災害時トイレ 震災教訓に備蓄拡充 車いす対応など課題も 横須賀市

能登半島地震から3カ月。被災地では依然として断水が続いている地域もあり、不自由な生活を余儀なくされている。なかでも深刻であるのが、災害時のトイレ問題だ。平時からの備蓄やプライバシーの確保、環境衛生などの対策を要し、有事の際はトイレの使用控えによって災害関連死のリスクを高める懸念もあることから最重要課題の1つとなっている。横須賀市は今年度から携帯トイレなどの備蓄を拡充。災害対応力を強化させる。

市危機管理課によると携帯トイレは110万回分、仮設トイレ246台、下水道管路に直接汚物を流せるマンホールトイレは379基を備蓄している(3月時点)。

能登半島地震の発生を受けて、”陸の孤島化”に強い危機感を示す市は、2024年度予算で災害対策関連事業に重点配分。市立小中学校69カ所を指定する震災時避難所の「備蓄物資の拡充」として、携帯トイレの備蓄数を3日90万回分(避難所への想定避難者数6万人×1人1日5回×3日)から、7日270万回分(6万人×1人1日6・5回×7日)に増やすことを決めた。加えて、高齢者や障がい者らが使用しづらい和式トイレを簡易的に洋式化するユニットも、1避難所あたり4個から全和式トイレ分確保するという。

市議会3月定例会の一般質問や予算決算常任委員会環境教育分科会でも、災害時のトイレに関する質問が相次いだ。とくに多かったのが、移動設置型水洗トイレ(トイレトレーラー)の導入可否の検討を求める声だ。明るく清潔でプライバシーが保たれ、けん引車があればどこにでも移動できるのが特徴。購入費用は国の緊急減災・防災事業債が使えるため自治体の負担は3割で、クラウドファンディングやふるさと納税などを充当できることも追い風となって全国で導入する自治体が増えているという。

答弁で上地克明市長は、水の確保や1台1日200人分で汚水タンクがたまってしまい、業者がくみ取るまで使えない点などを説明。携帯トイレであれば常時使用できる有用性を挙げ、「市として備蓄充実を図り、市民にも備えを推奨したい」とした。今後も使用方法の啓発を含めて広く周知をしていく考え。

また、学校トイレ自体のバリアフリー化が完全には整備されておらず、洋式化ユニットも車いす対応を想定したものではないため、改善を要望する市議の声もあった。

井戸水を活用

一方、民間でも万一に備えた体制を構築しているところもある。西逸見町の浄土寺では、境内の一角に井戸水を使った非常用水洗トイレを所有している。

地下水をくみ上げて水洗し、下水管に流す仕組みで停電や断水があっても利用できる。避難所である逸見小に隣接しており、「災害時、役に立てれば」と同寺。地域イベントを通じて周知を進めており、「市内には井戸が多いので、もっと普及してほしい」と話した。

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