宅地開発地から「幻の城」石垣発見、事業者「まちの発展のため中止承諾」 国史跡指定へ市と覚書

発掘調査で出土した坂本城の西端と考えられる石垣と堀の遺構(大津市下阪本3丁目)=2024年2月撮影

 戦国武将の明智光秀が築城した坂本城とみられる石垣などの遺跡が大津市下阪本3丁目の宅地開発予定地で見つかったことを受け、大津市と土地を所有する不動産業者「三王不動産流通」(大津市)は3月21日、遺跡の国史跡指定に向け相互協力する覚書を締結した。

 遺跡は、同社の宅地開発予定地約3千平方メートルのうち約900平方メートルで市が昨秋から進めていた発掘調査で見つかった。石垣(長さ約30メートル、高さ約1メートル)や堀の跡、建物の礎石、井戸などの遺構が見つかり、坂本城の遺構と推定された。1月下旬に市から遺構保存のため開発の中止を要請された同社は、2月上旬に承諾することを決めたという。

 今回の覚書に基づき、同社は適切な時期に土地開発許可の廃止を届け出る。国から史跡指定の答申がなされた場合は、速やかに市と土地の売買契約締結に向けた協議を始めることなども定めた。

 市は2024年度から、国史跡指定に向けた詳細な発掘調査を始める。この日の覚書締結式で佐藤健司市長は「発掘結果は市民にとって大きな喜び。国の史跡指定はこれらの文化財を後世に受け継ぐために必須で、全力で取り組んでいく」とあいさつ。同社の河本善秀社長(43)は「文化財として保護することが大津の発展につながると判断し、開発の中止を承諾した。将来、素晴らしいものとすることを強くお願いしたい」と語った。

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