原田眞人×森達也『オッペンハイマー』の魅力を語るーー本当に広島・長崎の惨状は 描かれていないのか?

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第二次世界大戦下、世界の運命を握った天才科学者オッペンハイマーの栄光と没落の生涯をクリストファー・ノーラン監督が映画化し、第96回アカデミー賞で作品賞、監督賞を含む最多7部門を受賞した『オッペンハイマー』の公開記念トークイベントが4月6日、都内で行われ、原田眞人監督(『日本のいちばん長い日』)、森達也監督(『福田村事件』)が作品の魅力を語った。

原田監督は、『市民ケーン』『アラビアのロレンス』『レッズ』『ラストエンペラー』『アビエイター』といった偉人の生涯を描く名作映画を挙げながら、「どれも歴史に名を残した人物の栄光と挫折を描いて、それをスペクタクルにしている」と指摘。『オッペンハイマー』について「そういった作品に属すし、その最高峰。興奮しながら見ました」と激賞した。アカデミー賞で主演男優賞に輝いたキリアン・マーフィーについては、「あの繊細なキリアンで大丈夫かと不安だったが、繊細ながら、力強くて、表情ですべてを見せてくれる」と賛辞を送った。

原田眞人

森監督も「映像と音、いろんなものが渾然一体している。観ながら、すごく手応えがある映画」と絶賛。本作に対しては、広島・長崎の惨状が直接的に描かれていないという指摘もあるが、「オッペンハイマーの苦悩を通して、間接話法でしっかり描いていますよ。これは強烈な反核映画であり、反戦映画。映画だから、過剰に説明する必要もないし、足し算しないと不安になってしまうテレビでは無理」と映画としての魅力を語った。

森達也

この点について、原田監督も「逆に『オッペンハイマー』が中途半端に踏み込んでこなければいいなと思っていたし、彼の罪の意識は描かれている。映画の論理の見事さに感動しましたね」と同意。現在、原爆が投下された後の広島を描いた脚本に取り組んでいるといい、「(映画化は)やりたいんですけど、日本のお金だけじゃできない。でも『オッペンハイマー』が道を開いてくれたので、いつか作るぞと思っているし、世界の映画人がここから影響を受けて、作品を作っていくべき」と意欲を燃やした。

また、森監督は「唯一の被爆国である日本が、なぜ、いまだに核兵器禁止条約に批准すらできないのか」と疑問を呈し、「この映画に対して、広島・長崎の描写が足りないって怒るなら、むしろそっちの方に、声を上げるべきじゃないかなと。この映画を観て、改めてそう思いました」と話していた。

取材・文・撮影=内田涼

<作品情報>
『オッペンハイマー』(R15+)

公開中

公式サイト:
https://www.oppenheimermovie.jp/

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