茨城・水戸コミュニティ番組改編 FMぱるるん 24時間放送 災害情報「頼れる存在に」

市民パーソナリティーのあかりさん。地域に密着した情報を届けているFMぱるるんの放送スタジオ=水戸市酒門町

茨城県水戸市を中心に暮らしの情報を細やかに伝えてきたコミュニティーFM「FMぱるるん」が4月から24時間放送に移行した。番組改編でこれまで放送休止していた平日午前3~6時も切れ目なく電波を届けている。同局を運営する水戸コミュニティ放送(同市酒門町)社長の小川啓子さんは「災害時に命を守る情報を伝えるのが使命。常に電波を流し、非常時の情報基地として一層頼られる存在になりたい」と狙いを話す。

コミュニティーFMは、放送エリアを一部地域に限定してローカルな情報に特化した地域密着メディア。阪神大震災や東日本大震災で被災住民の安否情報を伝えるなど、〝点〟を支える災害放送として地域を支えてきた。

同局は1997年に同市はじめ県央地域を対象に開局し、主婦や劇団員、会社役員など個性豊かな市民パーソナリティー約80人が地域の話題をつぶさに届ける。「主婦の井戸端会議みたいな会話が人気」(小川さん)だという「茨城弁でごめんなんしょ~」など、全番組の6割が自主制作だ。

生活者目線の番組でリスナーの暮らしを彩ってきた一方、東日本大震災で県庁屋上の送信用アンテナが倒れるなど被災を経験。物干しざおの先に非常用のアンテナを付けて社屋の屋上に立て、震災翌日の早朝に放送を再開、炊き出しやライフラインの復旧状況など、市から得た生活情報を伝え続けた。

「うちのお風呂で入浴できます」「子ども用の紙おむつと粉ミルク、お譲りします」。リスナーの寄せる網の目のような情報も電波に乗せた。〝身近な他人〟が、放送を通して支え合う姿に「住民に寄り添う放送局であらねばと強く思った」と小川さんは語る。

震災前後に県央5自治体と防災協定を結び、災害時に被災自治体の避難指示・勧告の伝達、給水場や避難所の開設など、公的な対応を優先して放送する。ただ、非常時に情報インフラ機能を発揮するには「常に聴いてもらって暮らしに浸透しているのが前提」と放送局長の海老沢逑夫(のぶお)さん。

24時間放送に切り替えて放送休止をなくすことで、「災害放送を素早く割り込んで、『ぱるるんはいつでも流れてる』と情報源として聴いてもらえる」(海老沢さん)と頼れる放送局として、存在感を増したい考えだ。

「災害放送で住民の命と財産を守り、聴く人が幸せになる番組を地道に届けるのみ」と小川さんは力を込めた。

© 株式会社茨城新聞社