昭和のお茶の間を沸かせた…令和に見たい教訓あふれる懐かしのホームドラマ3選

『俺はあばれはっちゃく』DVD-BOX1(デジタルサイト)

昭和のホームドラマは面白かった。一家団らんをし、決まった時間に夕食を取ることが多かった昭和時代、お茶の間の番組はホームドラマが主体だったような気がする。

筆者の家庭は自営業だったので、家族みんなで夕食というのはほとんどなかったのだが……それでも子どもながらにドラマを見て胸が熱くなったものである。

そこで、令和に見たい教訓あふれる昭和のホームドラマを3つ紹介していこう。

■傍若無人の最強おばあさん! のちの都知事が主演を果たした『意地悪ばあさん』

まずは、1981年から放送された『意地悪ばあさん』だ。主演はのちに東京都知事となる青島幸男さんで、1967年に製作された同ドラマも青島さんが主演を果たしている。

原作『いじわるばあさん』を手掛けたのは、『サザエさん』の長谷川町子さん。タイトルからして「おばあさん=穏やかで優しい」という概念を根底から覆した作品だ。意地悪ばあさんに何かと振り回されてしまう同居人の河原崎長一郎さん、坪内ミキ子さん、三波豊和さんらも良い味を出していた。

筆者は幼稚園児くらいのときに、『意地悪ばあさん』を兄と一緒に見ていた。子ども心にも面白おかしく、思いついたイタズラを次々と実行していくおばあさんがとにかく最高だった。おばあさんの被害者たちには申し訳ないが、とにかく明るく笑えるのが痛快だった。

当時はバブル前で働き盛りの人たちも多く、主婦も手作業の家事が多かった。忙しい毎日のなか、たまには何も考えずに大笑いできるこのような番組は、束の間の楽しみとなっていたのかもしれない。

今の時代には放送できない内容もあるだろうが、令和の子どもたちが見てもお腹を抱えて大笑いすると思う。古谷徹さんがメインボーカルのスラップスティックが奏でる主題歌「意地悪ばあさんのテーマ」も、やんわりとした雰囲気で和ませてくれた。

■わんぱく小僧が逆立ちでひらめく!『あばれはっちゃく』

わんぱく小僧が学校や家庭で活躍するのが、1979年からスタートしたドラマ『あばれはっちゃく』シリーズだ。もともとは児童文学者である山中恒さんによる、同名の児童向けの小説が原作だ。シリーズ全部で5作品があり、スペシャルドラマなども放送され人気を博した。

筆者が見ていたのは同年スタートの『俺はあばれはっちゃく』(初代)と、1980年からスタートした『男!あばれはっちゃく』(2代目)だ。

主役の桜間長太郎は、初代が吉田友紀さん、2代目を栗又厚さんが演じている。小学5年生の長太郎は、目の前に起こることを自分なりに解決しようと頑張るガキ大将だ。まあ、ガキ大将というよりは、正義感が強いわんぱく小僧というべきか。

シリーズを通して父親役を東野英心さん、母親役を久里千春さんが演じており、父親・東野さんの「馬鹿野郎!」の張り手から、「情けなくて涙が出らぁ…」というやり取りがパターン化されている。さらに、母親・久里さんは怒ると「情けなくて涙も出てこない」なんて言う始末。まさに昭和の家庭そのものだった。

長太郎は勉強しない代わりに“ひらめき”を得意としており、何か問題が起こると倒立で思考する。頭に血がのぼってしまいそうだが、彼にとってはこれがもっとも頭の回転を速める姿勢らしく、見ていた筆者たちも真似をしたものだ(もちろんひらめかない)。

このドラマは子どもがしっかりと自分の主張を述べ、間違っていることを自分たちなりに正そうとし、そして、親はきちんと子どもを叱っていた。これって実はなかなか難しいことではないかなと、今になって思う。

そういえば、堀江美都子さんが歌う主題歌の「タンゴむりすんな!」もおおいに流行り、友達とオリジナルの替え歌を作った記憶がある。今、思い出してもいい歌で、“その気もないのに無理をするな”という歌詞のメッセージは大人になってからも自分に使ってやりたくなるものである。

■血のつながりのない親子の絆…『親子ゲーム』

1986年に放送されたのが、長渕剛さん主演の『親子ゲーム』だ。主人公の元暴走族・矢板保役を長渕さん、恋人役の三石加代を志穂美悦子さんが演じており、2人は同棲しながら下町のラーメン屋を営んでいる。

保は綺麗な女性を見るとすぐにナンパしてしまうようなどうしようもない浮気性だ。基本は加代一筋に見えるのだが……(いや、見えないか)自分は好き放題浮気するが、パートナーにされると怒る。あれ、最低じゃん……。

保のラーメン屋に訪れた人見知りの小学4年生・吉田麻理男(柴田一幸さん)は、タバコを買いに行くと言って出て行った父にそのまま捨てられてしまう。そして、植木等さん演じる警察官の頼みで、少年は保と加代が引き取ることとなった。

麻理男は前年発売された『スーパーマリオブラザーズ』にちなんでいるのか、強いマリオと弱虫な麻理男というネーミングがシンクロしている。作中では、長渕さんがファミコンをしている貴重なシーンもあった。(しかもヘタクソ……)。

ほとんど喋らない麻理男の心は表情で汲み取るしかないのだが、子役の柴田さんの演技が素晴らしく、複雑な心境の少年を見事に表現していた。

本作は、血のつながりのない親子の絆が深まっていく感動作でもある。同棲している2人は、人前でも容赦なく本音で喧嘩をする。店がボロボロになるくらい激しく争うのでまだ子どもの麻理男には悪影響なものの、しかし麻理男は本音でぶつかり合うそんな2人を羨ましく思っていた。

あるとき、破局寸前まで喧嘩してしまう2人だが、麻理男が毎日付けているノート(日記)には自分を捨てた両親との無言の空間が嫌でしょうがなく、本音で語る2人に自分も加わりたいと記してあった。その文面を読んで思い直した保と加代……仲直りをして3人で銭湯に行くシーンは感動的だったものだ。

最終的に父親が引き取りに来るシーンも感涙もので、人の優しさや弱さ、強さ、絆というのがとても垣間見られる作品だった。主題歌はもちろん長渕さん。「SUPER STAR」はバイクに乗って口ずさみたくなる名曲だ。

昭和のホームドラマには令和の今では考えられないような演出なども多々あったが、それでもどこか温かく、お茶の間を和やかな雰囲気にさせていた。

ここで紹介できなかったグッとくる名作ホームドラマはほかにもある。機会があればまた紹介していきたい。

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