新聞に求められる役割とは何か 読者に聞いた 4月6日は「新聞をヨム日」

[私に言わせて 春の新聞週間]

きょう「新聞をヨム日」

 4月6日は「新聞をヨム日」。情報があふれるデジタル時代で、新聞に求められる役割とは何か。さまざまな分野で活躍する読者に聞いた。

幅広く情報を届けて

宮国英理子さん(52)りゅうぎん総合研究所取締役調査研究部長

 

 毎日、沖縄県内2紙と全国紙の1面からテレビ面までを一通り眺めた後、興味のある記事を読み返す。

 世界で起きていることから、気持ちがほっこりするような小さな出来事まで幅広く取り上げられているので、いろいろな方との会話のヒントになっている。

 仕事で観光の分野を担当しており、多様な出来事が沖縄観光にどのように影響するか考えながら読むようにしている。

 好きなコーナーは大弦小弦。限られた字数の中でストーリー立てられていて、心に刻まれる文章が多く、毎日楽しみにしている。

 これからも、紙面やVoicyなどさまざまなツールで、幅広い人たちに情報が届くよう努めてほしい。(那覇市)

元気出る記事 もっと

倉科和子さん(56) JICA沖縄所長

 

 約3年前に赴任して以来、沖縄の状況を知る必要から、新聞には必ず目を通すようにしている。仕事上、行政や企業の方々と関わる機会が多く、地域情報が満載の地元紙は話題づくりや情報収集に欠かせないツールになっている。

 昨年、中南米の日系・県系人を通じた現地とのビジネス連携促進を目指し、国際協力機構(JICA)が県内企業を派遣した際の記事は反響を呼んだ。

 これは沖縄から移民した人々とのネットワークが今も保持されているからできることで、日本のどこにもない沖縄の価値。さまざまな困難を克服して得た技術や経験を再認識し、沖縄の方々が自信を持てるような情報をもっと取り上げてほしい。(那覇市)

伝統工芸復興の力に

嘉数翔さん(28) 県立芸大大学院博士課程2年 漆芸家

 

 斜陽産業になってしまった琉球漆器を学んでいる。かつて、琉球王家の祭祀(さいし)道具として重用され、幕府への献上品、中国への朝貢品にも使われた。螺鈿(らでん)の技術など、先人の美意識が反映された技術を継承することは、とても大切なことだと思う。普段から研究や作品をSNSで発信しているが、十分伝えきれない面もある。でも新聞に掲載されると、琉球の歴史や文化に関心のある多くの人に届く。初めて会う人にも声をかけてもらえる。

 新聞には信頼性と幅広い読者がいる。作家を育てるには新聞の力は大きい。県立芸大ができて若い作家も増えている。伝統工芸品をもっと紹介して作家と産業復興の力になってほしい。(八重瀬町)

仕事で輝く人に光を

喜納朝勝さん(62) 県中小企業家同友会代表理事

 

 毎朝6時に経営する会社に着き、7時から30分ほど地元2紙や経済紙に目を通します。1面から順に全ての面に目を通しますが、限られた時間の中で見出しでニュースを把握し、気になる記事を詳しく読むことができる効率的な情報収集源だと考えています。

 沖縄の新聞は全国と比べても、頑張る中小企業をより多く取り上げてくれる存在だと感じています。

 私は経営者として「人を生かす経営」を目指しています。新聞には企業の取材をさらに深掘りし、仕事で輝く人にスポットを当てた記事をもっと増やしてほしいと願います。

 社会に多くの問題や課題がある中で、前向きになれるような記事が増えることを期待します。(那覇市)

スポハラ 背景取材を

平良朝治さん(63) 県スポーツ協会専務理事

 

 県スポーツ協会の保護者アンケートで、沖縄は全国と比べてスポーツハラスメント(スポハラ)を容認する傾向が強いことが分かった。間を置かず、指導者育成委員会や競技団体連絡協議会などで改善に取り組む。

 コザ高校の生徒が亡くなった不幸なことを二度と起こさないために、スポハラは駄目だという雰囲気をつくり、根絶していく必要がある。新聞にはスポハラが起こる背景を取材し、保護者の気付きにつながるような報道を望む。

 競技に打ち込んできた結果が報じられると、競技者にとっては大きな励みになる。まだまだ普及が十分でない競技も取り上げてもらい、正確で詳細なスポーツ報道に今後も期待したい。(八重瀬町)

村の資料として重宝

仲栄真智さん(64) 国頭村商工観光課参与

 

 沖縄に関わるいろんなジャンルの内容が幅広く載っており、地元紙でしか読めない記事が多い。テレビより情報が細やかなので、仕事に使えそうな記事はストックしている。国や県にインフラの要望をする際にも、国頭村の課題や取り組みについて書かれた記事を客観的資料として提出するなど、重宝している。

 村の取り組みが載った時の反響はすごく、村のホームページや広報誌で同じ内容を発信した時と比べても反響が大きいと思う。

 観光に関する部署で働いている身としては、県内の入域観光客数など観光に関するデータについて、インバウンドがどれくらいで、どの国が増えているなど、より細かな深掘り記事を増やしてほしい。(国頭村)

掲載機に応援増えた

仲村一郎さん(52) 「中乃湯」店主の息子

 

 昨年5月に「『中乃湯』 存続へ応援団」の記事が掲載された。沖縄唯一の銭湯を残そうと有志で中乃湯応援団のフェイスブックを立ち上げたばかりだったが、記事が掲載されてから、3人しかいなかったフォロワーがこれまでに600人を超えた。

 中乃湯は、記事を読んで訪れるようになったお客さんが、お風呂上がりに、店主やスタッフとゆんたくしてから帰るなどコミュニティーの場にもなっている。こうした記事をきっかけにつながることもある。地域に根差した記事をたくさん書くことで、地域の輪が広がっていくと思う。銭湯など昔ながらの文化を残そうと活動している人もいる。そういう活動も取り上げてほしい。(宜野湾市)

掘り下げた報道要望

石垣綾音さん(34) まちづくりファシリテーター

 

 新聞はまちづくりや交通に関するものなど気になるトピックについて情報収集ツールとして利用している。例えばまちづくりに関しては、ある計画が持ち上がったときに住民がどんな反応を示しているのか、意見が交わされているかをチェックするようにしている。

 本島北部で計画中のテーマパーク「ジャングリア」を巡る記事など、みんななんとなく気になっているけど、自分で調べるには難しい情報が手元に届くのは新聞ならではだと思う。

 表面的な情報だけでなく、背景や経緯、分析など掘り下げた報道が多ければなおうれしい。「かゆいところに手が届く」記事を求めたい。とても重要な仕事だと思う。(那覇市)

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