それはないだろう東山紀之CEO!英BBC「捕食者の影」のインタビューで開き直り連発のウラ(元木昌彦)

あの反省と責任はどこへ?(「SMILE-UP.」の東山紀之社長)/(C)日刊ゲンダイ

【週刊誌からみた「ニッポンの後退」】

節操のないテレビ局や企業が、春からの新番組やCMに次々旧ジャニーズ事務所のタレントたちの起用を始めている。

ジャニー喜多川による多くの少年たちへの性的虐待があったジャニーズ事務所は、ジュリー藤島社長がそれを「事実」と認めて謝罪・引責辞任して会社を解体。被害者救済の新会社「SMILE-UP.」を設立したが、補償の実態さえ十分に開示してない現状で旧ジャニーズのタレントたちの“復活”を放置しておいていいのか。

3月30日、英公共放送BBCがジャニー喜多川追及第2弾として、東山紀之「SMILE-UP.」CEOのインタビューを放送した。

モビーン・アザー記者の切り込み方は鋭く、東山はたびたび言葉に詰まる。見ていて、この東山という男、社長失格ばかりか人間としても失格なのがよく分かる。

冒頭、CEOとしてやるべきことはと問われ、「これだけのスタッフたちを路頭に迷わすことはできない」と答える。新会社がジャニー喜多川の毒牙にかかった被害者救済のために設立されたということが、スッポリ頭から抜け落ちているようである。

東山自身が、ジャニー喜多川が欲望を満たすために少年たちを住まわせていた「合宿所」にいたのに、喜多川の不適切な行為を知らなかったのか、自身も被害者ではないのかという直截(ちょくせつ)な質問には、「僕自身はまったく聞いたことがなく、現場を見たことも、先輩や後輩から話を聞いたこともない。自分は不適切な振る舞いに及ばれたことはない」と全否定したが、これは想定内。興味深いのは、2004年に最高裁でジャニー喜多川の少年たちに対する性加害が認定されたのに、なぜ事務所内で噂にもならなかったのかという問いに対する答えである。

「あの時は麻原彰晃(の地裁判決=筆者注)に全ての目が行っていて、新聞も書くことがなく、一般の人たちもジャニー喜多川の判決に目が行っていなかったから、事務所内でもそれについて話すことはなかった」と答えたのである。メディアや日本人だってこの問題に無関心だったではないかと開き直っている。

アザー記者は今回のインタビューの核心に迫る。彼は、被害を受けたジュニアから、事務所のスタッフたちからも性的虐待に遭ったと言っていると聞く。すると東山は「僕が聞いているのは2人だ」と認めたのである。アザー記者は突っ込む。社内で少年への虐待があったのだから、その情報は警察に提供する必要があるのではないか。「僕らには法的権限がない。被害を受けた当事者が刑事告訴すればいい」と、まるで他人事である。しかもスタッフの1人は東山の当時のマネジャーだったのに……。

さらに、虐待された被害者たちをネットなどで誹謗中傷することに対してどう思うかと問われ、「言論の自由もあると思う。その人にとってそれが正義の意見なんだろうと思うこともあります」と答えたのである。言論の自由をここで使うか!

被害者だと訴える中に嘘を言っている人間が多くいると自社サイトで指摘するなど、とても被害者に寄り添って早期に問題を解決しようと考えているとは思えない。この東山CEOの強気や増長、開き直りの背景には、テレビ局やスポンサー企業との関係回復があることは否めないだろう。元のもくあみである。

日本の良識あるメディアも「日ごろの取材への対応も後ろ向きだ。当初の約束は有名無実化している」(朝日新聞3月30日付社説)などと座して嘆いてないで、少しはチェック機能を果たせよ。 (文中敬称略)

(元木昌彦/「週刊現代」「フライデー」元編集長)

© 株式会社日刊現代