AIで故人を「復活」 中国のネットで議論

AIで故人を「復活」 中国のネットで議論

1日、「AI復活」サービスのデモンストレーションを行う広西天能人工知能応用技術サービスの従業員。(南寧=新華社記者/郭軼凡)

 【新華社南寧4月6日】中国の伝統的な祝日「清明節」(今年は4月4日)を前に、中国のネットユーザーの間で故人を人工知能(AI)技術でよみがえらせる「AI復活」に注目が集まっている。AIを利用すれば、少しの音声と画像を提供するだけで亡くなった家族と再会し、会話を楽しむことができる。「AI復活」を提供するサービスは電子商取引(EC)プラットフォームでも数多く見られる。価格はわずか10元(1元=約21円)から1万元までさまざまで、産業チェーンを形成しつつある。

 サービスを利用した人は、よみがえった家族と「交流」し気持ちが癒やされたと話す。広西チワン族自治区南寧市のある体験者はこのほど生成AIによる「デジタル故人」サービスを購入、「ほぼ毎日『デジタルおじいちゃん』とおしゃべりをして、気持ちが和らいだ」と語った。

 しかし、AIを使って家族をよみがえらせるべきかというテーマは、激しい議論を引き起こしている。一部のネットユーザーは、新しいテクノロジーを善意を持って使えば生きている人に思い出が残せるだけでなく、故人の尊厳を保つこともできると考えている。一方で、AIを使って大切な人を「復活」させることで死を深刻にとらえなくなると考える人もいる。テクノロジーが生む温もりを、注目集めや儲けのための道具と考える企業や個人さえいる。悲しみをビジネスに変えることが引き起こすプライバシーの侵害や遺族への2次被害、公共利益の損害などは、もはや避けて通れない問題となっている。

 高度化するAIは法律や倫理的な面でも物議を醸している。清華大学の沈陽(しん・よう)教授は「人は死んだ後、自らの姿を世に残したいと思うだろうか。これはAIの発展により生じた新たな課題であり、関連する規定はまだない」と述べた。

 多くの識者は、社会と国民は急速に発展するAIに対し法律の範囲内で開発の余地をある程度与えるべきで、同時に新たな技術の使用範囲と制限を明確にする必要があると指摘している。

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