【広尾】山種美術館【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―

春爛漫、花の名画が華やかに咲きそろう

山種美術館で開催中の【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら― [2024年3月9日(土)~5月6日(月・振休)]を見て来ました。

横山大観、小林古径、山口蓬春、奥村土牛、福田平八郎の名だたる巨匠から現代の作家まで花の名画が会場を華やかに彩ります。

本展では日本画だけでなく梅原龍三郎、中川一政洋画の花の名画も彩りを添えます。

各地で桜の開花宣言を迎えようやく春本番花の名画が華やかに咲きそろう春爛漫の展覧会です。

百花繚乱、咲き誇る花の絵画 美術館で楽しむ《醍醐》の桜

弥生の空に満開の桜(さくら) 横山大観《春朝(しゅんちょう)》、小林古径《桜花(おうか)》、奥村土牛《醍醐(だいご)》

古来より様々な絵画に描かれてきた日本の春を象徴する花として日本人に愛されてきました。

大きく枝を広げた山桜が、画面からはみ出すように描かれた横山大観(よこやまたいかん)《春朝》(左)。真っ赤な朝日と満開の桜は、大観が抱く日本の心を象徴するイメージでしょうか。

小林古径(こばやしこけい)《桜花》(中央)。葉桜の赤みを帯びた若葉と白粉(おしろい)のような桜の花びら古典的です。

奥村土牛(おくむらとぎゅう)《醍醐》(右)。師の小林古径(こばやしこけい)の七回忌の帰りに立ち寄った京都の総本山醍醐寺(だいごじ)しだれ桜に「極美」を感じて描いたそうです。

絵具を何層も塗り重ねることで柔らかな色合いが生まれ、春爛漫の景色が広がります。

山種美術館入口横にはモデルとなった「太閤しだれ桜」を組織培養した「太閤千代しだれ」が植樹されています。桜の名画とともにお花見も楽しめます。

出典:リビング東京Web

初夏に競う百花の王・牡丹(ぼたん)、速水御舟《牡丹花(墨牡丹)(ぼたんばな すみぼたん)》、川端龍子《牡丹(ぼたん)》

中国では、古来より百花の王・牡丹は、富貴の花として、富と繁栄、豊かさの象徴として好まれて来ました。

唐(とう)時代には宮中で、牡丹の花を競い合う闘花(とうか)が流行ったそうです。

大ぶりな花が鮮やかに描かれた川端龍子(かわばたりゅうし)《牡丹》(左)。花びらのグラデーションが牡丹をより華やかに見せています。

速水御舟(はやみぎょしゅう)《牡丹花(墨牡丹)》(右)。葉や茎は緑色を使いながら、は、墨の濃淡のみで描くという斬新な手法です。

菱田春草(ひしだしゅんそう)《白牡丹》も並び、初夏に競う、闘花の行方は…。

出典:リビング東京Web

光琳へのオマージュ、川端龍子《八ツ橋(やつはし)》

『伊勢物語(いせものがたり)』「東下りの段」に登場する「八ツ橋(やつはし)」の場面をモチーフにした川端龍子(かわばたりゅうし)《八ツ橋》

尾形光琳(おがたこうりん)《八橋図屛風(やつはしずびょうぶ)》(メトロポリタン美術館蔵)にインスパイアされて描いた作品だそうです。

型を反復したような光琳の燕子花(かきつばた)に対して、龍子の燕子花は、1輪ずつ写実的個性的に描かれています。光琳にはない白い花も見えます。ピンと張った葉がどことなくこの時代の緊張感を感じさせます。

発表されたのは戦時中、龍子の自邸と弟子の画室で開催した「青龍展」にて。

龍子記念館の向かいにある龍子公園アトリエ兼旧宅の庭には「爆弾散華の池」があります。空襲で全壊した自邸跡に龍子自ら造成したそうです。

出典:リビング東京Web

歳寒三友(さいかんのさんゆう)、梅(うめ) 竹内栖鳳《梅園(ばいえん)》、《松竹梅(しょうちくばい)》のうち「梅(うめ)」、速水御舟《紅梅・白梅(こうばい・はくばい)》

梅の枝にとまる目白(めじろ)がかわいらしい竹内栖鳳(たけういせいほう)《梅園》(左)。

《松竹梅》のうち「梅」(中央)は、歳寒三友の松竹梅のうち寒中に開花する梅を描いた作品。

速水御舟(はやみぎょしゅう)《紅梅・白梅》(右)。かつては香りとともに夜にも鑑賞されていた梅。左幅の白梅の若木の枝が伸びる先には、金泥の薄い三日月。右幅の紅梅とともに墨のぼかしで表される夜気に花の香りを漂わせているよう。

