「zonked」とはどんな状態? イギリス英語のスラング特集(35)

イギリス英語のスラング特集として、これまで「A」から順に紹介してきたが、とうとう「Z」までたどり着いた。イギリス英語には、日常生活のさまざまな状態を表現するための豊富なスラングが存在するが、なかでも極度の疲労や酔いを表現するスラングが多い。

今回紹介する「zonked」もそうしたスラングの一つで、その背景にはイギリスならではの文化や社交性が関与していると考えられる。

■Zonked 「zonked」とは、非常に疲れている状態を表す形容詞だ。以前紹介した「cream crackered」や「slumped」のように、「へとへとに疲れ果てた」という意味である。

ぐっすり眠っている様子を意味することもあるが、疲れ果てた末の状態と考えるとわかりやすいだろう。同様に、「ひどく酔っぱらっている」という意味で使われることもよくある。

「zonked」は20世紀なかばに登場し、現在も広く使われている非常にポピュラーなスラングだ。ただし、その由来は明確にはわかっていない。

まず、おそらく何かに激しくぶつかる音を表した擬音語として、「zonk」という動詞が生まれたと推測される。そこから派生して、たとえば疲労や酩酊などでぶっ倒れたときの音へとつながり、そこから現在のような意味になったのではないかというのが一つの仮説だ。

なお、「zonk」の形で動詞として使われることも多いスラングだ。その場合、特に「zonk out」という句動詞の形で使われることが多い。

I was so zonked out after the marathon that I fell asleep on the couch. (マラソンの後、私はとても疲れ果ててソファーで寝てしまった)

They were partying all night and got completely zonked on wine and cocktails. (彼らは一晩中パーティーをして、ワインとカクテルで完全に酔っぱらってしまった)

ところで、「zonked」に限らず、イギリス英語には酔っぱらった状態を表すスラングが非常に多い。ある研究では、「drunk」の代わりに用いられるスラングが、イギリス英語には500以上もあるとされている。

なぜこのようなスラングがそれほどたくさんあるのかと言うと、おそらくこの国に深く根付いたパブ文化が関与しているのだろう。

イギリスでは伝統的に、パブは日々の疲れを癒やし、人々が互いに共感を分かち合う場所として機能してきた。このような社交的環境は、新しいスラングを生み出す理想的な場でもある。

これらのスラングは単に疲労や酩酊を表す以上のものであり、いわばそこで育まれた深い人間関係や共有された体験を象徴するものだ。「zonked」というスラングも、そんなイギリスの社会性と創造性の産物と言えるのではないだろうか。

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