【桜花賞 みどころ】待ちわびた桜と女王の完全開花

クイーンズウォーク 写真:山根英一/アフロ

全国的に見ても、例年よりも開花が遅かった今年の桜。東京を例にとっても気象庁が桜の開花を発表したのは3月29日。

平年よりも5日ほど遅く、昨年と比べるとなんと15日も遅い観測となり、これだけ遅れたのは3月31日に開花宣言が出た2012年以来のことだという。

こうした事例と不思議とリンクするのが競馬。2000年以降、今年のように3月29日以降に東京で桜が開花した年は3度あるが、桜花賞はどんな結果が出ていたのだろうか。

2000年
桜の開花日 3月30日
桜花賞馬 チアズグレイス(6番人気)
2005年
桜の開花日 3月31日
桜花賞馬 ラインクラフト(2番人気)
2012年
桜の開花日 3月31日
桜花賞馬 ジェンティルドンナ(2番人気)
※桜の開花日は気象庁調べ

後のマイルの女王ラインクラフトや牝馬三冠馬ジェンティルドンナが現れているが、いずれの年も1番人気馬が負けているのが印象的。どの年も戦前は混沌とした様子だったが、いざレースが終わると、1頭の強い女王が君臨していたというのが印象的だった。

そう考えると今年の桜花賞も戦前の今こそ混沌とした雰囲気だが、レース後には後に競馬界を代表するようなスターホースが現れると考えられる。昨年のリバティアイランドもそうだが、近年の桜花賞馬は桜花賞後もGⅠ戦線で活躍するケースが目立ち、名馬への登竜門ともなっている。

そんな偉大な名牝たちの後を追いかけたいのが、昨年の2歳女王アスコリピチェーノだ。

大きな栗毛の馬体で豊かなスピードを見せた父・ダイワメジャーとは似つかぬ黒鹿毛の小さな馬体の持ち主である彼女。デビュー戦、新潟2歳Sでは後方から脚を伸ばしてきて一気に差し切るというレース振りまで父とは異なるが、豊かなスピード自体は父譲り。

その新潟2歳Sではスタートで出遅れるというハプニングがあったが、中団で脚を溜めて直線でスパート。ここでも上がり3ハロンは33秒3という末脚で突き抜けて勝ち切った。

そして迎えた阪神JF。休み明け、そして阪神どころか右回りも初経験という状況だったにもかかわらず、中団で脚を溜めて流れに乗ると、直線では早めにスパート。

すると内外から迫ってきた馬たちを競り落として勝利。勝ち時計はレースレコードとなる完勝で無傷のヒロインとなった。

この阪神JF以来、久しぶりの実戦とはなるが......あの末脚の切れは本物。混戦を切り裂き、凛とした表情を見せて2歳女王となった彼女がそのまま桜の女王に君臨するだろうか。

桜の開花が遅れた12年前の桜花賞を制したジェンティルドンナは2歳時、まだ未勝利を勝ち上がったばかりの無名の存在だった。それが年明け以来、急成長を遂げて桜花賞を快
勝して三冠牝馬への道筋を歩み始めた。

そんな彼女をなぞるような成績を収めているのが、クイーンズウォークだろう。デビュー戦は出遅れてしまったことが響いて2着に終わったが、年末の未勝利戦を勝利。

500キロを優に超える大きな馬体で先行馬たちを追いかけてくる姿は兄のグレナディアガーズがダブって見えるほどだった。

血統は優れていても、3歳1月の時点の彼女はまだ1勝を挙げただけの存在。そんな彼女が表舞台に名乗りを上げたのはクイーンCでのことだった。

過去2戦のような出遅れこそなかったが、それでも後方からのレースとなった彼女は直線までじっくりと脚を溜めると、直線で弾けるような脚を見せて突き抜けて快勝。阪神JFで1番人気だったサフィラらの実績馬を相手に上がり3ハロン33秒4というメンバー最速の脚を見せ、桜の女王候補に名乗りを上げた。

まだまだ未完成なところがあれど、そのスケールはトップクラス。遅れて咲いた今年の桜のように、彼女も大舞台でその素質を開花させるかもしれない。

アスコリピチェーノが2歳女王に輝いたとき、「あの馬がいたらどうなったんだろう?」という声が少なからずあった。そんな「幻の2歳女王」がチェルヴぇニアだ。

ノッキングポイントの妹として注目を集めた彼女はデビュー戦こそ取りこぼしたものの、新潟で行われた未勝利戦では2着馬に6馬身差を付ける圧勝。スローな流れにも対応できる賢さ、完成度の高さが印象に残る一戦となった。

そして迎えたのが3戦目のアルテミスS。過去にソダシらが勝利した牝馬の出世レースに挑むと、スタートで出負けしたとはいえ、すぐに位置を取りに行って折り合い、直線では早めに抜け出して勝利。後方から末脚を伸ばすだけでなく、好位からも速い上がりを使えるレース運びには安定感さえ漂っていた。

2歳馬とは思えない大人びたレースを見せたこともあり、阪神JFへの出走も期待されたが、左トモに違和感があったということで無念の回避。彼女不在の中で行われた2歳女王決定戦は彼女が負かしたサフィラが1番人気に支持されたように、その実力は高く評価されていた。

鞍上を務めていたクリストフ・ルメールが負傷で急遽バウルジャン・ムルザバエフが騎乗することになったが、大きなフットワークはこの世代のトップを獲るにふさわしい走り。世代トップレベルの実力を桜舞う仁川のターフで見せてくれるだろうか。

満開の桜の木の下で行われることになりそうな今年の桜花賞。混沌とした世代から桜の女王に輝くのは果たして、どの馬だろうか。

■文/福嶌弘

第84回桜花賞(GI)枠順
4月7日(日)2回阪神6日 発走時刻:15時40分

枠順 馬名(性齢 騎手名)
1-1 ワイドラトゥール(牝3 北村友一)
1-2 クイーンズウォーク(牝3 川田将雅)
2-3 イフェイオン(牝3 西村淳也)
2-4 キャットファイト(牝3 松山弘平)
3-5 シカゴスティング(牝3 浜中俊)
3-6 ハワイアンティアレ(牝3 池添謙一)
4-7 スウィープフィート(牝3 武豊)
4-8 コラソンビート(牝3 横山武史)
5-9 アスコリピチェーノ(牝3 北村宏司)
5-10 セキトバイースト(牝3 藤岡佑介)
6-11 ライトバック(牝3 坂井瑠星)
6-12 ステレンボッシュ(牝3 J.モレイラ)
7-13 テウメッサ(牝3 岩田望来)
7-14 ショウナンマヌエラ(牝3 岩田康誠)
7-15 エトヴプレ(牝3 藤岡康太)
8-16 セシリエプラージュ(牝3 M.デムーロ)
8-17 マスクオールウィン(牝3 津村明秀)
8-18 チェルヴィニア(牝3 B.ムルザバエフ)

※出馬表・成績・オッズ等は主催者発表のものと照合してください。

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