【役に立つオモシロ医学論文】
喫煙が健康状態に与える影響は大きく、非喫煙者と比べて平均寿命に約10年の差が生じます。一方で、タバコの葉に含まれるニコチンには依存性があることが知られており、禁煙を困難にさせる原因のひとつとなります。
喫煙に対する欲求はまた、飲酒やコーヒーの摂取で強まることが報告されていました。そのため特定の食品や飲料の摂取と喫煙行動は密接に関連している可能性があります。
しかし、喫煙欲求と飲食物との関連性については質の高い研究データが限られていました。
そのような中、喫煙欲求に影響を与える飲食物や味覚、調理の方法などを検討した研究論文が、喫煙と健康に関する専門誌の2024年1月号に掲載されました。
日本で実施されたこの研究ではオンラインアンケートに回答した40~69歳の657人が対象となりました。
このうち、紙巻きたばこの喫煙者は242人、加熱式たばこの喫煙者は237人、非喫煙者は178人でした。アンケートでは、食品、飲料、味付け、料理の種類などについて調査が行われ、喫煙欲求との関連性が分析されました。
その結果、最も喫煙欲求が高まる飲食物はビールで、喫煙者の78%を占めました。また、日本酒やウイスキーなどのアルコール飲料、そしてコーヒー飲料が上位を占めました。喫煙欲求を高める料理や味付けについては、焼き肉、ラーメン、揚げ物、中華料理などが上位でした。
一方、喫煙欲求が低下した飲食物は、牛乳などの乳製品、柿、イチゴ、キウイなどの果物、甘みおよび酸味のある食べ物などが上位を占めました。
論文著者らは「(医療従事者が)禁煙指導を行う際には、喫煙状況に加えて、食事に対する嗜好を考慮することが重要である」と考察しています。
(青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)