【10年ひと昔の新車】キャデラック エスカレードは、ミニバン的にも使える本格アメリカンSUVだった

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、キャデラック エスカレードだ。

キャデラック エスカレード(2012年:ニューモデル)

全長5m、全幅2mを超える堂々たる体躯。ドアを開けるとステップが自動で出てくるのは便利な装備だ。

キャデラックのフルサイズSUV、エスカレードがGMジャパンから正式に輸入販売されるようになった。エスカレードとしては3代目だが、日本では初導入となる。本場アメリカではセレブ御用達で人気を呼んでいるモデルだ。広い室内は3列7人掛けシートで、日本ではミニバン ユーザーのステップアップも期待されている。

ドアを開けるとすかさず、大きなステップが登場。これならスカートを履いた女性でも上品に乗降できるし、SUVにありがちな乗り降りのカッタルさがまるでなくなる。上級グレードのプラチナムにしか付いていない装備なのだが、このためだけにプラチナムを選ぼうかと思えるほど便利だった。

腰を降ろすと、シートがまた良い感じだ。サイズのゆったり感はもちろんとして、肌に吸い付くような感触がたまらない。ドイツ車の本革とはまた違った雰囲気で、本当にソファに腰掛けているているようだ。まっすぐで広いアメリカのような道路はない日本でも、間違いなく疲れ知らずだ。フロントシートの調整幅は予想以上に大きく、小柄な人でも問題ないだろう。ドライビングポジション的には、テレスコピック機能がないことは少々残念だったが。

2列目シートもフカフカで心地良く、アレンジ性もなかなか優れている。見るからに重そうなシートが、スイッチひとつで背もたれ→座面まで上がり、フロントシートの後ろにたたみ込まれる。しかし3列目は、左右上下方向には広いが足下は膝を抱えた体育座りになってしまうので、小さな子ども用かエマージェンシー用と考えたほうが良さそうだ。ちなみに3列目は倒すことも取り外すこともできる。フル乗車状態だとほぼ荷物が載せられないし、後方視界的にもかなり邪魔なので、たたんで使用する機会が多くなりそうだが。

シートはもちろん本革。フロントは14ウエイの電動アジャストでヒーター&ベンチレーター付きとゴージャス!

気筒休止システムも採用。その作動はきわめて自然

燃費向上のため気筒休止システムも備えるが、普通に走っている限りは停止したのが分からないほど自然だ。

さて、豪華でビッグなボディに搭載されるのは、オールアルミ製V8の6.2L OHVエンジンだ。いかにもアメリカンでビッグトルクを生かした逞しいクルージングが味わえる。街中の発進では飛び出し感がないよう、ほんの少しだけ気を遣う場面もあるが、あとは6速ATとの相性も良く、シフトショックもなく実にスムーズだ。

そしてV8を状況に合わせてV4にする気筒休止システム、アクティブフューエルマネージメントシステムも採用している。ちなみに片バンクを停止するのではなく、前の4つのシリンダーを停止する。これは正直に言ってメーター内の表示で判断しない限り、停止したのがわからないほど自然だ。低速域だと、よくよく気をつけていると、ほんの若干ではあるがV4になったときに振動が出るのだが、普通にアクセルペダルを踏んでいる限りはまったくわからなかった。

乗り心地も良く、ハンドリングも素直で、サイズの割りには取り回しも悪くない。キャデラックの世界観が味わえる、実に良い感じのSUVだった。

キャデラックらしい豪華なインテリア。カップホルダーはヒート&クール機構付き。トランスミッションはコラム式 6速AT。

●全長×全幅×全高:5155×2040×1945mm
●ホイールベース:2950mm
●車両重量:2600kg
●エンジン:V8 OHV
●総排気量:6153cc
●最高出力:301kW(409ps)/4300rpm
●最大トルク:563Nm(57.4㎏m)/4300rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・98L
●JC08モード燃費:未発表
●タイヤサイズ:285/45R22
●当時の車両価格(税込):990万円

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