先輩と2人部屋、早起きに洗濯…父も覚悟「大変な方がよい」 子どもの“真の守り方”

日南学園で甲子園出場、社会人・ミキハウスでもプレーした黒川大雅氏【写真:本人提供】

上宮で選抜優勝の黒川洋行氏…長男・大雅さんは日南学園で寮生活→甲子園

子どもが苦労する厳しい環境に送り出すことも育児の方法であり、保護者の“優しさ”とも言える。選手として甲子園で優勝し、息子も甲子園出場を果たしている黒川洋行さんが5日、野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」のオンラインイベント「甲子園予備校」に長男・大雅さんとともに出演。寮生活の意義や心得を語った。

黒川さんは大阪・上宮で主将として1993年に選抜優勝を成し遂げた。3人の息子も甲子園を目指してほしいと考え、幼い時から野球用具や野球アニメに触れる環境をつくった。結果的に3人とも野球に興味を持ち、全国の強豪校へ進学した。

長男・大雅さんは日南学園(宮崎)で3年生の時に春夏連続で甲子園に出場している。野球漫画『ダイヤのA』を読んで憧れた寮生活を第一条件に、高校の進学先を選んだ。地元の奈良を離れることに抵抗はなかった。

「親元を離れて自分を鍛えたいと思いました。その中で甲子園に行ける確率が高い高校を探して、日南学園に縁があって行くことになりました」

寮生活は最初、先輩との2人部屋だった。下級生には先輩の分の洗濯をするなど役割があった。目覚ましの音で先輩を起こすわけにはいかないため、自然と早起きする習慣もついたという。寮生活は野球以外の面で学びが多く「親のありがたみを感じました。勉強になった3年間でした」と振り返る。

3人の息子を“甲子園球児”に育てた黒川洋行さん【写真:編集部】

息子の寮生活に賛成…「苦労を自分で乗り越えてほしい」

黒川さんも大雅さんの寮生活に賛成していた。厳しい環境だとわかっていたが「大変な方がよいと思っていました。世の中で生きていく上で、生きてきますから。苦労を自分で乗り越えてほしいという思いで送り出しました」と語る。次男(現楽天の史陽内野手)は智弁和歌山、三男の怜遠さんは星稜(石川)に進み、3人の息子全員が親元を離れている。

イベントのホスト役を務めた多賀少年野球クラブの辻正人監督は、黒川さんの子育てに納得した。

「今の親御さんは子どもに何かあることが嫌で、ストレスを感じさせない守り方をする傾向があります。自分の子どものことなので育て方は親御さんの自由ですが、黒川さんのように子どもを強くする育て方が、本当の守り方だと感じます」

黒川さんは息子3人の進路を一緒に考えてきた経験から、進学先を決める際は事前にチームの雰囲気や練習を直接見ることを勧めている。そして、保護者の役割はアドバイスまでにとどめ、本人が決断する大切さを説いた。

「自分で納得して選んだ高校であれば、苦しさも乗り越えられます。高校野球は寮生活でも自宅から通っても厳しい世界です。どんな選択をしても、最終的には家族で頑張れるかどうかが重要だと思います」

甲子園の道は平坦ではない。だからこそ、特別な経験となる。選手だけではなく、保護者の覚悟も問われる。(間淳 / Jun Aida)

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