OSK日本歌劇団 トップコンビ楊&舞美 最後の「春のおどり」 - 和洋レビューで『らしさ』全開

第1部幕開き、元禄若衆姿で舞う楊琳(前列左)。前列右は舞美りら=4月5日、大阪市中央区の大阪松竹座

 大阪松竹座で4月6~14日に上演されるОSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」の公開舞台稽古が4月5日夕、同劇場で行なわれた。2024年8月の同時退団を発表しているトップスター楊琳(やん・りん)と娘役トップスター舞美りら(まいみ・りら)にとって最後となる「春のおどり」は和洋のレビュー二本立て。上方舞山村流六世宗家・山村友五郎、宝塚歌劇団出身の荻田浩一。OSKの魅力を熟知した2人の演出家がつくりあげたOSKらしさ全開のステージで、楊&舞美はじめ初舞台生を含む劇団員が躍動する。

 第1部は山村が構成・演出・振り付けを手がけた和物レビュー「春楊桜錦絵(ヤナギニハナハルノニシキエ)」。幕開きの元禄若衆の舞いは、開演早々の客席降りで劇場全体を一気に盛り上げる。続いて展開する落語を題材にしたコミカルな演目では、朝ドラ「ブギウギ」の橘アオイ役で注目を集めた翼和希も活躍。

 男役による圧巻の殺陣(たて)、娘役が二枚の扇を華麗にさばきつつ優雅に舞う場面など、和物レビューならではの演目が展開する中でも、特にOSKらしいのが民謡メドレー。伸びやかな歌声とはつらつとした踊りで耳に馴染みのある民謡の数々が披露される。

 民謡メドレーでは楊と舞美が「深川マンボ」を踊る。アップテンポの曲に乗り、男役と娘役のカップルが粋な振り付けで踊る「深川マンボ」は歌劇の世界で踊り継がれている演目。舞台稽古終了後の囲み取材で舞美は「実は私、ひそかに『深川マンボ』がやりたい! と思っていたんです。その思いが(山村)友五郎先生にテレパシーで伝わったのかと驚きました。最後に楊さんとさせていただけて、本当にしあわせです」と話した。

 近年OSKでは踊られていなかった「深川マンボ」。楊と舞美はOSKOGの吉津たかし(奈良県宇陀市出身)が現役時代に主演した日舞リサイタル「歓喜」(2005年)で吉津と娘役の森野木乃香が踊る映像を見て研究したという。

 第2部は荻田の構成・演出による洋舞レビュー「BAILA BAILA BAILA (バイラ・バイラ・バイラ)」。タイトルはスペイン語で「踊れ、踊れ、踊れ」の意味。あやめ池時代からOSKの舞台を熱心に観てきたという荻田は、OSKらしさあふれる情熱的なラテンの幕開きを用意したが、その直前にさりげなく、OSK愛にあふれた「音の遊び」をしのばせているのも一興だ。

 楊と舞美のデュエットダンス、エネルギッシュなラインダンス、黒燕尾の男役の群舞など「踊りのOSK」を余すところなく見せる第2部。トップスター楊のルーツである中国の宮廷を舞台にした場面には特別専科の桐生麻耶が重厚な役どころで登場し、作品を引き締める。

 そして、今回の注目はNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ブギウギ」の舞台シーンの演出を担当した荻田が、ドラマのためにつくった演目をさらに充実させた拡大アレンジ版の上演。その後にOSK出身で「ブギウギ」ヒロインのモデルとなった歌手・笠置シヅ子の楽曲に新鮮なアレンジを加えたレビューシーンが続く。

 囲み取材で楊は「ドラマがきっかけで、大先輩である笠置さんの、歌に対するものすごい情熱、熱い思いを見習わなければ、と再確認しました。また、今回、私たちは『東京ブギウギ』はじめ、いろいろな楽曲を歌い、踊らせていただいていますが、(服部良一という)ひとりの方がつくり、(笠置シヅ子という)ひとりの方が歌われているのに、まったく違った表現がこんなにもあるんだ、と新鮮な驚きを覚えました」と話した。

 今年、創立102年目を迎えたOSKは、その長い歴史の中で解散の危機など、さまざまな困難を乗り越えてきた。囲み取材の最後に後輩に伝えたい思いを聞かれた舞美は「OSKの強みはダンス。洋舞はもちろん、雅びで華やかな和物レビューも両方できてOSKの劇団員だと思います。和物も洋物も、ひとりひとり大切に受け継いでいって欲しい」、楊は「お客さまやスタッフの方々など、すべての人への感謝の心を忘れず、日々、生活して欲しい。これは、いつも言っていることなのですが、どんな時も変わらず、心に置いていて欲しいと思います」とそれぞれ話した。

※同作品は8月7~11日、東京・新橋演舞場で「レビュー夏のおどり」として上演。また、7月13~21日、京都・南座で第2部を中心に新たな趣向を加えた公演「レビュー in Kyoto」がある。

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