「リベンジしたい気持ちはわかるが…」久保建英のパリ五輪出場に現地メディアは否定的な見解「ソシエダにはおいそれと出場を許可できない事情がある」

パリ・オリンピックの出場権をかけて争われるU23アジアカップが、4月15日にカタールで幕を開ける(日本の初戦は16日)。日本では4日、出場メンバー23人が発表されたが、この最終予選を勝ち抜いてパリ五輪出場を決めた場合、本大会の招集メンバーを巡って最大の焦点となるのは、やはり久保建英の扱いだろう。

大岩剛監督は以前、「本人は(五輪に)出たいと言っている」と述べていた。おそらく久保自身、東京五輪の悔しさ(3位決定戦でメキシコに敗退)を忘れてはいないのだろう。だが同監督は、「それにはクラブの理解が必要」とも付け加えている。

そこでレアル・ソシエダの姿勢が重要なポイントとなってくるわけだが、「クラブは理解を示すだろう」と説くのは、スペイン紙『アス』の記者として東京五輪を現地取材し、現在はエージェント会社の『ワカイ・グループ』に勤務するセルヒオ・サントス氏だ。

「タケが強く五輪出場を望めば、おそらくクラブは許可するだろう。1月のアジアカップに続く出場となるが、EUROと五輪に立て続けに臨まなければならないヨーロッパ諸国の選手とは異なり、開催時期が離れている。東京五輪後のペドリ(バルセロナ)のような、疲弊した状態にはならないはずだ。タケはそれだけのステイタスを勝ち取ったわけだし、2008年当時、ジョゼップ・グアルディオラ監督に北京五輪への出場を許可されたリオネル・メッシと同じケースと言えるだろう(CL予選を控えるバルセロナに残るか北京五輪に出場するか板挟みになっていたが、本人の希望が叶えられた形となった)。ただしこの夏、タケが他のクラブに移籍した場合は状況が異なってくる。特に移籍先として噂されているプレミア勢は、五輪代表への選手の貸し出しに昔から否定的だ」

ソシエダ残留なら久保はパリ五輪に出場できるだろうとサントス氏は予想するが、ソシエダの本拠地サン・セバスティアンの一般紙『ノティシアス・デ・ギプスコア』の看板記者、ミケル・レカルデ氏は、まったく異なる見解を示す。
「看過できないのは、ソシエダが多くのスペイン代表選手を抱えていることだ。EUROにはロビン・ル・ノルマン、マルティン・スビメンディ、ミケル・メリーノ、ミケル・オジャルサバル、アレックス・レミロの5人、五輪にはアンデル・バレネチェア、ホン・パチェコ、ベニャ・トゥリエンテスの3人が招集される可能性がある。そんな中、もし現在の順位(6位)を維持してシーズンをフィニッシュしたとすれば、チームは8月にヨーロッパカンファレンスリーグ(ECL)の予選プレーオフを戦わなければならない。タケまで五輪に駆り出されるとなると、イマノル(アルグアシル監督)は大きなハンデを抱えて、重要な試合に臨むことを余儀なくされる」

「そもそも今年初め、タケがアジアカップに出場したときも、ソシエダは痛手を受けている。五輪にも出場するとなれば、さすがにいい顔はしないだろう。それに彼はもうれっきとしたA代表の選手だ。五輪はサッカー界においてワンランクグレードが落ちる。もちろん(東京五輪の)リベンジを果たしたい気持ちは理解できるが、前述したようにソシエダにはおいそれと出場を許可できない事情がある」

またレカルデ記者は、久保の聡明さも、出場辞退という結論に達する根拠になると指摘する。

「タケは立場をわきまえた振る舞いができる選手だ。いくら出場したくても、最終的にチームの状況を考えて辞退に傾くだろう。ましてや今夏、ソシエダは主力が流出する可能性が高い。スビメンディを昨夏に続いて引き留めるのは難しいだろうし、ル・ノルマンも代理人が売り込みをかけている」

金メダル獲得を目標に掲げる大岩監督のチームにとって、久保は間違いなく大きな戦力となるはずだが、はたして招集は叶うのか。まずは、カタールで始まるパリ行きの切符を賭けた戦いに注目したい。

文●下村正幸

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