「りんご猫」への理解を 広がってほしい猫エイズの知識 「保護猫たちがもっと幸せになれる」

FIV(ネコエイズウイルス)に感染した猫を「りんご猫」と言います

「りんご猫」という言葉をご存知でしょうか。りんごが栽培される地域に住んでいる猫……ではなく、FIV(ネコエイズウイルス)に感染した猫を指します。もともとは、保護猫に関する事業を行うネコリパブリックが提唱。人間のエイズ差別撲滅運動(レッドリボン運動)のイメージカラーの「赤」にならい、FIVキャリアの猫をりんご猫と呼ぶようになりました。

りんご猫となっても発症しないケースが多い

エイズというとHIV(ヒトエイズウイルス)を思い浮かべる方もいると思いますが、猫のFIVは人間を含む猫以外の動物に感染することはありません。猫同士であっても飛沫感染などはなく、猫同士の喧嘩などによって陽性猫の唾液などが咬まれた際の傷口から体内に入ることで感染するケースが多いとされています。

一度感染すると完全にウイルスを排除することはできませんが、あくまでウイルスを保持しているだけで発症はしていない状態であるため、特別な投薬や治療が必要なわけでもなく、ウイルス陰性の猫たちと変わりない生活ができるのです。「少し免疫力が弱い」くらいと考えてもいいかもしれません。

それぞれ個体により弱い部分は違いますが、症状が出ても早めの対処療法で治せばいいだけです。そして、その多くは発症しないまま天寿を全うすると言われています。

「ネコエイズ」という呼称から敬遠されることも

ただ、保護猫の譲渡などの場面では「ネコエイズウイルス」という呼称から、どうしても敬遠されがちです。

千葉県我孫子市を拠点に猫の保護・譲渡活動を行うねこ友会では、こういった先入観を払拭するため、りんご猫・そうでない猫双方を、差別せずに同時に世話を続けています。りんご猫で幸せをつかんだケースも少なくありません。

ねこ友会から、里親さんに引き取られたりんご猫のロク。今も元気に幸せな日々をおくっています

以前、人懐っこい性格と黒い毛並みが綺麗なロクというりんご猫がねこ友会に保護されていました。FIVをしっかり理解した優しい里親さんと出会い、温かい家庭で健やかに暮らしています。

「さらに周知されれば、幸せをつかむ猫が増える」

ねこ友会でお世話されているりんご猫のリカ。今日も里親さんとの出会いを待ち続けています

ねこ友会のスタッフはりんご猫についてこう話してくれました。

「りんご猫を飼うかどうかの判断は人それぞれと思いますが、FIVという猫特有の感染症があり、陽性の猫もいるということをまず多くの人に知っていただきたいです。『FIVとは何か』『りんご猫とは何か』がさらに周知されれば、これまで以上に幸せをつかむことができる保護猫が増えると思います」

「りんご猫」という呼称を提唱したネコリパブリックでは、毎年12月12日を「世界りんご猫の日」と制定しました。こういった取り組みで、今後さらにりんご猫の周知が広まっていくことを願うばかりです。

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(まいどなニュース特約・松田 義人)

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