上場目指す「ポケトーク」の死角…親会社ソースネクストは2期連続赤字(小林佳樹)

タクシーに搭載されたAI翻訳機「ポケトーク」/(提供)ポケトーク

【経済ニュースの核心】

AI(人工知能)搭載の携帯翻訳端末事業を手掛ける「ポケトーク」が上場準備に入った。みずほ証券を主幹事に選び、2025年中に上場申請して新規株式公開(IPO)を目指す。海外や法人事業を強化するのが狙いだ。

「東証プライム市場への上場が想定されています。上場時の時価総額は約1000億円になるとみられており、投資家の評価が高ければ米ナスダック市場への上場も見込まれています」(大手証券幹部)という。

ポケトークは来日外国人にはお馴染みだ。都内のタクシーでは乗務員がポケトークを使って乗車客と会話する光景もよく見られる。

ポケトークの親会社はパソコン向けソフトウエア販売のソースネクストだ。同社は大阪府立大工学部卒で日本アイ・ビー・エム出身の松田憲幸氏が1996年8月に設立した会社で、松田氏は会長兼CEOを務めているほか、22年2月から会社分割で子会社化した「ポケトーク」の社長兼CEOを兼任している。

■米国での業績がアップ

ポケトークは日本のほか欧米、東南アジアなど世界で販売しており、23年6月時点で翻訳機市場におけるベンダー別販売台数は94.2%と圧倒的なシェアを占めている。22年12月には累計販売台数は100万台を突破した。特に米国では移民が増えて公的機関などで多言語対応の需要が急増し、業績が伸びているという。

また、23年3月には、法人向けのビジネスシリーズ「ポケトーク for BUSINESS」(同時通訳)の提供を開始。同年7月にはソフトバンクと「ポケトーク」に係る包括的業務提携契約を締結した。また、先月27日には富士ソフトと資本業務提携を発表し、株価は急騰した。

だが、ソースネクストは、「設備投資等で72億4900万円の有利子負債(23年3月末)を抱えている。また、連結業績は直近2期連続で損失計上が続いており、繰越損失の状態にある」(大手信用情報機関)という。広告宣伝費などの販売管理費が収益を圧迫している。

ソースネクストはポケトークの約85%の株式を保有している。上場で一部株式を売却するものの、連結は維持する方針だ。親孝行な子会社上場となりそうだ。

(小林佳樹/金融ジャーナリスト)

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