見違えるようにイキイキしています。

早起き・早寝の習慣は、子どもの脳を育てる土台作りには欠かせません。この土台をしっかり築かないと、友だち関係のトラブルや学習意欲の低下など、さまざまな問題が生じやすくなります。

――早起き・早寝以外にすすめる新習慣はありますか。

成田 今、体力がない子どもが増えています。歩いて登下校するだけでも疲れたり、ちょっと動くだけで頭がクラクラする子どももいます。それは普段から運動をして、汗をかく習慣がないため自律神経が弱っているのです。

そのため年長児からは、意識して体力をつけてください。たとえば習い事や塾などに車や自転車で行っている場合は、歩ける距離ならば親子で歩いて行きましょう。園や小学校から帰ってくると、家でずっと遊んでいる子は、外遊びをさせましょう。汗をかいたり、運動したりすることで、自律神経も鍛えられます。

大切なのは子ども自身が、自分の脳や体の成長のために必要なことを知ること

子どものうちから脳の成長について知ることが大切。(絵本『のうとからだにいいことえほん』より)

成田先生は、これまで子どもの脳と体の成長について記した著書を数々出版しています。2024年1月には、同テーマでは初めての絵本『のうとからだにいいことえほん』を出版しました。

――子どもの脳と体の成長のために必要なことを絵本にしたのはなぜでしょうか。

成田 これまで子どもの脳と体の成長をテーマにした著書を何冊か出してきました。「早起き・早寝」、「3食しっかり食べることの必要性」などは、ママ・パパの間でも、だいぶ知られるようになりました。
その次の段階を考えたとき、やっぱり大切なのは子ども自身に、自分の脳や体の成長のために必要なことを知ってもらうことだと考えました。子ども自身が理解すれば、その子が親になったとき、きっと早起き・早寝や、3食しっかり食べることなどを意識しながら子育てをすると思ったからです。

絵本なので、親子で楽しく読みながら「この子(主人公)は朝早く起きて、本を読んでから小学校に行っているね。〇〇くんもやってみる?」「この子(主人公)は、朝ごはんをしっかり食べてから小学校に行くから、お勉強が楽しいんだって。〇〇ちゃんも、まねしてみる?」などと話して、子どもに新しい生活習慣を提案してほしいと思います。

お話・監修/成田奈緒子先生

絵/しごくん 取材・文/麻生珠恵 たまひよONLINE編集部

【女優・加藤貴子 脳医学者と語る】子どもの脳の発達を伸ばす親子のかかわり。これっていいの?悪いの?

子どもに登園・登校しぶりが見られると、「お友だちと何かあったのかな?」「先生にしかられたのかな?」と、お友だちや先生との関係を心配するママ・パパもいます。しかし成田先生は「幼児や低学年の場合、対人関係で登園や登校を嫌がるのは一過性です。早い子では翌日にはケロッとしています。子どもに登園・登校しぶりが見られたときは、まずは生活習慣に問題がないか見直したほうがいい」と言います。

『のうとからだにいいことえほん』

「朝ごはんは絶対に食べる」「うんちは朝にすませる」など、子どもの脳と体の成長のために必要なことがわかる絵本。成田先生の解説つき。成田奈緒子作/1650円(PHP研究所)

●記事の内容は2024年3月の情報であり、現在と異なる場合があります。

© 株式会社ベネッセコーポレーション