ブロッコリー「指定野菜」に 福島県内...産地形成、農家に追い風

ブロッコリーが「指定野菜」に加わることで「知名度も上がり、価格が下がったときでも安心して作れる」と話す武田さん

 国が主導して出荷安定を図る「指定野菜」に、2026年度からブロッコリーが新たに加わる。福島県内では、市町村別の産出額が東北で最も多い南相馬市や県南地域で産地が形成されており、東京電力福島第1原発事故に伴う避難指示が解除された双葉郡でも、需要の伸びを捉えた営農再開の動きがみられる。52年ぶりとなる指定野菜の追加を見据え、県内生産者らの期待が高まっている。
 
 補助手厚く「安心して生産」

 「知名度も上がり、価格が下がった時でも安心して作れる」。同市鹿島区でブロッコリーやサツマイモなどを生産する武田ファームの武田幸彦さん(36)は話す。同ファームでは4ヘクタールでブロッコリー15万株を生産する。10年ほど前までは2万株程度だったが、栄養価の高さと用途の多様さなどで需要が年々増え、市内の温暖な気候にも合うことから約7倍に増やした。

 指定野菜になると、国が定める需給ガイドラインに沿ってJAなどの出荷団体が供給計画を作る。生産者にとっては、価格が大幅に下がった際に国が出す補助金が手厚くなるなどの利点もある。武田さんは「指定野菜になることでブロッコリーがさらに普及するといい。ゆでて食べる以外にも、鍋に入れたり、天ぷらにしたり食べ方もたくさんある。ぜひ指定産地になれれば」と願う。

 本県のブロッコリー出荷量の推移は、東日本大震災前の10年産は相双や県南を中心に4590トンだったが、津波被害や原発事故によって11年産は3660トンに減り、直近の22年は3470トンと震災前の75%程度にとどまる。全国に目を向ければ22年産の出荷量が都道府県別トップの北海道は2万6200トンを誇るなど、需要の増加とともに産地間競争の激化も見込まれる。

 双葉郡、営農再開へ重点品目

 ただ、市町村別産出額(22年)が東北最多、全国27位の南相馬市を含む相双では近年、作付面積が増加傾向にあり、双葉郡でも営農再開に向けた重点品目の一つとして生産が進む。JAアグリサポートふたば(富岡町)は27年度までに、浪江町と双葉町の計11ヘクタールで栽培を計画し、水稲や長ネギと組み合わせた農業経営のモデル化を目指している。

 健康志向の高まりや冷凍用カット野菜の人気を背景に売れ行きが好調なブロッコリー。JAグループ福島の担当者は「県内でも生産拡大に力を入れる中で期待は大きい。営農再開の後押しにもつながれば」と期待を寄せる。

■指定野菜
 現在はキャベツ、キュウリ、サトイモ、ダイコン、トマト、ナス、ニンジン、ネギ、ハクサイ、ピーマン、レタス、タマネギ、ジャガイモ、ホウレンソウの14品目あり、農林水産省が1月、ブロッコリーの追加を発表。1974年のジャガイモ以来52年ぶりの追加となる。国が指定野菜ごとに、作付面積など指定産地を受ける要件を設け、JAなどが県を通じて国に指定を申請。指定されると、価格が下落した際に国の価格差補給交付金が生産者に支給される。

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