「モテたい願望」で容姿を気遣うのは意志がない? むしろ“天性の人たらし”を真似てモテたい

「好かれたい」「モテたい」と思っちゃダメですか? 異性に好かれるために容姿やファッションを気遣うのは「言いなり」な行動とは違うと、30代女性は主張する。また「不特定多数にモテたい」願望を否定されるのは納得できない、とも。

異性に「好かれたい」「モテたい」と思うのは、ごく普通の感覚ではないだろうか。恋人ができれば、その人により愛されたいとも思うはず。だからファッションに気を配り、身だしなみや清潔感に敏感になる。それを「すべて自分のため」「彼のためとするのは意志がない」とぶった切るのは少し乱暴ではないだろうか。

自分の意志でやっているだけなのに

「久々に好きな人ができたんです。灯台もと暗しというか、隣の部署の同期。ずっと友だちだったけどお互いに、『実は好きだった』と気づいて。今すぐ結婚とは考えてないけど、付き合えば付き合うほど彼が好きになる。 彼がロングヘアが好きだというから髪を伸ばし、休日のデートのときにスカートもはいてみたりして。仕事をしているときはロングヘアはバッチリまとめるしパンツ姿なんですけどね」 幸せそうな笑顔でそう言うのは、アヤカさん(31歳)だ。ところが友人たちには不評だという。 「彼ができたら彼の言いなりなのかと友人たちから批判されました。でも、私は彼により好かれたいし、彼の好みに合わせるところがあってもいいと思ってる。私がロングヘアが嫌いならやりませんが、たまには伸ばしてもいいかなと思っていたし、スカートをはくと気分が変わるし。どうして責められるのかわけがわからない」

「彼の言いなり」と友人から責められる

確かに今は、おしゃれをするのも身だしなみを調えるのも「自分のため」であり、「彼のため」ではあってはいけないような風潮がある。だが、好きな人により愛されたいのは自然な欲求。男性だってそう思っているはずだ。 「彼も、今度、髪型変えたいけど、どういうのがいいと思う? と私に聞くし、ジムに通ってるんだけど、どの程度のマッチョが好き? と聞いてくる。私はムキムキが怖いから、細マッチョがいいなあと言っています」 相手に喜んでほしい、相手の喜ぶ顔が見たい。それは恋のみならず人間関係において必須なはず。なのに、「自分の意志がなく、男の顔色ばかりうかがっている」と言われるのは心外だと彼女は言う。

モテたい欲求だって不自然じゃない

好きな人に愛されたいのは当然のことながら、「不特定多数にモテたい」という気持ちだって、決して不自然ではないだろう。会社員のマナミさん(33歳)はこう言う。 「やり過ぎると同性から嫌われるのは昔も今も一緒ですが、天性で『人たらし』な人っていますよね。私の同僚の女性がそう。たとえば誰かに何かを借りて返すときに『ありがとうございました』とニッコリしながら、ちょっと相手の腕に触れたりするんですよ。彼女の笑顔と優しい触れ方に、同性でもドキッとするほど。 だから男性の中には、彼女が自分に惚れていると勘違いする人もいます。でもそうではない。彼女は誰に対してもそうなんです。彼女自身は別にモテたいと思っているわけじゃないんでしょうけど、天性の人たらしそのものの性格がそうさせるんでしょうね」

「天性の人たらし」を真似てモテたい

正直でいい人だから人気もある。彼女のように「天性の人たらし」ではなくても、真似てモテたいと思う人がいてもいいのではないか。 「私も真似てみたひとりです。モテたかといえば結果はよくわからないけど、少なくとも人との関係が優しいものになったような気はしますね」 男性がやたらと女性に触れるといろいろ問題もあるだろうが、「モテたい欲求がある人のほうが、他人に優しいのではないか」とマナミさんは言う。 「職場の男性社員でも、女性を意識して穏やかに振る舞う人のほうが結果的に人気があるしモテますね。本人は『すみません、僕は女性にモテたいだけなんです』と明るく言ってしまうタイプだから、よけいおもしろいんですが……。 上の世代の男性からはよく、思春期くらいにモテたいと自覚し、そこからどうやって努力していくかという話を聞きます。 がんばってもモテない人もいるし、がんばらなくてもモテちゃう人もいる。でも涙ぐましい努力をしてきたとわかると、人間性が見えて嫌いにはなれない」 だからモテたい欲求を出すことは決して悪いことではないと思うと、マナミさんは笑いながら言った。 モテたいために自分を磨く。そんなことをストレートに言えなくなっている時代かもしれないが、人の欲求に蓋はできない。問題はその表現方法だ。人に不快感を与えず、人に圧をかけず、密かに試行錯誤していくしかないのかもしれない。 「女性も男性も、自分の意志で生きていくのは当然ですが、好きな人のために自分を変えるのも楽しいものだとは思います。やっぱりモテたい気持ちはありますから」 マナミさんはそう言って笑みを浮かべた。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。 (文:亀山 早苗(フリーライター))

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