調教で抜群の仕上げ!! コラソンビートに桜の女王戴冠期待も、歴史的名牝を輩出する国枝調教師の秘蔵っ子の“成長力”も侮れず【桜花賞】

4月7日、いよいよ牝馬クラシックの第一弾・桜花賞(GⅠ、阪神・芝1600m)が行なわれる。

過去10年を遡ってみると、勝ち馬にはアーモンドアイ、グランアレグリア、デアリングタクト、ソダシ、スターズオンアース、リバティアイランドなど、その後もGⅠ戦線で活躍を続ける名馬がズラリ。堅い決着になることが多く、単勝二桁人気の馬は馬券の対象になってさえいない。

しかし、今年は百花繚乱の趣で上位人気はかなり割れている。6日17時現在の前売りオッズを見ると、2歳女王のアスコリピチェーノ(牝3歳/美浦・黒岩陽一厩舎)が3.4倍で1番人気。以下、ステレンボッシュ(牝3歳/美浦・国枝栄厩舎)が4.9倍、クイーンズウォーク(牝3歳/栗東・中内田充正厩舎)が6.2倍、チェルヴィニア(牝3歳/美浦・木村哲也厩舎)が7.5倍、コラソンビート(牝3歳/美浦・加藤士津八厩舎)が7.7倍、スウィープフィート(牝3歳/栗東・庄野靖志厩舎)が8.3倍と、6番人気までが一桁オッズとなっている。全体的にレベルが高いと言うべきか、傑出した馬がいないと言うべきか、評価がとても難しい一戦となっている。

こうした混戦模様でもあり、近年はステップレースとしてフィリーズレビュー(GⅡ、阪神・芝1400m)を使った馬の活躍が少ないのを承知のうえで、コラソンビートを主軸として取り上げたい。
今回は関東馬の出走が多く、そのほとんどが直前輸送を避けて早めに栗東トレセンに入厩して当地で調整を続けている。コラソンビートもそんな1頭だ。

同馬は前走も同じ方法を用いたが、調整の内容は今回まったく違う。休み明けの前走は脚元のケアと馬体の維持に重点が置かれ、プール調教を中心とし、中間はトラックで時計を出さないソフト調整に終始した。それでもフィリーズレビューでは道中で馬体をぶつけられる不利もありながら、逃げ切ったエトヴプレ(牝3歳/栗東・藤岡健一厩舎)を0秒1差まで追い詰める好走を見せた。

そして、今回の栗東での調整は内容が一変。トラックでの調教を中心に置き、1週前追い切りで絶好の動きを見せると、単走となった最終追い切りでも、鞍上が手綱を引いたままで6ハロン79秒2という破格の好時計を叩き出した。調子の良さが分かる素晴らしい仕上がりとなっている。

問題はマイルという距離だが、初勝利は芝1600mの未勝利戦(東京)で挙げている。さらに、血統面を見ると父スワーヴリチャードが大阪杯(芝2000m)とジャパンカップ(芝2400m)のGⅠレースで2勝を記録。スピード豊かな中距離型であり、母の父は三冠馬のオルフェーヴル。この点から見ても血統的な不安はない。また、陣営も折り合いを重視した調教を施し、前走でその成果が出てきたと胸を張っている。

枠順も理想的な4枠8番を引いたコラソンビート。前々でレースができる強みを活かし、横山武史騎手のエスコートに応えて好レースを見せてくれるはずだ。 「対抗」として挙げたいのは、次の3頭だ。昨年12月の阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ、阪神・芝1600m)を制して2歳女王に輝いたアスコリピチェーノ。同馬のクビ差2着に食い込んだステレンボッシュ。そして、昨秋アルテミスステークス(GⅢ、東京・芝1600m)を圧勝したチェルヴィニアである。

そのなかで、もっとも注目しているのはステレンボッシュである。これまでの4戦で3人の違う騎手が手綱をとってオール連対をマークしているように、乗りにくい馬ではないのだろう。それでも今回、今週から短期免許で来日を果たした世界的名手である”マジックマン”ことジョアン・モレイラ騎手を鞍上へ迎えることができたのは、天の配剤とでも言うべきか。

加えてアーモンドアイ、アパパネといった2頭の三冠牝馬を世に送り出して、”牝馬の国枝”とも呼ばれる名伯楽の管理のもと、ステレンボッシュがどのような成長を見せているか、当日は非常に楽しみである。
3番手集団に取り上げたいのは、クイーンズウォーク、スウィープフィート、ライトバック(牝3歳/栗東・茶木太樹厩舎)の3頭に注意したい。

まずデビュー戦から、重賞初制覇となった前走のクイーンカップ(GⅢ、東京・芝1600m)まで、すべて上がり3ハロン33秒台を叩き出している驚異的な末脚の持ち主であるクイーンズウォーク。ゲートに難があるため後方からの競馬を余儀なくされる懸念材料があるが、展開次第では一気の浮上が有り得る。手綱をとる川田将雅騎手は、スターズオンアース、リバティアイランドに続き、前人未到の本レース3連覇に挑む。

スウィープフィートはトライアル戦のチューリップ賞(GⅢ、阪神・芝1600m)を大外一気の追い込みで制した。引き続き、リビングレジェンドの武豊騎手がガイド役を務めるのも心強い。父はコラソンビートと同じスワーヴリチャードで、祖母(母の母)は宝塚記念などGⅠレース3勝を挙げた名牝スイープトウショウ。祖母譲りの爆発的な切れ味で戴冠を狙う。

デビュー3戦目のエルフィンステークス(L、京都・芝1600m)を優勝し、大舞台に駒を進めてきたのが、キズナ産駒のライトバックだ。ただし持ち時計は遅く、2走前のアルテミスステークスではチェルヴィニアの4着に敗れており、実績的に見劣りするのは否めない。

しかし、同馬はキャリアが少ない分、伸びしろの大きさには屈指のものがある。さらに、鞍上には勢いに乗る坂井瑠星騎手を2戦連続で確保。先月24日の高松宮記念(GⅠ)をマッドクールで制した手綱さばきに期待がかかる。

取材・文●三好達彦

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