田村睦心&入野自由、アニメ『烏は主を選ばない』に自信「この面白さを見て体感して」(田村)「物語が進むほどハマっていく」(入野)

By TV LIFE

『烏は主を選ばない』©阿部智里/文藝春秋/NHK・NEP・ぴえろ

アニメ『烏は主を選ばない』(NHK総合 毎週土曜 午後11時45分〜)が、4月6日(土)からスタートする。原作は、史上最年少の20歳で松本清張賞を受賞してデビューした阿部智里さんの人気ファンタジー小説「八咫烏(やたがらす)シリーズ」。日本神話にも登場する三本足の伝説の鳥「八咫烏」をモチーフに、人間の姿に変身できる八咫烏の一族が異世界の山内(やまうち)を縦横無尽に飛びまわる和風大河ファンタジーだ。今作はそのシリーズの中から、第2作「烏は主を選ばない」を中心に映像化。八咫烏の少年、雪哉が美しくも風変わりな若宮に仕えることになり、日嗣の御子の座をめぐる陰謀の渦に巻き込まれていく。放送に先駆けて、雪哉役の田村睦心さんと若宮役の入野自由さんに作品への思いを聞きました。


◆原作にはどんな印象を持ちましたか?

田村:私は漫画の方から拝見しました。謎が多くて、どういう展開になっていくんだろうとどんどん引き込まれて。特に女性たちの本性といいますか、目論みが分かっていくのがワクワクしましたね。ファンタジーなのですが、ミステリーを読んでいるような感覚がして、読み進めていくのが楽しかったです。あと書きによると、原作の阿部(智里)先生は「勾玉シリーズ」がお好きだそうで。

入野:「勾玉シリーズ」? それなら俺、ミュージカルやりましたよ。

田村:えぇー!?

入野:「空色勾玉」という作品で。

田村:そうだったのですね。私、初めて読んだ本が「勾玉シリーズ」でした。あの時に近い感覚だなと思っていたら、阿部先生もまさにその作品で育ちましたというようなことを書かれていて。そこにエッセンスがあったのか! と驚きました。

入野:僕はまず小説を読みました。最初はどういう世界観なのかを説明してくれる静かな始まりなんですけど、そこから怒とうの展開になっていって。むっちゃん(田村)の言うようにミステリー的な部分や、その中での人間関係、魅力的なキャラクターたち。いろんな要素が入っていて面白い作品でした。

田村:私が気になったのが、劇中に“馬”と呼ばれる烏がいるのですが、その烏は雪哉とは違って、人間の姿になってはいけないんです。足が紐で縛られていて、そういう闇深さもあるんですよね。

入野:そういうのを見ると、自分たちとは違う世界のように感じるかもしれませんが、実は僕たちが生きている今の時代と通じる部分がある気がして。これは自分たちが歩んできた道のりなんだと突きつけられているようで…ハッとさせられるという方が強いかもしれません。そういう意味では“リアル”でした。

田村:跡目争いとかでいろいろと揉めているのとかも、まさにリアルで怖いですよね。

入野:怖いですよ。

田村:女性同士で誰が后になるかとか。大奥とかとは違って4人に絞られているだけ、まだきれいなような気もしますけど、そこに至るまでにもきっといろいろあったはずで。実はかなりえげつないのではないかなと。

入野:そうですよね。ハマればハマるほど考察がはかどると思います。

『烏は主を選ばない』©阿部智里/文藝春秋/NHK・NEP・ぴえろ

◆田村さんは雪哉、入野さんは若宮のどんなところに魅力を感じていますか? ご自身との共通点もあればお聞かせください。

田村:雪哉君の魅力は“生い立ち”ですかね。彼の生い立ちはすごく特殊で。ぼんくらのようで実は賢いところももちろん魅力的なのですが、なぜそうなったのかという所以。それが彼の生い立ちにあって、そこは描かれるような、まだ描かれないような。絶妙な触わり方をしていて、主人公だけれど少し謎めいているところもあるのが魅力的だなと思います。共通点は何かあるかなぁ…。雪哉君ほどではないにせよ、私も人当たりはいいようにしつつ、自分なりにいろいろみんなのことを考えている、というところはありますかね(笑)。

入野:頑張って探したね、共通点(笑)。

田村:無理やりですけどね(笑)。私はこんなに頭が良くないですし。雪哉君は頭の回転が速いですけど、私はわりとゆっくりなので。でも一応ね、人当たりがいいだけではなくて、自分なりにいろいろみんなのことも考えてはいるよっていう…。

