【酒飲みの新常識】ピンク色の日本酒=紅麹を使っているとは限らない 健康被害の心配なし

ピンク色の日本酒は花見の季節にぴったり

あまりいい注目のされ方ではないが、「紅麹」という文字がメディアでやたらと目につくようになった。

紅麹は米などの穀物類に紅麹菌(ベニコウジカビ)を繁殖させた発酵食品。身近なところで言うと、沖縄の伝統食トウフヨウや紹興酒などに使われている。注目のきっかけは、紅麹を由来とするサプリメントの服用によって、健康被害が出たこと(詳しい原因は解明中)。これを受け、紅麹を使った一部の機能性表示食品、食品、日本酒を自主的に回収する企業も出てきた。

こうしたことから不安視されたのが、米麹を使った日本酒。中でもピンク色をした日本酒が「紅麹を使っているのではないか?」と誤解されたようだ。一部の蔵では問い合わせが殺到してしまい、業務に支障をきたしているのだそう。

確かに今回、自主回収となった日本酒には紅麹の色素が使われていた。だが他のピンク色をした日本酒の多くは紅麹ではなく、清酒用赤色酵母(アデニン要求性酵母株)を使って、特有の色を出している。少し専門的な話になるが、この酵母は日本酒に使われる「きょうかい10号酵母」の突然変異によって生まれたもの。そもそも米麹と酵母はまったくベツモノで、役割も異なる。また、一般的な日本酒に使われているのは紅麹ではなく黄麹(一部の商品では白麹、黒麹を使用)であり、紅麹とは菌の種類も違う。つまりピンク色の日本酒を飲んだからといって、健康被害に遭うことはないのだ。そんなことより、酒の飲み過ぎによるダメージに注意したほうがいい。

ところでピンク色の日本酒だが、ワインでいうロゼのような見た目はもちろん、味もこれからの季節にぴったりである。スッキリ飲みたい方はクリアタイプやスパークリングタイプ、濃厚な旨味を味わいたい方はにごりタイプと選べるのもいい。私のおすすめは「miss Cherry」(1450円 静岡・英君酒造)。花見の際に持参すると、女性たちから「かわいい~」という歓声が上がる。微炭酸で味は甘酸っぱく、まさにサクランボのよう。日本酒に飲み慣れていない方でもすんなり飲める。

「ピンク色の日本酒=紅麹が使われている」と決めつけず、ちょっとだけ冷静になって、春を彩るピンク色の日本酒を楽しんで欲しい。

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