生活保護費の不適切支給「経緯、責任究明を」 専門家グループが要望書 群馬・桐生市

要望書について説明する井上団長(左)ら

 群馬県桐生市の生活保護費が一部不支給だった問題で、貧困問題に取り組む全国の専門家でつくる「桐生市生活保護違法事件全国調査団」が5日、市と県に原因究明に向けた要望書を提出した。同市の生活保護受給者数が過去10年で半減した要因や申請に対する却下率の高さ、分割支給や月々の保護費を全額渡さない運用が行われた経緯など幅広く検証するよう求めた。

 要望書では、受給者数の半減は、申請を抑制する「水際作戦」の存在が疑われると指摘し、母子の受給世帯が2022年度に2世帯まで急減した要因などの調査を求めた。年度によっては5割近い申請の却下率に加え、保護廃止の理由に辞退が多い状況について検証の必要性があるとした。

 市役所では、団長の井上英夫・金沢大名誉教授と吉永純花園大教授が福祉課に要望書を提出。吉永教授は「分割支給に至った組織的な経緯と判断について聞き取るとともに、保護費を全額渡さなかったことを違法と明確に認定し、違法運用を構築した者の責任を明らかにしてほしい」と訴えた。

 小山貴之福祉課長は「市長に伝え、要望書にしっかりと対応したい」と応じた。県庁では作家の雨宮処凛さんらが要望書を県の担当者に手渡した。

 この日は同市の美喜仁桐生文化会館で、問題に関する市民集会も開かれ、分割支給で苦しめられた受給者の証言が紹介されたほか、保護申請を抑制して社会問題となった北九州市などと桐生市の事例を専門家が比較した。

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