「お兄ちゃんと通いたい」 珠洲・若山小唯一の新入生

1人だけの新入生として入学式に臨む水口さん(中央)=珠洲市若山小

  ●水口さん、同学年6人は市外に

 たった1人の新入生は「かっこいい1年生になる」と笑った。5日、珠洲市若山小で行われた入学式。同級生になる予定だった6人は断水が続く市内から避難、転居し、名前を呼ばれたのは水口結彩(みずぐちゆい)さんだけ。それでも「お兄ちゃんと一緒に通いたい」と地元の学校を望んだ結彩さんの第一歩を、親族や在校生、教職員が温かく見守った。

 珠洲市若山町宗末の水口さん方は、地震による被害がほぼなく、北國新聞若山販売所長の祖母よし子さん(61)、父幸広さん(39)は、周辺の避難所や住宅に朝刊を届け続け、家族一緒に春を迎えた。

 ただ、地区内の家屋などの被害は大きく、幸広さんによると、結彩さんと同級生として若山小に入学するはずだった6人はみな市外に移った。

 幸広さんも、同級生がいなくなった娘のために転居すべきか悩んだ時期があったという。迷いを断ち切ったのは、結彩さんの「お兄ちゃんと同じ学校に通いたい」という言葉だった。3年になった兄の泰志君がいる若山小へ入学を決めた。

 入学式では、時兼薫校長が「チャレンジしてできることを増やして」と呼び掛けた。緊張した面持ちで式に臨んだ結彩さんだったが、式後には「勉強頑張る」と笑顔を見せた。

  ●新入学4割減

 珠洲市では被災による転居などで小中学校の新入生は地震前と比べて約4割減って71人となった。

 4人が入学した珠洲市上戸小は地震直後に避難所だった体育館で式が行われた。新入生の加藤優宗(まさむね)君は、母友希さん(36)の三重県の実家に避難していたが、3月下旬に上戸町北方の自宅に戻って学校生活をスタート。「精いっぱい頑張る」と意気込んだ。市内各校は、避難所設備の一部を片付けた体育館や音楽室、公共施設を式に使い、晴れの日を彩った。

  ●4市町、錦丘中で式

 5日は4市町の小中学校・義務教育学校と錦丘中の32校で入学式があった。

 能登町では小学校5校に49人、中学校4校に78人が入学。校舎が損壊した松波小は松波中体育館を会場に使い、避難生活を送る被災者も祝った。

 県教委によると、今年度の新入学者数は公立小学校が8517人(前年度比58人減)、公立中学校が9364人(320人増)の見込み。金沢など15市町の公立小中と公立高の全日制40校などの入学式は8日に予定されている。

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