日置5人殺害事件、発覚から6年 控訴審日程決まらず「なぜこんなに時間がかかるのか」…遺族悲痛

 2018年に日置市東市来町湯田で男女5人が殺害された事件は、6日で発覚から6年となる。殺人と死体遺棄の罪に問われた岩倉知広被告(44)は、20年12月に鹿児島地裁で死刑判決を受け、即日控訴した。3年以上たっても控訴審日程は未定のままで、遺族は「なぜこんなに時間がかかるのか。ずっとやり場のない思いを抱えている」と話す。

 6日、遺族らは複雑な思いを抱えたまま墓参りする予定だ。5日の南日本新聞の取材に応じ「何年たっても墓前に向かうのはつらいが、手を合わせることしかできない」と打ち明けた。

 地裁審理では、医師による精神鑑定を基に、完全責任能力の有無が争われた。被告の妄想性障害が犯行に与えた影響を巡り、検察側は「程度は軽微で、完全責任能力がある」と死刑を求刑。弁護側は「障害の影響は著しく、責任能力は限定的」と主張した。

 判決は「妄想に指示、支配されるような状況にはなかった。被告人にもともとあった衝動的、攻撃的、自己本位的、他罰的な性格が大きく影響している」として完全責任能力を認め、死刑を言い渡した。

 即日控訴から3年4カ月たつが、福岡高裁宮崎支部は「期日の決まっていない事案について情報は公開していない」。福岡高検は「個別の案件には答えられない」としている。

 遺族の一人は、進展がなくても審理状況を都度教えてほしいと検察側に伝えているが連絡はないという。問い合わせても、事務担当から「検察官でなければ分からない」と返答されるだけで、「まるで人ごとのよう。ほったらかしにされている気分だ」と憤る。

 公判期日を見通せない中、遺族らは犯罪被害者支援センターへ相談を重ねている。「一度も事件のことを忘れることはない。それでも日常生活は送らなければいけない」

■日置5人殺害事件

 2018年4月6日、日置市東市来町湯田の民家で男女3人の遺体が見つかった。同8日には別の男女2人の遺体が近くの山中で発見された。県警は殺人容疑などで無職岩倉知広被告=当時(38)=を逮捕。被告は父や伯母ら5人の殺害を認めた。鹿児島地検は19年1月に殺人罪などで起訴。鹿児島地裁は20年12月、求刑通り死刑を言い渡した。弁護側は即日控訴したが、福岡高裁宮崎支部での審理日程は未定となっている。

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