電気自動車が“大ブレーキ”で…ハイブリッド車、軽トラ「世界で日本車が大人気」 その裏側に迫る

人気復活のハイブリッド車 (photoAC)

「2023年にカリフォルニア州で最も売れた車がトヨタのハイブリッド車(HV)でした。カリフォルニアは環境基準が厳しい州だけに、そこでトヨタ車が復権したことが現状を象徴しています」

経済評論家の杉村富生氏がこう語るように、地球に優しいエコカーとして注目されてきた電気自動車(EV)のブームに、今、急速に“ブレーキ”がかかりつつある。

「世界で最も多くのEVを販売するBYD(比亜迪)グループを擁する“EV先進国”の中国ですが、景気の減速や不動産バブル崩壊の影響もあり、EV車が供給過多。つまり、売れずに余っている状態なんです」(経済誌記者)

EV車離れが進むのは、中国だけではない。

「2月、アメリカでは、アップルがEVの開発中止を発表。約10年にわたり、数十億ドルを投じて開発に取り組んできたとされる“アップルカー”は、幻となりました」(前同)

長らく市場を牽引してきた、業界大手であるテスラの株価も振るわない。

「23年夏に付けた直近のピークから5割弱も下落したほど、絶不調です」(同)

価格の高さや外出先での充電の不安から、HVに回帰する消費者が増えているのだ。

「イギリスの調査会社JATOの調べによると、米市場では23年4~6月期以降、3四半期連続でHVの販売台数がEVを上回っていることが判明しました」(同)

世界に冠たる日本企業も“アクセル全開”だ。

■日本車人気はなぜ

「トヨタ自動車は、今期の純利益計画が過去最高の4.5兆円。24年の世界生産台数も約1040万台を計画しており、実現すれば、2年連続で年間生産台数の最高記録を更新します」(前出の経済誌記者)

新車輸出台数に関しては、23年に中国が日本を抜いて世界首位に立ったが、

「日本は依然として高い技術力を誇っている。新車輸出台数で、日本が再びトップに返り咲くのは間違いないでしょう」(前出の杉村氏)

人気はトヨタの新車だけではない。日本の中古車市場にも変化が起こっている。

「10年前は、中古車販売のオークションで外国人バイヤーの姿は多くても1割ほどでしたが、今は、ほぼ半数を占めています」

こう言うのは、埼玉県内で中古車販売業を営む「ワンオーワン」の逆井則彦代表だ。続けて、

「円安だけでなく、外国人の場合、消費税分が還付されるといった影響もあるんでしょうが、根本には日本車の品質の高さが関係していると思います」

品質と言えば、日本独自の整備点検システムも影響しているようだ。

「売り手は車検や点検済みのステッカーを貼ったまま、出荷します。海外の買い手は、この“保障”を剥がさず、日本から輸入した車両であることをアピールするんです」(中古車バイヤー)

燃費が良くて頑丈な日本の中古車は、海外で絶大な信頼を得ている。

「特に軽トラの人気がすごいですね。先日のオークションでは、10年前に製造され、走行距離が13万キロに達した車が、約18万円で売れました」(前出の逆井氏)

■海外で高まる軽トラ人気

北米地域やオーストラリアにおいても、「小回りがきく」と軽トラックの人気が高まっているようで、

「日本では数十万円程度で取引されているような1990年代の旧モデルでも、現地では100万円以上の値が付くことも珍しくありません」(前出の中古車バイヤー)

新車なら200万円で買える車が、オークションで250万円になる例も。

「たとえばスズキの軽自動車『ジムニー』。新車の納車まで1年も待てないというニーズがあるからですが、そうやって少しくらい高くてもいいからと買っていくのは、ほとんどが外国のお客さんなんです」(前出の逆井氏)

まさに世界中から求められて止まない“自動車王国”の面目躍如だが、その影響は、正規の市場だけにとどまらない。

「闇のマーケットにおいても“メイド・イン・ジャパン”は大人気。特にトヨタの車はあらゆる車種が狙われています」(前出の中古車バイヤー)

盗難車台数ランキングでも一目瞭然だが、上位には、ズラリとトヨタ車が並ぶという。

「その一方で興味深いのは、6位にスズキのキャリィ、7位にはダイハツのハイゼットがランクインしていることです」(前同)

この“界隈”でも、軽トラが人気なのだ。

「たとえば、東南アジアでは、荷台を改良して乗り合いバスにしたり、商品を陳列して物販に使うニーズがあります。農道や漁港などにキーを付けたまま置かれることも多く、日本で悪事を働く窃盗団にとっては、仕事をしやすい環境になってしまっていますね」(同)

あらゆる場面で今、日本車は注目を集めている――。

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