入野:2回目だよ(笑)。

田村:大事なことなので2回言ってみました(笑)。

入野:若宮は、ミステリアスで何を考えているか分からない。しかも容姿端麗で、前半は冷たいようなところがあって、ひどいなと感じるかもしれません。でも、話が進んでいけばいくほど、雪哉も若宮と交流を深めて彼のことを知れば知るほど、実は優しさあふれる思いやりの人で、愛情深いんだなと分かる。そのギャップが、より愛せるキャラクターになる要因の一つかなと思います。共通点は、ないです。

田村:探さないんですか?(笑)

入野:探すまでもなく、ないです。僕はこんなに完璧じゃないです(笑)。

田村:完璧すぎますもんね。

入野:そう。それくらい完璧でないといけないから、マイク前に立つときも一度自分を“きれいにする”というか。普通に「よし、やるか」ではなく、ふーっと一度深く深呼吸をして。

田村:驚くこととかあるんですかね?

入野:僕としてはありますけど、基本冷静ではありますよね。そこもまたかっこいいところ。多分、若宮の中には何があってもいいようにAからZまで案が用意されているんでしょうね。

田村:その中からこの案を出そう、みたいな?

入野:そう。状況に応じてね。そういう感じなのかなと。

◆出演はオーディションで決まったそうですね。

田村:お互いテープオーディションで決まったよね。

入野:はい、テープオーディションです。

田村:雪哉君はぼんくらっぽかったり、一方で真剣に若宮に怒鳴ったりとセリフにメリハリがあるので、そこを意識してテープオーディションに挑みました。

入野:若宮は、僕が演じるキャラクターとしては珍しいタイプで。最初は声を低く作った方がいいのかとか、いろいろ考えて試してみたんです。でも、作れば作るほど、このキャラクターのよさが出ていないような気がして。なので、声を作らない範囲で、できるだけ深く落ち着いたトーンにし、かつゆっくりと、堂々としゃべるように意識して演じました。テープオーディションってキリがないんですよね。

田村:何度でもやり直せてしまいますもんね。ああでもない、こうでもないって。

入野:スタジオオーディションだったら、否が応でも「はい、終わりです」と言われれば、それまでなんですけど。テープオーディションは自分で判断するしかないですし、正解も分からない。結果もなかなか…。

田村:出ませんよね。

入野:だから今回は本当にラッキーでした。

田村:私、決まったとご連絡いただいた時すごく喜びました!

入野:僕も壁に頭を打ち付けるくらい喜びました(笑)。

田村:それは怖いですけど(笑)。

入野:アフレコが始まって、やればやるほど、本当に心の底からこの作品に出られて良かったと思っています。

田村:私もです。雪哉君って、漫画だと絵がかわいらしいタッチなのでイメージしやすかったのですが、アニメだとわりとシュッとしていて。オーディションで選んでいただいたんだから…とは思いつつも、大丈夫かなと内心ドキドキしていたんです。でも、アニメでも表情が豊かになるそうなので、そこは心配しなくてもいいのかなと楽しみになりました。

◆アフレコが始まってからは、どんなことを考えて演じてらっしゃいますか?

田村:若宮もそうなのですが、雪哉君も根はすごく優しくて愛情深いんです。そんな彼が何に対して怒りを感じるのかとか。その怒りがどこから来ているかと言ったら、愛情深さからだったりするので、そこは大事にしています。

入野:むっちゃんと言えば、“少年声”のスペシャリストですからね。

田村:ありがとうございます! うれしいです。

入野:声優界には何人かそういう方がいますけど、その中でも3本の指に入る。

田村:入らないです(笑)。

入野:だからすごく楽しみにしていましたし、実際にお芝居を聞いて、やっぱり3本の指に入るなと。

田村:だから入らないですって(笑)。

入野:でもピッタリなんですよ。ディレクションを受けてどんどん変化していく対応力も含め、さすが自慢の同い年です(笑)。

田村:そう、同い年なんです。入野さんの方がかなり先輩ですけどね(笑)。

入野:僕は“表現をしない”というのをベースに考えています。若宮が何を考えているのか分からないようにする。見た人によって見え方が変わる方がいいと。若宮自体がそういうキャラクターですし。先ほどもお話したように、前半は冷たく感じるかもしれませんが、ベースには愛情深さがあるので。後半になってこんなにすてきなキャラクターだったんだなと感じたときに1話を見返したら、「あぁ、確かにこのセリフってちょっと愛情を感じるかも」と気づいてもらえるようになったらいいなと思っています。

田村:入野さん自身もおっしゃっていましたけど、入野さんが若宮のような役を演じているのを間近で見たことがあまりなくて。もっと人間味があるというか、かわいらしさがあるというか。そういう役のイメージがあったんです。

入野:どちらかというと、オーディションで一緒になるかもしれないぐらいのね。

田村:そうですよね。だから、若宮役は入野さんなんだ、どういう感じで来られるんだろうなと、私も楽しみにしていたんです。そしたら想像以上にスッとした、清らかな水のような、風のような。“静謐(せいひつ)”という言葉が合うんでしょうかね。でも腹の奥ではいろいろ渦巻いているものがあるというところも感じさせるお芝居で。こういう引き出しもあるんだな、すごいなと思いました。

入野:ありがとうございます。

『烏は主を選ばない』©阿部智里/文藝春秋/NHK・NEP・ぴえろ

◆雪哉と若宮の関係性については、どう感じていますか?

