ヴィニシウスとロドリゴ。マドリーがブラジル人コンビから受ける「最大級の利益」【現地発コラム】

ヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴの台頭は、レアル・マドリーにフットボールとビジネスの両分野で最大級の利益をもたらしている。その上、それぞれ現在23歳で選手としてのピークはこれからだ。

ヴィニシウスについては、すでにすべてのリソースを使い果たしていると考える者もいるかもしれない。これ以上のレパートリーを想像するのが難しいほど、多くのことを、しかもインパクトをもってやってのけているからだ。にもかかわらず、ヴィニシウスはさらに我々の想像の斜め上を行き、毎試合、新たなテクニックで驚かせる。

ヴィニシウスのケースが革命だとすれば、ロドリゴのそれは古典的な進化論に沿ったものだ。ヴィニシウスが拡張し続ける武器庫で驚かせるのなら、ロドリゴには、その膨大かつ創造的なパレットを完成させるまでにはまだまだ長い道のりがあると思われる。

特筆に値するのは、2人とも若手有望株というカテゴリーから抜け出し、誰も待ってくれないマドリーの根幹を成す選手にのし上がっていることだ。

マドリーでは毎シーズン、エベレストを征服しなければならない。選手たちは熱狂的なリズムに身を置き、常にタイトルを要求される。マドリーがプラグマティズムで定義される所以である。

実力を伸ばし続けるか、第一線から消えるかの二者択一。絶え間ないパフォーマンス、熾烈を極めるチーム内競争、フットボール界でも類を見ない挑戦に耐えうるだけのパーソナリティといったマドリーを特徴づける企業文化に適応することが求められる。

そしてすでにハッキリしているのは、マドリーのシャツはヴィニシウスとロドリゴにとてもマッチしていることだ。

2人にとって決して楽な道のりではなかったが、鍛錬は完了した。ヴィニシウスは近未来のバロンドール候補だ。ロドリゴは日に日にチームに不可欠な存在になっている。

マドリーがこのブラジル人コンビから受ける恩恵は計り知れないものがある。フットボールという過酷なビジネスにおいて自前で選手として育て、新たなサイクルに進んでいるチームを牽引する運命にある若き才能2人を擁することほど、大きなメリットはない。

しかもフットボール面だけではない。商業面でも2人は旨味いっぱいの広告塔になる可能性を秘めている。

【動画】ヴィニシウスがクラシコで圧巻のハットトリック
トップスターがきらびやかな輝きを放ちながら、常に高みを目指すのがマドリーというクラブだ。そんな中、ヴィニシウスとロドリゴの台頭は、上層部に心理的な余裕をもたらしている。その余裕がなければどうなるか? それは昨シーズンのチェルシー、近年のマンチェスター・ユナイテッドとバルセロナを見れば明らかだ。

もし、ヴィニシウスとロドリゴが未完の大器のまま終わっていたら、マドリーにとって財政的なダメージは極めて大きかったはずだ。

しかしそうはならなかった。スタ―街道を突き進む2人は、世代交代の過度期を迎えるチームに安心という快適なクッションを提供し、騒がしい移籍市場において不要な焦りの感情を取り除き、より緩やかな見通しの実現を保証している。

文●サンティアゴ・セグロラ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

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