訪日客を意識 サミット開催地の広島 平和記念公園に近いエリアに新店続々 弓道体験場や屋台風お好み焼き店

みっちゃん総本店おりづるタワー店でスマートフォンを使い記念撮影するバーレンさん(手前)

 平和記念公園に近い広島市中区大手町1丁目で、外国人観光客を意識した店が登場している。お好み焼きの大型店やカフェが開業し、弓道体験場もにぎわう。先進7カ国首脳会議(G7サミット)で世界から注目を集めた一帯は、広島の食と歴史に触れられるエリアとして訪日客を引き寄せている。

 おりづるタワーで3月に開店したのは、お好み焼きの「みっちゃん総本店」。創業した1950年ごろの屋台の雰囲気を再現した。定番の肉玉そばや焼きガキに加え、カキやコウネを盛り付けた同店限定の広島満喫スペシャル(2970円)を提供する。スイスから観光で訪れたサミュエル・バーレンさん(32)は「スイスで食べるランチ代と同じくらい。高いとは思わないよ」と楽しげだ。

 国内外の観光客を呼び込もうと、おりづるタワーに出店した。タブレット端末で英中韓の3言語での注文に対応する。おりづるタワーでは昨年5月のG7広島サミットで、各国首脳の配偶者と地元の若者が集うシンポジウムが開かれた。

 店を運営するISE広島育ち(佐伯区)の上川学社長は集客に手応えを感じている。「お好み焼きは広島の復興のシンボル。多くの人に食べてほしい」と願いを込める。

 大手町は元安川東側の南北1・8キロのエリア。北側の1丁目には原爆ドームがあり、飲食店や商店が集まる。大正期に刊行された「広島市史」によると、地名は広島城の大手門に由来する。小細工職人や猿楽師が住む城下町としてにぎわった。原爆で壊滅し、島内科医院の玄関横にある「爆心地」の説明板には、多くの見学者が訪れる。

 一帯は訪日客に人気の店が多い。弓道体験道場射楽もその一つ。未経験者でも扱える和弓をそろえる。60分射ち放題(4400円)で平日も多くの人が楽しむ。2022年には、世界的な旅行口コミサイト運営会社のトリップアドバイザーによる日本の体験型観光ランキングで4位になった。

 昨年8月に開店したエモラボカフェは、訪日客が6割を占める。26種類のシェイクが人気で、尾道市瀬戸田町産のレモン入り紅茶など地元素材を使うメニューもそろう。

 丸みを帯びた個性的なマグカップや皿を使う。中川恵利奈店長は「海外の人はかわいい食器への反応がいい。今年に入って海外のお客さんが一気に増えた」と感じる。オーストラリアから訪れたマーティン・バーンズさん(27)は「平和記念公園と宮島に行った。広島の歴史を感じられる場所を巡りたい」とほほ笑む。

 原爆ドーム周辺などで活動する広島市観光ボランティアガイド協会によると、案内客数はコロナ禍による落ち込みから急回復している。23年度は4万9324人で過去最多となり、外国人客は700人余りに増えた。近くでは、ひろしまゲートパークとエディオンピースウイング広島も開業した。柴田武志副会長は「さらに人の行き来が増える」と見据える。

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