《ひでこの部屋 ゲスト:上田淳子さん》 夫婦だからといって、いつも一緒にいたいわけではない(笑)

『サンキュ!』の特集やテレビの料理番組でおなじみの上田淳子さん。双子の息子が同時に独立し、人生のセカンドシーズンに突入!子どもが巣立った夫婦がお互い心地よく暮らすために手放すべきものとは?同世代でもある上田さんとひでこ先生の「大人の断捨離」トーク!

定年後に必要なのは「自分の居場所」だと気づいた

ひでこ:上田さんは双子の息子さんが独立し、夫婦2人暮らしになるタイミングで引っ越ししたそうですね。子どもが巣立って小さな家に住み替える夫婦は多いけど、上田さんは4人暮らしのときと変わらない広さの家を選んだと。
上田:私も当初は最低限のスペースさえあれば十分と考えていました。でも、自分の今後を想像したら、「本当にそれでいいの?」という疑問が湧いて。バリアフリーなども大事だけど、何よりも必要なのは、夫婦それぞれの居場所なんじゃないかって。例えば私たち夫婦は、趣味から何からまったく違う。夫はランニングが大好きなアウトドア派。私はインドア派。飲み食いはお互い好きですが、一緒に食べ歩きする感じでもない。それぞれ好きなことをして、たまに一緒に行動するくらいがいいんです。
ひでこ:だから上田さんの場合は、夫婦「一緒に」ではなく「各自」が好きなことをやれるスペースが必要だと。私も同じだわ。
上田:というのも、夫が定年を迎えると、家で過ごす時間が格段に増えますよね。でも夫婦だからといって、いつも一緒にいたいわけではない(笑)。特に私たちは定年後もそれぞれ家で仕事をする予定だったので、子育て時代の暮らし方をリセットして、今の自分たちに合う暮らし方に変えることにしたんです。その第一歩が住み替えでした。
ひでこ:素晴らしい発想。夫婦だからいつも一緒、というのは固定観念。なんなら一緒に暮らさなくてもいい。そう、夫とは不仲ではないけど別居している私のようにね。「今の」自分たちにふさわしい暮らしを選び、状況が変わればそのつど変えてる。それこそが断捨離的な生活であり、生き方なのよね。

キッチンを断捨離したら夫婦の会話が変わった!

ひでこ:住み替えてから、ご主人との関係はいかが?
上田:よくなりましたね。以前は「報連相」しかしなかったのが、今では世間話を楽しむように。お互いの気配を感じながら、それぞれが好きなことをやり、ときどき一緒に行動する、よき相棒のような関係性が私たちには合っていたみたいです。
ひでこ:最高の距離感ですね。
上田:そうなれたのは、キッチンにある物を断捨離したのが大きかったかも。前の家ではキッチンは私の仕事場を兼ねていたので、冷蔵庫の中は公私の物が混在していつもギュウギュウ。家族にはストレスだったと思います。新居では仕事用のキッチンを別にしたので、家庭用のキッチンは調理道具も冷蔵庫の中身もスッキリ。今では夫が率先して朝食作りを担当するように!
ひでこ:素敵!物が堆積すると閉塞感が生まれるので、家が淀めば人間関係も淀むんですよ。
上田:なるほど。ということは、家がきれいになれば人間関係もよくなる、と。
ひでこ:おっしゃる通り。例えば、食卓の上にあふれていた物を全部なくしたら食事中の会話が弾むようになって、夫婦仲が改善した、なんて例もよくあるんですよ。
上田:わかります。私たちが他愛のない会話をするようになったのは、引っ越し後、料理や後片づけをお互い協力するようになってから。断捨離にこんな効果があるとは、驚きです!

リビングにはソファ。それ、誰が決めたの?

ひでこ:引っ越しの際にはかなりの物を処分されたのでは?
上田:何トン捨てたかわかりません(苦笑)。4人で暮らした25年の間に積もった地層を崩すのは重労働!「今後本当に使うのか」を基準に取捨選択し、さらに「もしも私たちが持ち続けた場合、最終的に処分を担うのは息子たち」という目線で、残す物を厳選しました。息子たちの思い出の品は本人たちに選り分けてもらって、段ボール2つ分くらいまで減らしましたね。
ひでこ:おぉ、頑張りましたね!
上田:新居は家具も最低限。将来的に息子たちに捨ててもらう手間と費用をかけたくないなら、いずれ自分で捨てるしかない。でも、年老いてから大きな家具を自力で処分するのは大変。そう思ってソファを断捨離しました。
ひでこ:私もアンチソファ派(笑)。物置きになるのが関の山だもの。
上田:ですよね。今さら夫婦2人でソファに並んでテレビを観ることもないし(笑)、ソファでうたた寝するならベッドで眠りたい。それで置くのをやめたら、空間は広くなり、掃除もしやすくなって大正解!
ひでこ: 世の中には「リビングにはソファが必要」という思い込みにとらわれている人がいかに多いことか。固定観念にしばられず、「自分軸」で物を取捨選択できる上田さんは上級のダンシャリアンね!

「あるのが当然」から「なくてもOK」の人生に

上田:今回気づいたのは、私の場合、子育てロスはほぼないこと。一緒に住んでいるとあれこれ心配だったけど、離れるともう気にならない(笑)。
ひでこ:わかる。私もそうだったわ。
上田:うちは双子、しかも男の子をワンオペで育てたので、結構ハードで。もう子育てはお腹いっぱい(苦笑)。独身時代はフランス料理のシェフを目指して現地で修業までして、そのおかげで料理研究家として活動できているけれど、子育て優先で20年余りを生きて、やり残したこともある。これからの人生では、今までできなかったことをやるつもりです。
ひでこ:大賛成!これまでの暮らしの形を断捨離したおかげで、「なくてもOK」の発想と身軽さが手に入ったんですもの。これからの人生、お互い自由を大いに楽しみましょうね。

子どもが巣立ったのを機に家と暮らしを完全リセット。――上田淳子

夫婦2人暮らしには常識も固定観念もいらない!――ひでこ

ひでこ先生とサンキュ!がつくった断捨離ムック

好評発売中「ひでこの部屋」人気回も収録

<教えてくれた人>
・やましたひでこさん
断捨離(R)提唱者。1954年、東京生まれ。子育てや介護を経験した後、ヨガの行法哲学「断行・捨行・離行」から着想を得た「断捨離」理論を構築。BS朝日のレギュラー番組『ウチ、“断捨離”しました!』(毎週火曜夜9時)は今年2月に、放映200回を突破!

・上田淳子さん
料理研究家。兵庫県出身。辻学園調理技術専門学校で西洋料理、製菓、製パン技術を習得し、同校の職員を経て渡欧。スイスやフランスで3年間修業し、帰国後はシェフパティシエを経て料理研究家に。最新刊『オーブンで焼くだけレシピ』(Gakken) 他、著書多数。

参照:『サンキュ!』2024年4月号「断捨離(R)トーク ひでこの部屋」より。掲載している情報は2024年2月現在のものです。撮影/木村文平 取材・文/志村香織 編集/サンキュ!編集部

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