『三四郎ANN0』日本武道館イベントへ 神回なき深夜ラジオはなぜ聴かれ続けるのか

ニッポン放送で金曜深夜3時から放送されている『三四郎のオールナイトニッポン0』が10周年を迎え、今年11月24日に日本武道館で番組イベントを開催するという。

今年2月に東京ドームでの『オードリーのオールナイトニッポン』15周年イベントを成功させたオードリーも5年前の10周年には武道館で記念イベントを行っており、その道のりをたどる形だ。

『三四郎ANN』は2015年に火曜深夜3時枠でスタート。翌年には金曜深夜3時に移動し、いわゆる「2部」を4年間勤めあげた19年に「1部」に昇格。金曜深夜1時枠で2年間にわたって放送されたが、21年に当時金曜「2部」だった霜降り明星と入れ替わる形で再び深夜3時枠に降格。その後もマイペースで放送を続けている。

また降格と同時に月額550円の有料番組ファンクラブ「バチボコプレミアムリスナー」を設立。翌22年には会員数が5,000人を超えており、深夜ラジオとしては貴重な収入源となっていることも番組継続を後押ししている。

『三四郎ANN』は、特に熱狂的なリスナーが多い番組といわれる。先日、株式会社Radikoが発表した2023年のラジコ視聴数ランキングでは、20代男性で8位、30代男性で10位にランクインしており、押しも押されぬ人気番組のひとつだ。

筆者も比較的熱心な同番組のリスナーだが、『三四郎ANN』の特徴といえば、その圧倒的な「内容のなさ」だと感じている。そして、その「内容のなさ」からは考えられない小宮浩信の「熱量」だ。

毎回オープニングでは、だいたい小宮が相田周二の何かしらの言葉尻をつかむなどして、執拗かつ不必要に掘り下げていく。ここに具体的にどんなエピソードがあったか例を出したいところだが、本当に毎回意味がないので覚えていないのである。30分か40分か、ただ時間だけが過ぎていく。

そんな番組であるからして『三四郎ANN』には神回がない。

例えば『オードリーANN』なら互いの結婚発表回や、春日事件の際の若林激怒回、若林がキューバ旅をみずみずしい感性で語った回など、すぐにいくつもの神回が思い浮かぶ。

『三四郎ANN』には、それがない。小宮は諸先輩の例に倣ってラジオで結婚発表を行ったが、肝心の相田がインタビュアーとしてまるで機能せず、ただ「中学からの友達が結婚した~」という感慨にふけっているだけで番組が終わってしまった。興奮が収まらない相田は、帰宅後にYouTubeで生配信を立ち上げ、また「中学からの友達が結婚した~」と感慨にふけっていた。2人とも素行がいいので、春日事件のような週刊誌をにぎわすスキャンダルも起こさない。

ゲスト回もそうだ。横並びである水曜深夜3時の『佐久間宣行ANN0』は千鳥やキングコング、バカリズム、麒麟・川島明などキラ星のようなスターを呼んで“深いお笑いの話”をするのが恒例となっている。『JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD』(TBSラジオ)の石橋貴明乱入回など、もう10年以上前なのに今でも語り草だ。

『三四郎ANN』のゲストといえば、なかやまきんに君ばかりである。過去7度にわたるゲスト出演は三四郎、リスナーが自他ともに認める「クソ回」「珍味回」と呼ばれており、パーソナリティである三四郎自身が「来週はきんに君が来るから聞かなくてもいい」とリスナーに注意する有様である。

昨年8月11日深夜、『霜降り明星ANN』にせいやが欠席し、粗品が事前に録音した自分の声と生放送でクロストークを行うという、それこそ神がかった放送を行ったことがあった。その直後の『三四郎ANN』では、数十分にわたって令和ロマン・松井ケムリの悪口を言っていた。「金持ちのくせに」とか「頭が空っぽ」とか、そういう話だ。当時、三四郎と令和ロマンの間にほとんど面識はない。

そしてひとしきり悪口を言い終えた小宮が、ため息をひとつついて、こんなことを言うのだ。

「粗品がすごいことやってんのに、俺は何やってんの。人の悪口、しかも後輩のよく知らないやつの悪口言って、10個くらい下の後輩つかまえて……」

本当に小宮の言う通りだと思った。

さっきまで粗品がすごいことやってたのに、なんでこんなラジオ聴いてるんだろう。

きっと武道館でも同じ気分になるはずだ。武道館まで来て、なんでこんな話を聴いてるんだろう。このそこはかとない多幸感は、いったい何なんだろう。半年後、1万人が、それを体験することになる。

(文=新越谷ノリヲ)

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