【社説】ガザ戦闘きょう半年 国際社会で停戦実現せよ

 イスラエル軍とイスラム組織ハマスがパレスチナ自治区ガザで戦闘を始めてから、きょうで半年になった。イスラエルの圧倒的な軍事力によって、戦況はジェノサイド(民族大量虐殺)の様相を深めている。罪のない多数の市民が日々殺害され、深刻な飢餓が広がっている。

 イスラエルは、後ろ盾である米国のバイデン大統領との電話会談を受け、人道上の対応を改善する姿勢を示したが、戦闘終結への道筋は一向に見えない。悲惨な戦いを一刻も早くやめさせるために、国際社会は連携を強めねばならない。

 戦闘の端緒はハマスだった。昨年10月7日、ガザに近いイスラエルの音楽祭や集団農場を襲撃し、約1200人もの市民を殺害した上、200人を超える人質を拉致した。1948年のイスラエル建国以来、虐げられてきたパレスチナ人の苦難を考慮しても、正当化は到底できない。

 イスラエル軍は即座にガザに空爆を始め、地上侵攻を進めた。命を奪った3万3千人超の7割が、女性や子どもとされる。長期にわたってガザ境界を封鎖し、多くの市民が飢餓に苦しむようになった。

 イスラエルは避難民が身を寄せる病院や学校も標的にしてきた。国際法違反は明らかだ。国連人権理事会が任命した特別報告者は「ジェノサイドの域に達した」と指摘する。人道状況の危機を回避するために、あらゆる手を尽くすべきだ。

 さらに4月に入って、シリアのイラン大使館の建物がミサイル攻撃を受けた。親イランの武装組織ヒズボラの攻撃に対しイスラエルが報復したとみられている。これを受け、イランは報復を宣言した。報復の連鎖で戦闘が広がるような事態は、何としても避けねばならない。

 この半年、国際社会は戦闘を抑えるよう働きかけてきた。おとといも国連人権理事会が「イスラエルへの武器や弾薬、軍需品の売却や移転」の停止を加盟国に求める決議案を採択した。だがイスラエルは強硬姿勢を改めず、今も「ハマスの壊滅」を掲げている。事態の悪化を食い止めるのは国際社会の責任だ。冷静に効果的な策を探る必要がある。

 中でも、イスラエルの最大の支援国である米国が鍵を握る。バイデン大統領はイスラエルのネタニヤフ首相との4日の電話会談で、ガザの民間人を保護する具体策の発表と履行を求め、応じなければ支援を見直すと強調した。異例の警告を受け、イスラエルはガザ北部の検問所からの人道支援物資の搬入を一時的に認めると決めた。

 日本はイスラエル、パレスチナの双方と良好な外交関係にある。その立場を生かして人道支援にもっと力を入れられないか。豊富な外交経験を自負する岸田文雄首相には、国際社会をリードする役割を果たしてほしい。

 戦闘が長引くことで惨劇に慣れてしまってはならない。虐殺や飢餓は決して容認できない。われわれ国民も関心を失わないようにしたい。

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