【パリ五輪を目指す注目女子アスリートの履歴書】
杉原愛子(24歳/株式会社TRyAS)=体操
15歳で日本代表入りしてから体操界を牽引してきた。
リオ五輪、東京五輪と2大会連続出場を経て、2022年6月の全日本選手権をもって競技生活に「一区切り」。体操競技の普及を掲げて株式会社TRyASを起業し、指導者としても活動していたが、1年のブランクを挟んだ23年6月の全日本選手権で電撃復帰した。
いったい何があったのか。
「体操を『外から見た』経験が大きかったんです。エキシビションやイベントの出演、審判、指導などの経験はもちろん、23年NHK杯のリポーターをしたときに選手たちを見て、純粋に楽しそうだな、私もまた……と。軽い気持ちで母に伝えたら、『出てほしい!』。背中を押してもらい、同年6月の全日本選手権にエントリーしました。母の言葉が無ければやっていなかったと思います(笑)」
ビデオ審査をクリアして出場した同大会「ゆか」では、ブランクをものともせず優勝。「一区切り」の前よりも強くなった姿を見せることができたと胸を張る。指導経験の中で基本の重要性を再確認し、審判員として「見る側」の立場も体験したことを自身の血肉に変えていたのだ。
現在はパリ五輪を目指すと宣言しているが、当初はそんなつもりは毛頭なかったという。
「現役復帰したものの、五輪を目指す大変さを知っているからこそ、選択肢にすら入っていませんでした。しかし、基本の質が磨かれているのを実感したんです。『前の杉原愛子よりレベルアップしているぞ』と。新しい武器を手に入れた感覚でした。昨年9月の全日本シニアを経て、それが世界の舞台でも戦えるという確信に変わり、11月にパリ五輪を目指す決意が固まりました。この選択に私自身が1番ビックリしているかもしれません」
子供への指導は年内で区切りをつけ、パリを見据えて日夜練習に励んでいる。
練習は週5日で午前2時間、午後4時間の計6時間ほどという。
「今は量よりも質を意識して取り組んでいます。昔ですか? 私はセンスや生まれ持った才能がある方じゃないから、量と努力で補ってきたタイプ。そこで培ったものが今に生きているんです」
周囲からすれば天賦の才に恵まれているように見えるが、どうしてこのような言葉が飛び出したのか。本人が語った幼少期の話から、意外な姿が見えてきた。(つづく)
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