がん治療の共同研究が前進 米ロチェスター市の病院技術者が山形大を視察

山形大のスタッフの協力を得て、正確に重粒子線を照射するためのメンテナンス手法などを確認するメイヨークリニックの技術者=山形市・山形大医学部東日本重粒子センター

 米国ミネソタ州ロチェスター市に本拠を置く総合病院・メイヨークリニックの技術者が6日、山形大医学部東日本重粒子センター(山形市)を訪れ、重粒子線照射装置の性能などを確認した。同クリニックは重粒子線がん治療施設の整備を目指しており、共同研究の一環で来日した。

 共同研究は山形新聞、山形放送の8大事業(2017年)でのロチェスター訪問などを通じた交流がきっかけで実現した。同クリニックは26~27年にアリゾナ州で陽子線、フロリダ州で重粒子線のがん治療施設開所をそれぞれ計画する。米国には重粒子線を照射可能な施設がなく、世界をリードして重粒子線治療を推進する日本の施設のうち、交流があり、最新鋭の機器を備える山形大を訪問先とした。昨年末に共同研究に関する合意書を交わしている。

 照射装置の管理に当たる予定の医学物理士3人が5、6の両日、放射線検出器などを持ち込み、患部への正確な照射機能を維持するためのメンテナンス手法などを確認した。適正な照射データが得られると「エキサイティング」「ベリーグッド」などと歓声を上げ、笑顔を見せていた。

 山形大の装置は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の火星周辺の高エネルギー粒子計測に向けた研究に使われたほか、韓国トップレベルの大学の医師らが視察に訪れるなど、国際交流のきっかけにもなっている。岩井岳夫センター長は「がん治療の役目を着実に果たしつつ、山形大の研究発展や国内外へのアピールのために役立てたい」と話す。

 本紙などのロチェスター訪問団は17年、人口約10万人と小規模ながら、同クリニックを核に世界中から多くの患者が訪れる医療先進都市のまちづくりを学ぼうと、山形大医学部や県医師会、県、山形市、金融機関などの関係者計36人が参加した。

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