利尿薬が使われる高血圧・心不全・肝硬変には共通点がある【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

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【高齢者の正しいクスリとの付き合い方】

利尿薬が必要となるのは、「水がたまると困る」病態であるときです。

「血圧」が高い原因のひとつに、血液のボリュームが多いことが挙げられます。たとえば、塩分の取り過ぎで血液中のナトリウムが増えると血液は水をたくさんため込んでしまうようになり、結果として血液のボリュームが増えて血圧が上昇するのです。こういった場合に、利尿薬はナトリウムと水を一緒に尿として外に出してくれるため、血圧を下げる効果があります。

「心不全」でも利尿薬が使われるケースがあります。心不全とは心臓の動きが悪くなってしまうことを意味し、心臓の動きが悪くなると血液の流れも悪くなります。これをうっ血と呼び、うっ血によって行き場を失った水が血管内から手や足に移動してくると浮腫が生じますし、肺に移動して水がたまって胸水が生じ呼吸苦につながるケースもあります。

こうした心不全の代表的な症状に対して利尿薬が用いられ、水を尿として体の外に出すことで浮腫や胸水の軽減はもちろん、血液の中の水も減らせることで、心臓の負担も軽くすることができるのです。

「肝硬変」も挙げられます。肝臓ではタンパク質が作られていて、肝硬変になると作られるタンパク質の量が減ります。タンパク質は血液の濃度を構成している成分のひとつなので、肝硬変の人は血液が維持できる水の量が少なくなってしまいます。肝硬変も心不全と同様に水が血管内から手や足に移動してくると浮腫が生じます。また、肝硬変に特徴的な症状のひとつに腹水がありますが、これもやはり水がお腹の中(腹腔)にたまることで起こる症状です。

さて、みなさんお気づきでしょうか? 高血圧も心不全も肝硬変も、いずれも「塩分制限」が必要な病態だということに。医療における塩分制限は、正確にはナトリウム制限です。つまり、塩に含まれるナトリウムは、体の中の水分に関して非常に重要な役割を持っているということになります。そう考えると、ナトリウムの再吸収を抑制して水を尿として体の外に出す「ナトリウム利尿」で尿の量を増やす利尿薬の効き方にも納得してもらえるのではないでしょうか。

一方、「水利尿」で尿の量を増やすトルバプタンも、心不全や肝硬変に用いられます(高血圧には使えません)が、原則、他のナトリウム利尿の利尿薬で十分に治療されている人にしか使うことができません。トルバプタン単独では使えないのです。つまり、トルバプタンは他の利尿薬で出し切れなかった水分を尿として出すクスリなので、それだけ厳密に水の管理が必要な人に用いられます。

次回は、利尿薬を使っているときに注意すべき点について紹介します。

(東敬一朗/石川県・金沢市「浅ノ川総合病院」薬剤部主任。薬剤師)

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