昭和の初期に山種美術館創設者・山﨑種二(やまざきたねじ)が購入し自室の床の間にかけていたそうです。

出典:リビング東京Web

春夏秋冬、めぐる季節の花々《百花(ひゃっか)》、《四季花鳥(しきかちょう)》、《春光春衣(しゅんこうしゅんい)》

植物図鑑のような《百花》

鮮やかな色彩と細密な描写で描かれた100種類の四季の花田能村直入(たのむらちょくにゅう)《百花》

図巻から花びらがこぼれ落ちて来そう芳しい花の香りも感じさせる華やかな画面です。

花の名称も併記された植物図鑑のような花卉図巻です。

出典:リビング東京Web

紅椿や白木蓮、桐、楓に梅が咲く《四季花鳥》、やまと絵の雅《春光春衣》

荒木十畝(あらきじっぽ)《四季花鳥》春(華陰鳥語) 夏(玉樹芳艸) 秋(林梢文錦) 冬(山澗雪霽)(右側4幅)。春夏秋冬の花木の中に、つがいの鳥が描かれています。

水辺や岩の描写など琳派(りんぱ)のたらしこみの技法も見られる装飾性の高い花鳥図です。

西洋画の写実的な奥行きを感じさせる空間の中に、琳派的な表現で描くことが当時の文展(ぶんてん)の流行だったそうです。

左側、松岡映丘(まつおかえいきゅう)《春光春衣》金銀砂子(きんぎんすなご)野毛、切箔を使い、装飾性豊かなやまと絵の表現が見どころです。

十二単の袖にはらはらと落ちる花びら散り始めた桜を見上げる2人の女房『源氏物語』の世界のような雅さ。

出典:リビング東京Web

桜、桜、いざや見に行かん 《桜下美人図(おうかびじんず)》、《桜可里(さくらがり)》

人と花の関わりは、古くから様々な作品に表されて来ました。特に桜は長らく日本人に愛されてきた花です。

お花見庶民の娯楽として楽しまれるようになった江戸時代桜と美人の組み合わせで多くの浮世絵(うきよえ)が描かれます。

江戸時代の近世風俗画(きんせいふうぞくが)を思わせる菱田春草(ひしだしゅんそう)《桜下美人図》(右)と上村松園(うえむらしょうえん)《桜可里》(左)。

桜と美人の主題で描かれた春草の作品は、特に左側の女性の上半身をひねり振り返る姿が、菱川師宣(ひしかわもろのぶ)《見返り美人図(みかえりびじんず)》(東京国立博物館蔵)からの影響がうかがえます。

桜の枝を手にした女性一行が描かれた松園の作品には、桜の花木ははっきり見えませんが、2人の表情お花見の楽しさが伝わってきます。同様の図が、菱川師宣《上野花見の躰》にあるそうです。

出典:リビング東京Web

梅原龍三郎《薔薇と蜜柑(ばらとみかん)》 洋画の名品も見逃せない花の名画の展覧会

山種美術館【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―は5月6日(月・振休)まで。

会場では、日本画の花の名画から、梅原龍三郎(うめはらりゅうざぶろう)《薔薇と蜜柑》(1944(昭和19)年 紙本・油彩 山種美術館蔵)など洋画の花の名画も必見です。

春の陽気に誘われてもほころぶ季節。是非お出かけください。

ミュージアムグッズ

ミュージアムグッズは、烏羽玉(540円)、山種美術館オリジナル荒木十畝《四季花鳥(部分)》のクリーニングクロス(550円)を購入。

和菓子の烏羽玉の餡は上品な甘さ。

出典:リビング東京Web

Cafe 椿 展覧会の作品にちなんだオリジナル和菓子

Cafe 椿では、青山・菊家のオリジナル和菓子、奥村土牛《醍醐》にちなんだ「ひとひら」(710円)(中央)をいただきました。

和菓子は、散りゆく花びらのひとひらを写したものだそうです。お抹茶セットでいただくと1,350円です。

※文中のうち、所蔵先表記のない作品は全て山種美術館所蔵です。※価格は税込価格です。

出典:リビング東京Web

〇山種美術館

URL:https://www.yamatane-museum.jp/

住所:〒150-0012 東京都渋谷区広尾3-12-36

TEL:050-5541-8600 (ハローダイヤル)

開館時間:10時~17時(入館は閉館の30分前まで)

※今後の状況により、開館時間は変更になることがあります。

交通:JR恵比寿駅西口・東京メトロ日比谷線恵比寿駅 2番出口より徒歩約10分

恵比寿駅西口1番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学06番)に乗車、「広尾高校前」下車徒歩1分

渋谷駅東口ターミナル54番乗り場より日赤医療センター前行都バス(学03番)に乗車、「東4丁目」下車徒歩2分

〇【特別展】花・flower・華 2024 ―奥村土牛の桜・福田平八郎の牡丹・梅原龍三郎のばら―

会 期:2024年3月9日(土)~5月6日(月・振休)

休館日:月曜日 ※4/29(月)、5/6(月)は開館

入館料:一般1‚400円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)

☆「春の学割」大学生・高校生500円

※障がい者手帳、被爆者健康手帳をご提示の方、およびその介助者(1名)一般1‚200円

※「きもの特典」きものでご来館のお客様は、一般200円引き

※複数の割引・特典の併用はできません。

※入館日時のオンライン予約も可能です。

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