田村:そりゃあもう、ベストパートナーです!

入野:そうですね、ベストパートナー。それ推しだね(笑)。

田村:そうなんですよ(笑)。最初はやっぱり雪哉君は若宮に翻弄されて、困って、何くそ!ってなるのですが、若宮の愛情深さや、自分を本当に信頼してくれて、家柄とか関係なく自分を必要としてくれているんだというのが伝わってきて。だからこの人のために尽くそう、この人がやろうとしていることを自分もかなえてみたいと思うようになっていくところがまさにベストパートナーだなと。お互いに思い合っているわけですからね。

入野:まさにそのとおりで、お互いのいいところを引き出し合えるのがベストパートナーと呼ばれる所以ですね。若宮からしたら、ふとした瞬間の本音というか、それを出してもいいだろうと心を許せるほどにしてくれているのが雪哉で。雪哉の中に眠っている才能を見込んでいて、彼が本気を出すように、やるしかないというところに追い込む。それはできると信じているからであって。

田村:若宮はアメとムチの使い手なんです。アメをくれたと思ったら激しくムチを打たれるし、激しくムチを打たれたと思ったらさりげなくアメをくれる、みたいな(笑)。その転がされている感じは、演じていても面白いです。

入野:確かにね。その関係性は見ていても面白いと思います。後半に行けば行くほど、関係性の変化や、本当にそれ大丈夫なの? という駆け引きも出てきますし。演じれば演じるほどベストパートナーだなと思っています。

◆最後に、視聴者へメッセージをお願いします。

田村:このシーンでこんなことが起きていたけど、それって実はこう思ってのことだったの!? というような、後になって「なるほどな」とつながることが多いんです。それは若宮の心情もそうですし、女性陣とか他のキャラクターも含めて。原作をご覧になっている方はご存知だと思いますが、アニメでもそれが如何なく発揮されています。なので、1回見るだけでなく、見返せるなら見返していただいて。そしたらまた違う気持ちで見られる作品だと思いますので、何度でも楽しんでいただきたいです。

入野:原作がシリーズ化されていて、その間を切り抜くアニメって作り方が難しいはず。でも、キャラクターも一人ひとりが魅力的で、とにかくストーリーが驚きの連続なんです。特に、桜花宮の話の種明かしの部分は、収録しながらみんながリアルに“え、マジで!?”となったほどで。

田村:あそこは大盛り上がりしましたね。

入野:怒とうだったよね。それくらい面白い展開が待っています。白珠役の釘宮(理恵)さんも絶賛しました。ずっと出られる自由君がうらやましいって。

田村:複雑な部分もあるので、何て説明したらいいのか分からないですけど、とにかく面白いんです!

入野:絶対に見てください! しかないよね。

田村:そうですね。この面白さを見て体感してください!! っていう。

入野:物語が進めば進むほど、本当に転がっていくように、ハマっていくと思いますので、毎週見逃さないでいただきたいです。

PROFILE

田村睦心
●たむら・むつみ…6月19日生まれ。東京都出身。O型。主な代表作は『ONE PIECE エッグヘッド編』(欲(ヨーク)役)、『ジョジョの奇妙な冒険 ストーンオーシャン』(エルメェス・コステロ役)、『SAND LAND』(ベルゼブブ役)など。

入野自由
●いりの・みゆ…2月19日生まれ。東京都出身。AB型。主な代表作は『千と千尋の神隠し』(ハク役)、『ハイキュー!!』(菅原孝支役)、『おそ松さん』(松野トド松役)、人気ゲーム「キングダムハーツ」(ソラ役)など。

作品情報

『烏は主を選ばない』
NHK総合
2024年4月6日(土)スタート
毎週土曜 午後11時45分~深夜0時10分

原作:阿部智里「八咫烏シリーズ」(文藝春秋刊)
監督:京極義昭
アニメーション制作:ぴえろ
キャスト:田村睦心、入野自由、本泉莉奈、七海ひろき、福原綾香、釘宮理恵、竹内栄治、日野聡、白熊寛嗣、河西健吾、青山吉能、田中敦子ほか

©阿部智里/文藝春秋/NHK・NEP・ぴえろ

© 株式会社ワン・パブリッシング